うまずたゆまず

コツコツと

別れ霜(わかれじも)

 
 

霜(しも)

大気中の水蒸気が、
氷点下に冷えた地面や地上の物体に触れて
昇華によって出来る氷の結晶を
「霜」(しも) と言います。
 
「霜」は最低気温が4℃以下になると
発生しやすくなると言われています。
水蒸気や水滴が氷になるのは0℃以下ですが、
気温を観測しているのが地表1.5mの高さで、
冷気が溜まる地表面の温度は
気温より低いので、気温が4℃以下なら、
地表面は0℃以下になるからです。
 
霜が発生する理由は、
風の弱い、晴れた秋の末から冬にかけての
寒い朝に出来やすくなります。
 
 
秋が深まると「露」が「霜」に変わり、
最初に降りる霜を「初霜」(はつじも)
冬前の秋の季節外れに早い霜を
「早霜」(はやじも) と呼ばれます。
 

春に降りる霜

春の霜(はるのしも)
立春」を過ぎて降りる霜のことを
「春の霜」(はるのしも) と言います。
立春」を過ぎても、
北国はまだまだ寒さが厳しく、
霜が降りるのも珍しいことではありません。
 
遅霜(おそじも)
本州では4月中旬から5月の初めになっても、
時に降霜を見ることがありますが、
この晩春から初夏の頃の季節外れの霜を
「遅霜」(おそじも)、「晩霜」(ばんそう)
言います。
 
春になっても「霜」が身ほとりを去らずに
(しず) かに降りている様は、
暖かい春を迎えた喜びとは別の、
遠のいて行く冬を惜しむような
気分に浸らせてくれるため、
霜の名残しものなごり」「名残の霜なごりのしも」「霜の別れしものわかれ」「霜の果てしものはて」などという季語もあります。
 
別れ霜(わかれじも)
そして「立夏」も間近の
その春の最終の霜のことを
「別れ霜」(わかれじも) とか
「忘れ霜」(わすれじも) と言います。

www.linderabell.com

 
それも「立春」から数えて88日目に当たる
雑節「八十八夜」(令和7年は5月1日)の頃には
霜も終わるので、
俗に「八十八夜の別れ霜はちじゅうはちやのわかれじも」とも言います。
その寒候年で最後に降りる霜なので
「終霜」(しゅうそう) とも言います。
 
そして「八十八夜」を過ぎれば
さすがに霜の降りることは少なくなります。

www.linderabell.com

 

霜による農作物の被害

霜害(そうがい)
 
「霜」のために、農作物・果樹などが受ける
損害のことを「霜害」(そうがい) と言います。
 
「霜」は冬に降りるものですが、
実は冬の被害はほとんどありません。
冬は最低気温が0℃以下になることも多く、
寒さに弱い農作物はそもそも育っていない
ためです。
 
警戒が必要なのは、
晩秋や初冬の冷え込み始めた頃に降りる
「早霜」(はやじも) や、
晩春から初夏にかけての頃に降りる
「遅霜」(おそじも) です。
 
この「遅霜」(おそじも) は、
様々の農作物に甚大な被害を与えます。
「遅霜」で被害が発生するのは、
暖かくなって順調に成⾧し始めた新芽や若葉が回復不能のダメージを受けるためです。
 
かつては「桑」が最も被害に遭いましたが、
近年では、「お茶」や「果樹」の被害が
目立ちます。
 
植物体自体は、
低温にはそれほど弱くないのに、
「霜」に当たると
出荷出来ない見た目になるものもあります。
 
「遅霜」が起こりやすい条件
気象庁では、「遅霜」(おそじも)
「晩春から初夏にかけての霜」と
定義しています。
 

 
「遅霜」が発生しやすくなるのは、
次の3つの気象条件が揃った時です。
1.晴れている
2.風が弱い
3.上空に寒気が入っている
 
 
そもそも「霜」とは、
「放射冷却」により地面の温度が下がり、
空気中の水蒸気が
氷として地面や植物に付着して、
氷の結晶となったものです。
 
昼間は地球から出ていく熱よりも
太陽から受ける光の方が強いため、
地表は温められます。
一方、夜は太陽光線がなくなるのに対し、
地球からは赤外線として熱が
放出され続けるために地表は冷えていきます。
このように、地表面から熱が放出されて
冷えることを「放射冷却」と言います。
 
「放射冷却」が特に強まるのは、
雲一つない星空がキレイな風が弱い夜です。
 
雲があると放熱を邪魔する一方、
雲がなければ、地面に蓄えられた熱が
上空へと一直線に逃げていくからです。
 
また風が強いと周囲の暖かい空気と混じるので
「放射冷却」は弱まりますが、
風が弱いと地表付近の冷えた空気が
周辺の暖かい空気と混ざりにくくなり、
「放射冷却」が強まります。
 
更に湿度が低い日ほど
「放射冷却」は一層強まります。
 
霜害対策
 
日中に蓄えられた地面の熱が
夜間に上空に逃げるのを防ぐのが
最も手っ取り早い霜害対策です。
作物を寒冷紗や不織布などで上から覆うとか、
作物の株元の周辺を藁やもみ殻などで
地表面を覆うなどして
作物周辺の保温を行います。
 
火を焚いて煙霧を作って
「放射冷却」現象を弱めたり、
防霜ファンで風を起こして
上部の暖かい空気と地表面の冷え込んだ空気を
攪拌する方法もあります。
散水して農作物の温度が0℃より下がることを
防いだりします。
 
霜注意報
気象台では、「遅霜」に関する注意報として、
「霜」により被害が発生する恐れがあると
予想された時に「霜注意報」が発表されます。
 
霜注意報」の発表基準は
地域によって異なります。
そのため、住んでいる地域の
霜注意報」の発表基準を確認しておく
必要があります。

agora.ex.nii.ac.jp

agora.ex.nii.ac.jp