「菜種梅雨」(なたねづゆ)とは、
菜の花(別名:菜種)の盛りの頃に降り続く長雨のことを言います。

日本では、冬の間は高気圧に覆われるため晴れの日が続きますが、
この頃になると、その高気圧が北上して、
代わりに、南にある初夏の空気を持つ高気圧の勢力が徐々に強まってきます。
ところが、冬の冷たい空気を持つシベリア高気圧が時折勢力を盛り返して
南の高気圧とぶつかり、まるで梅雨のような停滞前線が出来て、
主に東日本や西日本の太平洋側が長雨となるのです。
前線の北にある高気圧は冬の冷たい空気で構成されていますので、
「菜種梅雨」の雨はとても冷たく、寒いです。
花が咲いたからといって決して油断出来ません。

この「菜種梅雨」の別名には、
「春の長雨」「春霖」(しゅんりん)のというのもあります。
「春霖」(しゅんりん)
3月半ばから4月にかけて降る長雨。
「霖」は長雨という意味です。
この時期は梅雨のような気圧配置となり、
細かく冷たい雨が降り続けます。
草木が生長し、花の蕾も膨らむ
春の訪れを連想させるので、
秋の長雨「秋霖」(しゅうりん)に比べると、
明るいイメージがあります。
また、「催花雨」(さいかう)という別名もあります。
「催花雨」は、桜や菜の花を始め、
色々な花を催す(咲かせる)雨という意味です。
「催花」という漢字が同音の「菜花」に通ずることから、
「菜花雨」「菜種梅雨」になったという説もあります。
春から夏にかけては、農業にとって大切な雨が降ることから、
この時期の雨には植物の名前の付いた雨が数多く見られます。
花時雨(はなしぐれ)
花の季節に降る、時雨のような冷たい雨。
桜の花の頃に花びらをさっと濡らして通り過ぎる雨のことです。
桜雨(さくらあめ)
まさに桜の咲く頃に降る雨。
桜の咲く頃は、「花冷え」があったり、
風も強く花を散らしてしまうことも多く、
華やかさとはかなさが同居している雨と言えます。
リラの雨
寒冷地で育つリラ(ライラック)が咲く季節に、
オホーツク海の冷たい高気圧から冷たい気流が流れ込み
リラ(ライラック)の花を濡らす雨の呼び名です。
寒さを伴うことが多く、「リラ冷え」を生じることがよくあります。
筍梅雨(たけのこづゆ)
タケノコが出てくる4月~5月に吹く南東の風のことで、
伊勢・伊豆地方の船乗りのことば。
青葉雨(あおばあめ)
木々の青葉に降りかかる雨のことを言います。
春萌え出た新芽がだんだん緑濃く、青葉の頃を迎え、
その頃に青葉を濡らして降る様が初夏の風情を感じさせる季語です。
「翆雨」(すいう)や「緑雨」(りょくう)、「若葉雨」(わかばあめ)とも言います。
卯の花腐し(うのはなくたし)
旧暦四月の異名は「卯月」と言いますが、
この「卯」は卯の花(うつぎ)のことで、
その頃降り続く長雨のことを「卯の花腐し」(うのはなくたし)と言います。
「卯の花降」とも「卯の花下」とも書きます。
その後、梅の実の熟す頃、本格的な「梅雨」がやってきます。
≪参考≫