「土用餅」(どようもち)は、
「土用の丑の日」に食べる夏の季節和菓子
です。
江戸時代より続いている習慣で、
夏の暑い時期を
健康に過ごせるようにと無病息災を願って、
特に京都や金沢を中心に、
関西および北陸地方で食べられてきました。
「土用餅」の由来
「土用餅」(どようもち)とは、
「夏の土用」の期間に食べる
「あんころ餅」のことを言います。
その昔、宮中では、土用の期間中に、
蘿藦(ががいも)の葉を煮出した汁で
餅米の粉を練って丸めた餅を
味噌汁に入れ、「暑気払い」として食べる
風習がありました。
「ガガイモ(蘿藦、鏡芋、芄蘭)」は、
山野の日当たりの良い草原などに自生し、
若芽は山菜として、茎や種は薬草として
使われています。
このガガイモは『古事記』にも登場していて
「少名毘古那神」 (すくなびこなのかみ) が
ガガイモの実を割って作った舟
「天之羅摩船」(あまのかがみぶね) に乗って、
蛾の皮の衣服を着て、出雲国にやって来たと
記されています。
これが江戸時代になると
これがお餅を小豆の餡子で包んだ
「あんころ餅」へと変わり、
「夏の土用の丑の日」に
無病息災を願って食べると
体に良いと言われる食べ物の一つとして、
この「土用餅」(どようもち) が採用されました。
今では夏バテ防止と言えば「鰻」ですが、
昔から土用に作った「餅」を食べると
力がつくと言われ、
更に「土用餅」を包む小豆あんの「小豆」も
その赤色が魔除けに通じることから、
「小豆」で作った「あんころ餅」を
夏の暑さが本番となる土用に食べることで、
暑さに負けず、邪気や災難を打ち払うと
言い伝えられてきました。
「土用餅」を食べる地域
「土用餅」が食べられる地域は、
関西や北陸と言った
一部地域に限定されています。
特に京都や金沢と言った古都では、
昔から「土用餅」に馴染みがある方が多く、
「夏の土用」が近くなると、
老舗の和菓子屋などでは
「土用餅」の販売が始まります。
特に、「お伊勢参り」で有名な
三重県「赤福」(あかふく) 、
大名行列の接待から生まれた岡山県倉敷の
石川県白山市の
老舗和菓子屋「圓八」(えんぱち) の
あんころ餅は「日本三大あんころ餅」と
言われています。
あんころ餅
「あんころ餅」とは、
「小豆餡でくるんだ餅」のことで、
餡が衣状になっていることから
「餡衣餅」(あんころももち)、
そこから「あんころ餅」に変化したと
言われています。
「あんころ餅」と
「おはぎ・ぼたもち」の違いは
中身の形状にあります。
「おはぎ・ぼたもち」は、
中の餅に米粒が残っているのに対し、
「あんころ餅」は
完全に擂り潰した餅となっているのが
特徴です。
- おはぎ・ぼたもち -
- あんころ餅(土用餅) -
このことから、
「あんころ餅」を「全殺し」、
「おはぎ」を「半殺し」などと
呼ぶこともあります。
小豆
「小豆」には、良質な「たんぱく質」を始め、
「食物繊維」や「ビタミンB1」「ビタミンB2」の他、
鉄分、亜鉛、カルシウム、カリウム、
ポリフェノール、サポニンと言った成分が
数多く含まれています。
ビタミンB1やB2には、
糖質や脂質の代謝を促進して
エネルギーを産生する働きがあるため、
疲労回復に役立つことから、
夏バテにも効果があると言われています。
また、暑い夏は汗によって
体内のミネラルが失われてしまうため、
「土用餅」を食べることで
失われたミネラルを補うことが出来ます。