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コツコツと

小春日(こはるび)・小春日和(こはるびより)

 
「小春日」(こはるび)とか
「小春日和」(こはるびより)とは、
晩秋から初冬の時季の、春を思わせるような
暖くて穏やかな天気のことを言います。
 

「小春」(こはる)

「小春」とは
「小春」(こはる)とは、
春のように暖かい晩秋から初冬のことで、
陰暦十月の異称でもあります。
陰暦十月はほぼ現在の新暦11月に相当します。
 
「春」という言葉に惑わされて
春先に使う言葉と勘違いされがちですが、
あくまでも「春」そのものではなく、
晩秋から初冬の
「まるで春のような天気」ですから、
晩冬の2、3月頃の春を先取りした天気の時に
誤って「小春日和」を使わないように
注意しましょう。
 
「小春」のつく季語
「小春」の可憐な名前は、
冬らしい寒さを迎える前に、
ホッと一息つく感じがあります。
なおこの時期の
春を思わせる風は「小春風」(こはるかぜ)
穏やかな海の凪ぎを「小春凪」(こはるなぎ)
穏やかに晴れた空は「小春空」(こはるぞら)
如何にも小春らしい日和は「小春日和」と
言います。
 
雪囲・雪吊
 
雪国ではこの陽気を利用して、
冬の冷たい季節風から雪から家を守るため
「雪囲」(ゆきがこい) に精を出します。
家の周りに丸太を組み、
横木を渡して葭簀 (よしず) や竹などで囲み、
同じようなことを庭木にも行います。
 
 
金沢の兼六園などでは、
園内の樹木に「雪吊り」が施して、雪の荷重で樹木の枝が折れないように枝を補強します。

www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp

 
大根干す、干菜吊る
 
晩秋から初冬にかけて農家では、
洗った大根を沢庵漬けにするために干したり、
大根や蕪の葉をその首のところから切り取り、
他にも、越冬野菜を取り入れ干すために
軒先などに吊るして干します。
本格的な冬に備える頃です。
 
 

「小春」の由来

「小春」という言葉は、
6世紀の『荊楚歳時記』(けいそさいじき) にある
「天気和暖にして、春に似る。
 故に小春(しょうしゅん)と曰ふ」
に由来する語です。
 
   
 
『荊楚歳時記』(けいそさいじき) とは、
6世紀の南朝・梁の宗懍 (そうりん) により書かれ、
隋の杜公瞻 (とこうせん) が注を付けた、
荊楚地方、つまり長江中流域の湖南・湖北地方の
年中行事とその由来を記した民俗資料の
古典です。
その内容は、正月年始の行事に始まり、
競舟 (けいしゅう) などの民俗行事、
灌仏会 (かんぶつえ) などの仏教関係の行事や
諸種の風俗、習慣、民間信仰に至るまでの
様々な範囲に及んでいます。
 
兼好法師(卜部兼好、吉田兼好)の
『徒然草』(つれづれぐさ)
「(旧暦) 十月は小春の天気」とあることから、
「小春」は、中世以来、用いられてきた言葉だ
と思われます。
 
  
 
海外では?
 
毎年決まって出現する訳ではありませんが、
北米では10月ないし11月初旬に、
ヨーロッパでは9月下旬に
「小春」と同じような日和になる傾向があり、
様々な呼ばれ方をしています。
米国では「インディアン・サマー」、
独国では「老婦人の夏 (Altweibersommer)」、
ロシアでは「婦人の夏 (bab’e leto)」と
呼ぶそうです。
 
また10月18日の「聖ルカ祭」の頃の秋晴れを
「聖ルカの夏 (St.Luke’s summer)」、
11月1日「万聖節 (ばんせいせつ)」の頃の秋晴れを
「万聖節の夏 (All Saints’ summer)」、
11月11日「聖マルティヌス祭」の頃の秋晴れを「聖マルティヌスの夏 (St.Martin’s summer)」
と呼ぶそうです。
 

「小春日和」の注意点

「小春日和」が現れるのは、
この季節ならではの
気圧配置が関係しています。
 
凩と小春日和

 
冬が近づくと「西高東低の気圧配置」という
言葉を見聞きする機会が増えます。
「西高東低の気圧配置」は
冬の嵐をもたらす気圧配置で、
11月頃には「凩 (木枯らし)」をもたらします。
 

www.linderabell.com

 
この冬型の西高東低の気圧配置は
一時的に緩んだ時には、打って変わって
まるで春を思わせるような暖かで穏やかな
陽気に包まれます。
それが「小春日和」(こはるびより) です。
 
「寒暖差」に注意
  
段々と冬に向かって
肌寒さが増していく日々の中で、
晴れて暖かい日があると嬉くなりますが、
「小春日和」は、
単に「晴れて暖かくなる」だけではなく、
「寒暖差」には注意が必要です。
 
 
「小春日和」のような晴れて風のない日は、
日中はぐんぐん気温が上がる一方で、
朝晩は放射冷却で冷え込みやすく、
1日の寒暖差が大きくなりがちだからです。
 
 
また、日々の寒暖差も大きくなりがちです。
「小春日和」をもたらした高気圧が
日本から離れて再び低気圧がやって来ると、
天気は下り坂となり、
一転して急に寒くなることもあります。
気温の変動が激しいのも
この時季ならではですから、
「小春日和」の穏やかな暖かさに油断をせず、
体調管理に気をつけて過ごしましょう。