
「蜆」(しじみ) は、「浅蜊」(あさり) と並び、
日本人に最も馴染み深い貝です。
食用の歴史は古く、
縄文時代に生活ゴミを捨てた「貝塚」では、
蜆の貝殻も多く見つかっています。
「土用蜆」と「寒蜆」
蜆の旬は、夏と冬の2回あります。
越冬のために栄養を蓄え身が締まって
コクのある味が楽しめる「寒蜆」(かんしじみ) と
夏の産卵のために身が肥えてプリプリとした
食感が楽しい「土用蜆」(どようしじみ) です。
「土用蜆」(どようしじみ)
「土用の丑の日」と言えば、
鰻を食べる風習がよく知られていますが、
江戸時代は「土用蜆は腹薬」とも言われ、
「土用の丑の日」は鰻を食べるよりも
「土用蜆」を食べる習慣の方がメインで、
人々は夏のスタミナ食として好んだそうです。
蜆のほとんどが深川で採れたもので、
一升(1.8ℓ)6文から10文くらい、
今の感覚で150~250円と安価だったことから、
味噌汁の具や佃煮として庶民に親しまれ、
よく食べられました。
特に旨いと評判だったのは、
本所を流れる横川に架かる業平橋辺りで採れた
「業平蜆」(なりひらしじみ) という、
粒が大きくて味の多い蜆でした。
当時の江戸では、早朝から
蜆が入った樽の天秤棒を担いで売り歩く
棒手振 (ぼてふり) 商人の姿があちこちで見られ
ました。
蜆、浅蜊 (あさり)、蛤 (はまぐり) などの
貝類を売る棒手振 (ぼてふり) 商人は、
総称して「むきみ売り」と呼ばれました。
「むきみ」とは貝の殻を取ったもので、
調理上便利なため「むきみ」にして売られた
のです。
「むきみ売り」は、
比較的簡単に始められました。
蜆や浅蜊は、魚より仕入れはずっと安いため
元手(資金)がそう掛からず、通年で出来、
専門知識や技術もそう必要ないため、
比較的簡単に始められました。
気合と体が丈夫なら打って付けな仕事で、
田舎から江戸に出て来た者の中には、
「むきみ売り」を手始めに、
その後様々な商売に転じて成功した者も多く、
人気の商売でもありました。
蜆の栄養成分
盛夏のこの時期に産卵を控えた蜆は、
カルシウムやビタミンが豊富になり、
旨味もグっと増します。
蜆は健康に良いと言われ、
江戸時代の天明7(1787)年刊の大津賀仲安著
『食品国歌』(しょくひんやまとうた) には、
「シジミよく黄疸を治し酔を解す。
消渇 (しょうかち)、水腫 (すいしゅ)、
盗汗 (とうかん) によし」とあり、
当時から黄疸や宿酔(二日酔いのこと)に
効能があると考えられていました。
夏の旬を迎えた蜆には、
良質のたんぱく質や良質なアミノ酸や
ビタミンが豊富に含まれており、
他の貝と比較してみると、
含まれている栄養素は群を抜いています。
特に蜆に含まれている
「オルニチン」「メチオニン」という
アミノ酸は、肝機能の修復や
活性化の効果に富んでいます。
しじみが「生きた肝臓薬」と言われる所以です。
<オルチニン>
体内でアンモニアに対する解毒効果があり、
肝臓の働きを高め疲労回復の効果がある。
<メチオニン>
アルコールや脂肪の摂り過ぎから
肝臓を守ってくれます。
お酒を飲んだ後にはしじみの味噌汁と
言われるのは、代謝・解毒といった
体に非常に大事な働きをしてくれている
肝臓の機能を高めてくれるからです。
それに加えて、
貧血の予防や疲れ眼の改善、
利尿の促進や免疫力の強化など
様々な効果があげられます。
ミネラル類も多く含んでいて、
夏バテしやすい時期に、
ミネラル類も補うことが出来ます。
旬を迎えた蜆は、
栄養価が普段より高くなりますから、
「土用の丑の日」に蜆を食べるというのは、
理に適っていると言うことが出来ます。
なお「消渇」(しょうかち) とは、漢方では、
喉の渇きと多食にも関わらず痩せる状態をいい
「糖尿病」に当たると考えられています。
「水腫」(すいしゅ) は、漢方では、
「水滞」(すいたい) とか「水毒」(すいどく) と呼ばれ、
体内の水分代謝が上手くいかず、
余分な水分が体内に溜まっている状態を
指します。
「盗汗」(とうかん) は「寝汗」のことです。
寝汗をかくのは、
日中の内に体内に籠った熱を放散し、
疲れを回復させるための現象と言えます。
但し自律神経のバランスが乱れると、
多量の寝汗をかきやすくなります。
漢方では、この生理現象とは別の
良くない汗のことを「盗汗」(とうかん) と呼び、
シーツまで濡れてしまう程の寝汗や、
上半身、特に頭から首筋に汗をかきやすいのも
盗汗に見られる傾向の1つと言われています。
ひどい寝汗の原因の1つが
自律神経の乱れであることから、
生活習慣を整えることは欠かせません。
中でも大切なのは「適度な運動」です。
汗をかくこと自体は
健康のために必要なことです。
常にクーラーをかけ、
日中に汗をかかない生活をしていれば、
体内にこもる熱も増えます。
適度に汗をかくことが
快眠と健康な生活に繋がるのです。
どれほどの寝汗をかいたら要注意という、
明確な目安はありませんが、
日中に強い倦怠感があったり、
体重減少が続いていたり、
微熱が続いたりしている場合には、
軽視せずに医療機関を受診して下さい。