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春の社日・秋の社日

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「社日」(しゃにち)は「雑節」の一つで、
「産土神様」(うぶすながみさま)を祀る日です。
 
 

社日(しゃにち)とは

「社日」(しゃにち)は「雑節」の一つです。
雑節(ざっせつ)とは、
五節句」「二十四節気」「七十二候」
といったChina由来のものではなく、
季節の移り変わりをより的確に掴むために
日本の生活や農業、文化に照らし合わせて
作られた日本独自の特別な暦日のことです。
 
 

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社日の「社」は、その土地の守護神である
「産土神」(うぶすながみ)を意味します。
つまり「社日」は、産まれた土地の
守護神「産土神」を祀る日です。
その者を生まれる前から死んだ後まで
守護する神とされており、
他所に移住しても一生を通じ
守護してくれると信じられました。
そんな「産土神」をお祀りする神社が
「産土神社」(うぶすなじんじゃ)で、
古くからこの日にお参りしました。
 

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「社日」の日にち

「社日」は、春と秋の年に2回あり、
春のものを「春の社日(春社)」、
秋のものを「秋の社日(秋社)」と言います。
 
令和6(2024)年の「社日」は以下の通りです。
  • 春の社日:3月15日(金)
  • 秋の社日:9月21日(土)
 
「春の社日」、「秋の社日」は、
「春分」や「秋分」に最も近い
「戊」(つちのえ)の日になります。
なお、同日数の場合は、
「春分」や「秋分」の前の戌の日になります。
 
 
春の社日
  十干
3/14  
3/15 春の社日
3/16  
3/17  
3/18  
3/19  
3/20 春分の日
3/21  
3/22  
3/23  
3/24  
3/25  
 
秋の社日
  十干
9/14  
9/15  
9/16  
9/17  
9/18  
9/19  
9/20  
9/21 秋の社日
9/22 秋分の日
9/23  
9/24  
9/25  
 
 
「春分の日」や「秋分の日」から
最も近い「戊の日」に定められた理由は、
Chinaが起源とされる「陰陽五行説」において
「戊」(つちのえ)の日は、
「土」に該当する属性であるからです。
 
戊の日
干支は「十干」「十二支」を組み合わせたもので、
年や月を表す数詞で、
十干「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」と
「陰陽五行説」の「木・火・土・金・水」を
陽「兄」と陰「弟」に分けたものが結びつき、
暦を表すために用いられました。
それによると「戊」は「土の兄」に当たることから、
土の神を祀る日に選ばれたと言われています。
 
更に「戊」は「茂」に通じることから、
「陽気によって繁栄する」
「草が盛んに生長する日」とされたました。
 
この風習が日本に伝えられると、
土地の神様を信仰する日本の風土に合い、
古くからある
「地神信仰」や「田の神信仰」と融合して、
重要な農耕儀礼として全国に広まりました。
 
この日が、春は種まきの時期、
秋は収穫期にちょうど良く重なることから、
農業を行う人々にとって
大切な節目の日となっていたのです。
この日は産土神に参拝し、
春には五穀の種(米・麦・豆・粟・黍か稗)を
供えて豊作を祈願し、
秋にはその年に収穫した農作物と、
その集落に馴染みのある農作物が供えて
感謝しました。
 
社日詣
社日に七社の神社を巡拝することです。

食べる運を付ける、
家計の安心を得る、
暮らしを守護していただくとして、
農業を営む人々に限らず、
今でも、七社の神社を巡拝する人を見受けます。
 
また「社日」の日に
鳥居のある神社を七社詣でると
痛風やボケ封じになるとも言われています。
 
治聾酒(じろうしゅ)
「治聾酒」(じろうしゅ)とは、
「春の社日」に供えるお酒のことです。
この日に供えたお酒「治聾酒」をいただくと、
耳の病気が良くなるとか、耳が良くなると
言われてきました。
なお「治聾酒」と言うお酒は存在しません。
 

「社日」の禁忌

「社日」は土地の神様の他に、
「農耕を司る土の神様」の日と
考えられていました。
 
そのためこの日は
土をいじったり掘り起こしたりすると
神様のいる場所を穢したり、
神様の頭を掘ることになるため、
土地神の怒りを受けるとされました。
そのためこの日の農事は休み、
掛軸などを掛けて集まって祭りをしました。
 
また「社日」の日に肉、と魚を供えるのも
タブーとされています。
 

各地で行われる社日のお祭り

「社日」に行われる行事は、
それぞれの土地の神様を祀るものであるため、
地域によって様々です。
 
春の社日は「地神降り」、
秋の社日は「地神昇り」とも呼ばれ、
祭祀や「地神講」「お社日様」という行事が
行われます。
 
お地神さん(徳島県)
四国徳島県では、春と秋の社日に
「お地神さん」という祭礼が行われます。
地域全ての講中(村の寄り合い)が集まって、
「地神塔」(じしんとう)と呼ばれる
五角柱の石塔に注連縄を張り、
供え物をして手厚く神事を行います。
徳島県には何と県内に2000基もの
「地神塔」があると言われています。
 
お社日様(長野県小県郡)
長野県小県郡(ちいさがたぐん)では、
春に村へ降りてきて秋に山へ帰る田の神様を、
「お社日様」として信仰しています。
春の社日には、お餅をついて祝い、
秋の社日には、稲を一株抜いて
田の神様に捧げるお祭りが行われます。
 
お潮井取り(福岡県・筥崎宮)
福岡県の「筥崎宮(はこざきぐう)では、
毎年春と秋の「社日」に「お潮井取り」という
行事が行われています。
 
「お潮井」とは、福岡県の箱崎浜から
砂浜の砂「真砂」(まさご)
竹の籠「でぼ」に入れて持ち帰って、
そのまま玄関に供えておき、
出掛ける時などに身に振って、
災いから守ってもらおうというものです。
特に、効き目があると言われています。
「お潮井」は田畑に撒いたりもします。
 
博多三大祭りの一つ『博多祇園山笠』でも、
神事の無事を祈願して「筥崎宮」の真砂を
取りに来るほどです。
 
また「社日餅」と呼ばれる
よもぎ餅が配られるとのことです
 
探湯神事(群馬県・社日稲荷神社)
群馬県の社日稲荷神社では、
春と秋の「社日祭」において
江戸時代から続く
「探湯神事」(くがたちしんじ)が行われます。
神前に供えられた大釜に沸かした熱湯を、
小笹を使って全身に浴びることで、
家内安全や厄難除けなどの
祈願をするというものです。
 
社翁の雨(しゃおうのあめ)
春の「社日」に神様が降らせる雨のことを
「社翁の雨」(しゃおうのあめ)と呼びます。
「社翁雨」「社日の雨」とも呼びます。
「社翁」(しゃおう)は土地の神様のことです。
古くは、雨は神様からの賜物として
捉えられていたことから、
「社日」に神様を盛大に祀ることで、
恵みの雨を降らせて貰えるという
信仰から来ているそうです。