「寒紅」(かんべに)とは、
「寒中」に作られた口紅のことです。
「寒中」に作った「紅」は、
品質が良いばかりでなく薬効も高く、
更に色が特に鮮明で美しいとされ、
猪口などに塗り付けた「小町紅」は
「寒」の時期によく売れました。
中でも「寒中の丑の日」に売り出された
「寒紅」(かんべに)は「丑紅」(うしべに)と言い、
「口中の虫を殺す」とか
「唇の荒れに効果がある」とされ、
江戸時代の女性達は競って「紅」を
買い求めました。
紅屋の店先には
「今日うし紅」と書かれた札が出され、
「丑紅」を購入したお客様には、
景品として「丑紅の牛」という
黒か金の牛の置物が配られました。
この牛の置物に赤い座布団を敷き、
神棚に供えて拝むと
その一年は着物に不自由しないという
言い伝えが広まったことから、
更なる人気を集めたようです。
当時の「紅」は、
紅花から赤い色素を抽出したもので、
それをお猪口や貝などの内側に塗って
市販されていました。
粋な江戸の女性達の間で憧れの的になったのが
「小町紅」(こまちべに)でした。
紅の原料を買い取って精製し、販売する
「紅屋」が続々と誕生しました。
現在、日本に唯一存在する紅屋の
「伊勢半本店」もこの頃に創業されました。