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旧暦

日本で使われてきた「旧暦」とは、
正式には「太陰太陽暦」と言い、
月の運行に太陽暦の要素を加味した「暦」です。
 
 

「旧暦」とは

暦には、「太陽暦」「太陰暦」「太陰太陽暦」の3つがあり、
「太陽暦」は太陽の運行を元にしているもの、
「太陰暦」は月の満ち欠けを元にしているもの、
「太陰太陽暦」は月の満ち欠けをベースに、太陽の運行も加味して
暦を算出しています。
明治6(1873)年の改暦で「新暦(グレゴリオ暦)」になるまで、
季節や行事の基準として長い間親しまれた日本の暮らしの暦です。
未だに私達の生活の中で使われている
「立春」「冬至」と言った季節の考え方は、「旧暦」の考え方です。
 
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「旧暦」は、
「新月」から「満月」へと月が満ち、再び「新月」になるという
月の満ち欠けのサイクルを一月としたものです。
ですから、月の始まりの日は必ず「新月」でした。
月の満ち欠けは潮の満ち引きにも関係しているため、
「旧暦」はそのまま自然の変化を示すものでした。
古くから伝わる日本の行事や季節を表す言葉は、
「旧暦」を基に作られたものが多く、
暦が太陽暦に変わった現在でも、日本人の季節感の根底にあります。
 
「旧暦」は新暦と違い、太陽と月の動きを基本としているため、
季節感が少しズレていたり、分かりにくいイメージがありますが、
理解を深めると、自然の流れを熟知した昔の人の知恵が沢山詰まっていて、
自然の流れに合った生活が出来るようになります。
 
 

因みに、現在、日本で「公式な旧暦」の計算は行われていません。

現在「旧暦」と呼んでいる暦は、

日付の数え方や置閏法(閏月の置き方)が

「 天保暦」を模倣しているというだけで、

あくまで「天保暦のようなもの」といったところでしょうか。

 

 

暦の種類

太陽暦

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現在、私達が普段使っている暦は、
「新暦」「西暦」や「グレゴリオ暦」と言われ、
「太陽暦(solar calendar)」で、
地球が太陽の周りを回る周期(太陽年)を基にして作られた暦です。
「太陽年」の周期は約365.24218944日で、
単純に「1年を365日」とすると、4年でほぼ1日のズレが生じます。
このズレを補正するために「閏日」が設けられています。
 
1582年にローマ教皇のグレゴリウス13世が
「ユリウス暦」を改良して制定しました。
 
太陰暦

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「太陰暦(lunar calendar)」は、
月の満ち欠けの周期を基にした暦です。
 
カレンダーの起源は、遥か昔の紀元前18世紀頃の
古代バビロニア帝国の時代まで遡ります。
古代バビロニアでは、僧侶達が毎夜寺院の屋上に登って、
月を観測していました。
そこで、『月の満ち欠けは一定の周期で行われる』ということを
発見しました。
そして、この周期を元に彼らは、
新月から次の新月までを1カ月とするルールを決めました。
これが「太陰暦」です。
「太陰暦」の誕生で「月」や「日」の概念が出来、
スケジュールを組む習慣が生まれたと推測されています。
 
「太陰暦」では、
1朔望月をひと月とし、12カ月を1年(1太陰年)とすると、
1太陰年は29.530589日×12 = 354.36707日と、
1太陽年(365.242189日)に比べて約11日短く、
3年で1月以上の誤差が出てしまいます。
 
太陰太陽暦
「太陰太陽暦(lunisolar calendar)」とは、
「太陰暦」を基としますが、
「太陰暦」では一年が約354日であり、
「太陽暦」の一年に比べて約11日短く、3年毎に約1か月ズレます。
このズレを放っておくと暦が季節と大きく食い違ってしまうため、
太陽の運行を参考にしつつ「閏月」(うるうづき)を設けて
季節のズレを調節したものが、「太陰太陽暦」です。
 
 

日本における暦の歴史

自然暦
日本では、古くは確かな暦がなく、
自然現象に従っていた「自然暦」だったと言われています。
 
旧暦
6世紀の中頃(『日本書紀』によれば554年)に、
Chinaを起源とする太陽太陰暦「元嘉暦」(げんかれき)
導入されました。
「元嘉暦」(げんかれき)は、
China南北朝時代の南朝宋(420~479年)の
何承天(かしょうてん)によって作られた暦です。
 
862年からは、China式の「宣明暦」(せんみょうれき)
800年にも渡って使われましたが、
江戸時代の貞享2(1685)年に、
渋川春海(しぶかわはるみ)によって作られた
日本独自の太陰太陽暦である「貞享暦」(じょうきょうれき)が完成し、
採用されました。
「旧暦」のことを「和暦」とも呼びますが、
日本人が作ったという点では、
「貞享暦」以後の諸暦がそれに当たります。
 
「貞享暦」では、
暦法の基準点をChinaの都ではなく京都に移したことや、
日本独自の暦註、
例えば「八十八夜」や「二百十日」を採用したことなど、
いくつもの改良が加えられているそうです。
 
以後、明治6(1873)年に「新暦」が利用されるまでの間に、
「宝暦暦」「寛政暦」「天保暦」と三度改暦が行われ、
誤差が修正されました。
天保15(1844)年(1844年)に改暦された「天保暦」は、
世界で最も正確な「太陰太陽暦」であったと言われています。
「グレゴリオ暦」よりも正確だとも言われていました。
 
  • 1685年~1755年:貞享暦じょうきょうれき
  • 1755年~1798年:宝 暦 暦ほうりゃくれき
  • 1798年~1844年:寛 政 暦かんせいれき
  • 1844年~1872年:天 保 暦てんぽうれき
 
「新暦」の採用
太陰太陽暦の「天保暦」は、
国民にも浸透していて正確なものでしたが、
「グレゴリオ暦」を採用している諸外国と外交上で足並みを揃えるため、
文明国家の仲間入りしたことを広くアピールするために、
 
明治5(1872)年11月9日に、
「太政官布告(第337号)」という法律によって正式に改暦が決定され、
明治6(1873)年1月1日から「グレゴリオ暦」が使用されるようになりました。
暦を統一することは、国の行く末までも占う重要なことだったのです。
 
ところが明治6(1873)年1月1日は、
それまで使用されていた「天保暦」では明治5年12月3日。
つまり、明治5年の12月は、1日と2日の2日間しかありません!
また、法律の公布から改暦までは1カ月足らずしかありません!
 
こんな大慌てで「改暦」が行ったのは、
明治6年は「閏月」が入るためでした。
 
既に役人の給与を「年棒制」から「月給制」に改めた後なので、
このままでは、13回給与を支払わなければなりません。
これは財政難であった明治新政府にとって悩みの種でした。
また「太陽暦」に切り替えることによって、
明治5年の12月は2日しかありませんから
この月の月給は支払わないことにすれば、
明治5年分の給与も1月分減らせます。
正に一石二鳥であったという訳でした。
 
 

「旧暦」と「新暦」の違い

閏月の有無
「新暦(太陽暦)」では、
地球が太陽の周りを1周する期間=365.26日を1年とします。
1か月は月によって30日か31日になり、
4年に1度の「閏年」(うるうどし)で1日のズレを調整します。
 
一方「旧暦(太陰太陽暦)」では、
月が地球の周りを1周する期間=約29.5日を1カ月とし、
その12カ月分の積み重ねである1年は354日(=29.5日×12カ月)となり、
「太陽暦」と比べると約11日短くなります。
1か月は29日か30日になり、
何月がどちらになるかは毎年変わります。
そして19年に7回程、
1年が13か月になる「閏月」(うるうづき)を設けることで、
11日の誤差を調整します。
「新暦」には「閏月」はありませんが、「旧暦」には「閏月」があります。
 
「新月」は必ず「一日」、月の満ち欠けに対応している
「旧暦」の1日、2日、3日・・・と言った日付は、
月の満ち欠けに合わせて付けられています。
必ず1日が「新月」になります。
月が地球を一周する周期が29.53日なので、
1カ月は29日だったり30日だったりします。
「旧暦」では、新年の1月1日は必ず「新月」です。
「十五夜のお月様」というように、「旧暦」では15日は「満月」です。
このように「旧暦」では、日にちを見ると、
自然とその日の「月(MOON)」が何なのか分かるようになっています。
 
潮の満ち引きも日にちで分かる
月の満ち欠けと潮の満ち引きの関係は有名な話です。
「旧暦」の日にちは月の満ち欠けに合わせられているので、
同時に潮の満ち引きも分かるようになっています。
 
太陽・月・地球が一直線になる、新月と満月の時、
月と太陽の重力が同じ方向になります。
地球では太陽と月に引っ張られるため、
潮の満ち引きの差が大きい「大潮」になります。
 
反対に、太陽と地球、月と地球の線が90度になる
「下弦」と「上弦」の月の時には、重力は分散されるため、
潮の満ち引きの差があまりない「小潮」になります。
 
「旧暦」で言うと、1日や15日はいつも「大潮」で、
8日と23日頃は「小潮」になります。
 
また、地球は自転しているので、
一日に「満潮」と「干潮」が2回ずつ訪れます。
 
月が地球を周る軌道も、地球が太陽を周る軌道も綺麗な円ではなく、
楕円形です。
そのため、常に地球・月・太陽の距離は変わっています。
それは潮にも影響していて、
距離が近くなる15、16年の周期で「超大潮」が起こったりします。
 
「春」の始まり
現在、気象庁の季節区分では、春は3月からとされていますが、
「旧暦」では実際の季節感に即して、
1月を「春」の始まりとして、
4月から「夏」、7月から「秋」、10月から「冬」としています。
また、各季節を「初」「仲」「晩」の3つの期間に分け、
より繊細に季節を分けています。
 
 

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