「菜種梅雨」(なたねづゆ)とは、
菜の花(別名:菜種)の盛りの頃に降り続く
長雨のことを言います。
菜種梅雨(なたねづゆ)
「菜種梅雨」(なたねづゆ)とは、
3月下旬から4月上旬頃、
つまり菜の花が咲く季節に、
まるで梅雨時のようにぐずついた天候が続く
ことを言います。
但し、梅雨のようにずっと続く訳ではなく、
一日中あるいは数日程度のことがほとんどです。

日本では、冬の間は高気圧に覆われるため
晴れの日が続きますが、
3月半ばから4月頃になると、
その高気圧が北上して、代わりに、
南にある初夏の空気を持つ高気圧の勢力が
徐々に強まってきます。
ところが、冬の冷たい空気を持つ
シベリア高気圧が時折勢力を盛り返して
南の高気圧とぶつかり、
まるで梅雨のような停滞前線が出来て、
主に、東日本や西日本の太平洋側が
長雨となります。
前線の北にある高気圧は
冬の冷たい空気で構成されていますので、
「菜種梅雨」の雨はとても冷たく寒いです。
花が咲いたからといって、決して油断は
出来ません。
また稀に、「菜種梅雨」が1か月近く続くこともあります。
昭和60(1985)年、東京では、
3月は5日間しか「晴れ」の日はなく、
更に「快晴」であった日は何と0日だった
そうです。
この年の3月は「暗い3月」とも呼ばれました。
気候も良い3月下旬から4月上旬に
ぐつついた天候が続くのは
気分が滅入ってしまいますが、
「菜種梅雨」を乗り越えれば、
花々が咲き誇る春がやって来ます。
≪参考≫
「菜種梅雨」の別名
春の長雨、春霖

この「菜種梅雨」には、
「春の長雨」とか「春霖」(しゅんりん)という
別名があります。
降る長雨です。
「春霖」(しゅんりん)の
「霖」は「長雨」という意味です。
3月半ばから4月頃は、草木が生長し、
花の蕾も膨らむ春が訪れる時期ですから、
春の長雨「春霖」(しゅんりん)は
秋の長雨「秋霖」(しゅうりん)に比べると、
明るいイメージがあります。
催花雨(さいかう)
「催花雨」(さいかう)という別名もあります。
「催花雨」は、桜や菜の花を始め、色々な花を
催す(咲かせる)雨という意味です。
「催花」(さいか)という漢字が
同音の「菜花」(さいか)に通ずることから、
「菜花雨」「菜種梅雨」になったという説も
あります。
植物の名前が付いた春の雨
春から夏にかけては、
農業にとって大切な雨が降ることから、
この時期の雨には植物の名前の付いた雨が
数多く見られます。
花時雨(はなしぐれ)
花の季節に降る、時雨のような冷たい雨。
桜の花の頃に花びらをさっと濡らして
通り過ぎる雨のことです。
桜雨(さくらあめ)
まさに桜の咲く頃に降る雨。
桜の咲く頃は、「花冷え」があったり、
風も強く花を散らしてしまうことも多く、
華やかさとはかなさが同居している雨と
言えます。
リラの雨
寒冷地で育つリラ(ライラック)が咲く
季節に、オホーツク海の冷たい高気圧から
冷たい気流が流れ込み、リラ(ライラック)の
花を濡らす雨の呼び名です。
寒さを伴うことが多く、「リラ冷え」を
生じることがよくあります。
筍梅雨(たけのこづゆ)
タケノコが出てくる4月~5月に吹く
南東の風のことで、
伊勢・伊豆地方の船乗りのことば。
青葉雨(あおばあめ)
木々の青葉に降りかかる雨のことを言います。
春萌え出た新芽がだんだん緑濃く、
青葉の頃を迎え、
その頃に青葉を濡らして降る様が
初夏の風情を感じさせる季語です。
「翆雨」(すいう)や「緑雨」(りょくう)、
「若葉雨」(わかばあめ)とも言います。
卯の花腐し(うのはなくたし)
旧暦四月の異名は「卯月」と言いますが、
この「卯」は卯の花(うつぎ)のことで、
その頃降り続く長雨のことを
「卯の花腐し」(うのはなくたし)と言います。
「卯の花降」とも「卯の花下」とも書きます。