
約1200年前、弘法大師・空海が42歳の時、
修行の場として
四国に八十八ヶ所の霊場を開きました。
弘法大師の亡き後、
弟子達がその遍路を辿ったことが、
「四国八十八ヶ所お遍路」の始まりと
伝えられています。
四国八十八ヶ所の「お遍路」の旅は、
徳島県から始まり、高知県、愛媛県、香川県の
四国4県にある札所を巡拝します。
「回遊型」の参拝ルートは世界的にも珍しく、
約1,450㎞という大変長い距離に渡る
全ての札所を巡ることで、
己の煩悩がなくなり、願いが叶うと
言われています。
四国八十八カ所霊場などの巡礼において、
全ての札所を一度に続けて巡る
「通し打ち」の場合、
1日20~30㎞のペースで歩けたとしても
45~60日間という長期間の日程が必要と
言われています。
「通し打ち」を始めた歩きお遍路のうち、
最後まで一気に歩き通せるのは
3割程度と言われているほど、
かなり過酷な旅です。
何回かに分けて巡る「区切り打ち」でも
かなりの覚悟と体力が必要と言えます。
このように体力、時間、費用の問題などから、
「お遍路」の旅を願いながらも様々な事情で
叶える事が出来ない方が大勢いました。
それは昔も今も変わりませんが、
特に交通の便が発達していなかった時代は、
四国に行くこと自体が大変だったのです。
そこで約400年前の江戸時代になると、
一部の巡礼者達が聖地から砂を持ち帰って、
これを使った「お砂踏み」(おすなふみ) と呼ばれる
巡礼の縮小版を全国各地で始めました。
「お砂踏み」(おすなふみ) とは、
「四国八十八ヶ所霊場」の
各札所の「お砂」をそれぞれ集め、
その「お砂」を札所と考えて
「お砂」を踏みながら礼拝することで、
実際にその場を巡拝したのと同じ
御利益(功徳)が得られるとされる
代替・模擬的な巡礼方法です。
江戸時代には、
八十八ヶ所霊場を模した小さな会場、
「うつし霊場」や「お砂踏み道場」などが
日本全国に数多く造られました。
そこには、実際のお遍路の並びで
各寺院の本尊を表す絵や彫像をお祀りして、
その本尊を祀った寺院から持ってきた砂の袋をそれぞれの正面に敷かれました。
この砂は寺院の聖なる土地を表し、
それを踏んだ巡礼者は、
実際の聖域に参拝した人と同じ恵みを
授かることが出来たのです。
現在でも数多く寺院で
「お砂踏み」が行われています。
京都にある「東寺(教王護国寺)」では、
毎月21日に、弘法大師の縁日に合わせて
「お砂踏み」が行われています。
京都の「大覚寺」では、
毎年5月から6月にかけて
「お砂踏み」が行われています。
香川県の「総本山善通寺」には、
「お砂踏み」の常設道場があります。