毎年お盆期間を「お盆休み」として、
多くの企業や学校が休暇を取ることが
一般的ですが、昔も、
「小正月」の1月15日と
「お盆」 の7月15,16日(8月15,16日)は、
「藪入り」と言って、
嫁入り先のお嫁さんや奉公先の丁稚や女中が
実家に帰ることの出来る休みの日でした。
語源
藪の深い田舎に帰るからという説、
奉公人を実家に帰す「宿入り」が
訛ったという説などがありますが、
定かではありません。
関西では6がつくので「六入り」(ろくいり) 、
鹿児島県では「親見参」(おやげんぞ) などと
呼ぶところもあります。
なお正月の「藪入り」に対して、
お盆は 「後 (のち) の藪入り」 とも呼ばれています。
「藪入り」の由来
「藪入り」は、「生御魂」(いきみたま)の
慣習と関わりがあります。
お盆は「先祖供養」の行事ですが、一方で、
「生御魂/生見玉」(いきみたま)とか
「生盆」(いきぼん)などといって、
亡くなった先祖の精霊に近しい存在でもある、
今を生きている父母や親類をもてなし、
長寿を祝うという一面もあったのです。
正月の旧暦1月15日や盆中の7月15日と
その前後の日に、
他所に嫁いだ娘や家を出た者達が実家に帰り、
親達に魚を贈ったり、
食事をふるまったりする習俗で、
贈り物そのものを指す言葉でもありました。
江戸時代の嘉永4(1851)年に刊行された
『東都遊覧年中行事』には
「貴賤佳節を祝ふ、
生身魂とて現存の父母へ魚るいを祝ふ」 とあり「生御魂」の行事が広く祝われていたことが
分かります。
また、天保9(1838)年に刊行された
江戸及び近郊の年中行事の解説書
『東都歳時記』(とうとさいじき) 7月15日の項には「中元御祝儀。
荷飯 (はすめし)・刺鯖 (さしさば) を時食とす。
刺鯖は、その色、青紫のものを上とす。
能登産を上品とし、越中これに亜 (つ) ぐ。」
と記され、
「蓮の飯」と「刺鯖」は定番の贈り物でした。
「蓮の飯」(はすのめし)
餅米で炊いた飯を蓮の葉で摘んだものです。
親は勿論、名付け親や仲人、親戚に贈った
親は勿論、名付け親や仲人、親戚に贈った
そうです。
「刺鯖」(さしさば)
背開きの鯖を塩漬けにして二尾を重ね、
頭のところで刺し連ねて一刺しにしたものです。
頭のところで刺し連ねて一刺しにしたものです。
お盆の頃の鯖は脂が乗って美味。
塩漬けでいい保存食になります。
藪入りの日
「薮入り」の日、
主人は奉公人に着物や小遣いを与えて、
親元に送り出しました。
親元では親が首を長くして
子供の帰りを待っていて、
親子水入らずのひと時を過ごしました。
親元に帰れない者は芝居見物などに出かけ、
年2回だけのお休みを楽しみました。
戦後、労働スタイルが変化し、
日曜日などの定休日が出来たため
「藪入り」は廃れてしまいましたが、
今でもお正月やお盆に実家へ帰る折に、
手ぶらで戻ることは少ないでしょう。
「刺し鯖」は手土産に置き換わり、
「生御霊」の言葉は忘れられたとしても、
親を大切に思う子の心は、案外、
今を生きる私達にもしっかり息づいていると
言えるかもしれません。