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コツコツと

寒晒し(かんざらし)

寒中」に、食品や布といった物を
「寒風」や「寒の水」に晒して置くことを
「寒晒(寒曝)」(かんざらし)とか
「寒風干し」(かんぷうぼし)と言います。
 

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寒さの厳しい時期の「寒の水」は、
質が最も良く柔らかな味で、雑菌が少なく、
いつまでも腐ることなく保存出来ると
言われました。
 
北または北西から吹く強い季節風「寒風」は、
日本海側に「雪」、太平洋側に「乾燥」を
もたらします。
 
そんな「寒の水」に浸けて不純物を除去し、
乾燥した「寒風」自然凍結と「太陽光」による
解凍・乾燥を繰り返すことによって、
成分や構造が変化して、
食べ物なら美味しさが増し、
物の質感や触感は異なったものとなります。
 
 

食品の寒晒し

寒晒粉(かんざらしこ)
 
糯米(もちごめ)を石臼で挽いて粉にし、
「寒の水」に浸けて洗って水を切り、
更に冷水に晒しながら
きめ細かな細粒分のみを絞り採って、
それを「寒風」に晒して天日乾燥したものを
「寒晒粉」(かんざらしこ)
別名「白玉粉」(しらたまこ)と言います。
 
 
脂肪分が減って粒子が細かくなることから、
白玉の滑らかな舌触りと
独特のマイルドな味になります。
 
 
九州の島原地方の白玉スイーツの
「かんざらし」は、白玉粉で作った
小さな団子を「島原の湧水」で冷やし、
蜂蜜、砂糖などで作った特製の蜜を
かけたものです。
 
寒天(かんてん)
 
「寒天」(かんてん)の語源は、
「寒晒しにしたところ天」から来ているとも、
「乾燥させた天草(てんぐさ)」とも言われます。
何でも、参勤交代途上の島津候が食べ残した
「心太」(ところてん)を戸外に捨ておいたところ、
偶然出来たのだとか。
 
 
「寒天」は、原料となる天草を煮て固めて、
凍てついた寒気に晒して凍らせ、
再び天日でゆっくりと融解させ乾燥させる
という作業を繰り返して作ります。
乾燥した寒冷地に適した産業で、
長野県諏訪地方や岐阜県東農地方が
生産地として有名です。
 
葛晒し(くずさらし)
 
葛の根から「葛粉」を採るための
一連の作業を「葛晒し」(くずさらし)
言います。
 
 
葛の根を叩いて潰して細かく砕いたものを
桶に入れて水に浸し、沈殿した澱粉が固まるまで何度も水を替え、20日間ぐらい晒します。
良質の葛粉を作るためには、
「寒の水」が良いとされることから、
厳寒の中、作業が行われます。
奈良県吉野産の葛粉は「吉野葛」と呼ばれ、
高級品として昔から有名です。
 
凍み豆腐(しみどうふ)
 
「凍み豆腐」(しみどうふ)は、
寒の内(寒中)」に作られる
東北地方と長野から北関東の寒冷地の
特産物です。
 
 
豆腐を適当な厚さに切って屋外に置いて、
夜間は凍らせ、昼間は溶かすことを
繰り返して水分を抜いた後、
簀に並べたり、軒端に吊るしたりして
乾燥させて作ります。
以前は、零下10度を下回る屋外での
厳しい作業でしたが、
近年では、冷凍装置で大量生産されます。
 
凍みこんにゃく
現在は茨城県北部のみで生産されている
希少な食材「凍みこんにゃく」は、
こんにゃくを夜の間凍らせ、
それを日干して氷を解き、乾燥させたものです。
 
 
凍み大根
 
寒中」に大根を輪切りにして、
野外の「寒風」に当てて乾燥させることを
何度も繰り返すことで出来上がる保存食。
独特の風味が加わり、
煮物にも、味噌汁にも好適な具となります。
 
寒晒し蕎麦(かんざらしそば)
秋に収穫した新蕎麦を、寒中に、
「寒の水」の冷たい水に10日ほど漬けた後、
「寒風」に晒して乾燥させた後の蕎麦を
「寒晒し蕎麦」(かんざらしそば)と呼びます。
アクが少なく、甘みのある蕎麦になると
言われています。
 
寒風干し
 
鮭などの魚を塩漬けにし、
塩を好みの加減で抜いたものを、
冬の寒い「寒風」に晒して
乾燥させた干物のことを「寒風干し」と
言います。
 
 
「寒風干し」をすることで、
魚の余分な水分が抜けて身が締まり、
更には熟成、発酵させることで、
魚の旨味成分である「イノシシ酸」を
豊富に含んだ状態にすることが出来るため、
魚をより美味しく食べることが出来ます。
 
 

寒漉き(かんすき)

 
古くから、「紙は寒漉きの紙が一番!」と
言われています。
 
まず、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)
などの植物の皮を水に晒して皮を剥きます。
この木の皮を更に水に晒したり、
陽の光に当てると白くなります。
特に雪の上に広げて置く「雪晒」(ゆきざらし)は、
雪が太陽光を反射することで、
美しい白さが引き出せます。
 
その後、黒皮の部分を削り落として蒸し、
不純物(塵)を手で根気よく取り除いたら、
打ち棒で叩いて、繊維をより細く解します。
これで和紙の原料が出来上がり、
いよいよ「紙漉き」です。
 
「漉き舟 (水槽)」に、原料・水・ネリを入れ、
「簀桁」ですくって縦横に揺らし、一枚一枚、
丁寧に漉いていきます。
 
 
紙漉きで大事なのは「ネリ」の働きです。
「寒漉き」の紙がなぜいいかというと、
温度が低いと「ネリ」に包まれた繊維が
分散しやすくなり、繊維が絡みやすくなるため、
良い紙が出来るのです。
 
但し「ネリ」は時間が経つと
水に戻ってしまいます。
特に夏場は、「ネリ」は早く水っぽくなり、
また腐りやすいのです。
原料も夏はカビが生えやすくなります。
このようなことから、
厳寒期の方が適している訳です。
 
漉き上がった紙は、「簀桁」から簀を外し、「紙床」(しと)に重ねて伏せます。
圧力をかけて紙床を絞り、一枚づつ剥がして
乾燥板に張って天日で乾燥させると、
出来上がりです。
 
 

寒紅(かんべに)

「寒中」に作られた口紅を
寒紅(かんべに)と言います。
特に「寒中」の「丑の日」に製した
「丑紅」(うしべに)は高級品とされました。
 

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染色

「飛騨染」
 
岐阜県の「飛騨染」では、
絵柄を大豆の汁で溶いた顔料を用いて描いた後、
生地を水に晒して屋外に吊り、
「伸針」(しんしん)という針の付いた竹ひごで
布を張った後、寒中の冷気に当てる
「寒晒し」を行います。
これによって生地の色持ちが良くなり、
ハリとツヤが出ます。
また雪の作用によって、生地の漂白されます。
 
郡上本染
 
岐阜県の重要無形文化財である
「郡上本染」の手法で描かれた
「鯉のぼり」を身を切るような寒さの中、
小駄良川に晒し布についた糊を落とす作業は、
「鯉のぼりの寒ざらし」と言われ、
郡上の冬の風物詩です。

寒晒し(寒起こし・冬耕起)

寒中に是非やっておきたいのは、
畑に霜が降りる厳寒期に土を掘り起こし、
その時に出来た土の塊を寒気に当てる作業です。
「寒晒し」「寒起こし」「冬耕起」と言います。
 

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