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秋の風

古来日本人は、風にも微妙な違いを感じ取り、
それぞれ名前をつけてきました。
日本各地には、それぞれの土地独自の
風の名前も多く存在しているそうで
その数は何と2000種類を超えているのだ
そうです。
 
 

野分とは

 
「野分」とは、秋から初冬にかけて吹く、
主として台風による暴風のことを言います。
雑節「二百十日」「二百二十日」前後に吹く
暴風のことです。
台風というと雨風を伴いますが、
「野分」の場合は、台風が逸れた時の
強い風のみのものも言います。
 
「野分」の言葉は、平安文学にも登場します。
清少納言は『枕草子』の中で、
「野分のまたの日こそ、
 いみじうあはれにをかしけれ」と、
台風一過の日には、しみじみとした趣があって趣きがあると書き記しています。
 
また紫式部も、
『源氏物語』第二十八帖「野分」の章で、
台風が通過する時の様子が詳しく描写し、
光源氏の息子・夕霧の思春期の心の揺れを
風に託して表現しています。
 

秋の風

 

秋風

秋になって吹く風。
立秋」の頃吹く秋風は、
秋の訪れを知らせる風です。
秋の進行とともに風の吹き方も変化し、
初秋には残暑を伴って吹き、
次第に爽やかになり、
晩秋には冷気を伴って、蕭条と吹く。
 
爽籟(そうらい)
「爽」は爽やか、
「籟」(らい)は三つの穴がある笛の音で、
秋風の爽やかな響きを意味しています。
因みに「爽やか」は、
晴れ渡った気配を表す秋の季語です。
 
金風(きんぷう)
古代Chinaに端を発する自然哲学の思想
「五行説」(ごぎょうせつ)では、
万物は木・火・土・金・水の5種類の
元素からなるという説であり、
それによると「秋」は「金」であるから
「金風」と言います。
 
色なき風(いろなきかぜ)
秋の風のこと。
秋風のことは「素風」とも言いますが、
これに因み、無色透明で、
華やかな色も艶もない風のこと。
身に染み入るような、
秋風の寂寥感を表しています。
 
素風(そふう)
「色なき風」からの派生語で、秋風のこと。
この「素」は「白」を表しています。
 
鯉魚風(りぎょふう)
秋の風のこと。
Chinaでは鯉は高級食材。
秋は一番脂がのって美味しいので、
秋風のことを「鯉の風」と呼ぶのかも
しれません。
 
鳩吹く風(はとふくかぜ)
「鳩吹く」とは、猟師が狩猟時、
獲物に気付かれないように、
手を組み合わせて笛のように吹く
鳩の鳴き声に似た合図のこと。
この「鳩吹き」に似た音を出す
秋の西風のことを言います。
 

初秋

秋の初風(あきのはつかぜ)
秋の訪れを初めて感じさせる風。
秋を感じる初めての涼風。
初秋の季語。
 
一番風(いちばんかぜ)
秋になって最初に吹く暴風のこと。
続いて吹く風は「二番風」「三番風」と
言います。
 
送り南風(おくりまぜ・おくりまじ)
陰暦七月(新暦では7月下旬頃~9月上旬頃)の「お盆」過ぎに吹く南風のこと。
畿内・中国地方の船人に伝わる言葉。
「送り」と付くのは、商用の終わった北前船を
北へ送り返す意から。
 
荻の声(おぎのこえ)
ススキに似た「荻」(おぎ)の葉を揺らす風が
たてる寂しい音のこと。
荻は昔から秋を知らせる草とされていました。
「荻」の古名を「風持草」(かぜもちぐさ)とか
「風聞草」(かざききぐさ)と言います。
 
萩の下風(はぎのしたかぜ)
萩の茂みの下を吹き抜ける風のこと。
 
盆東風(ぼんこち)
お盆の頃に吹く、
秋を感じさせる東からの風。
 
盆北風(ぼんぎた)
初秋に吹く北風のこと。
 
秋風月(あきかぜづき)
陰暦8月の異名。
「葉月」の別名。
黄金色に稔った稲に
秋風が吹く季節を表す言葉。
 
 

秋の嵐(あきのあらし)

秋季に吹く、台風のような強い風のこと。
「春の嵐」に対する季語でもあります。
 
初嵐(はつあらし)
秋の初めに吹く強い風のこと。
秋の初めに吹く激しく荒い風のこと。
台風シーズン到来を告げる「初嵐」は、
人の心を騒がせ、
作物や草木の上を荒れ狂いますが、
通り過ぎた翌日は、ハッとするような
青く澄んだ秋空が広がります。
 
雑節「二百十日」(にひゃくとおか)
立春から数えて二百十日目のことを言い、
新暦ではだいたい9月1日頃。
台風シーズンの到来で、
二百二十日」と合わせて
農家にとっては厄日と言われています。

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風の盆(かぜのぼん)
「お盆」は、元々は祖霊を祭る行事ですが、
風害を防ぎ、豊作を祈願する風祭と習合した
ものと考えられています。

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やまじ(やまぜ)
二百十日」から「二百二十日」頃にかけて
吹く、局地的で風向きが変わりやすい強風で、
漁船の遭難や、収穫前の稲に打撃を与える
原因となることから、瀬戸内から紀州、
伊豆の船人や農民に恐れられています。
似た言葉に「やませ」がありますが、
これは東北に冷害をもたらす悪風で夏の季語。
 
いなさ
南東よりの暴風で、
特に台風期の強風を指しています。
大雨を伴い、風水害や海難を起こす
恐ろしい風です。
 
おしあな
南東から吹く強風のことで、
主に長崎地方で言われています。
語源は「あなじ」という
北西からの強風を押し返す意味から。
風向きが西寄りに変わって収まるとされます。
 
高西風(たかにし)
 
秋に吹く強い西寄りの風のこと。
主に山陰・九州地方でいう。
稔った稲をなぎ倒したり、
海が大荒れになるなど、
農業、漁業にも影響を与える風。
 
黍嵐(きびあらし)
収穫の時期を迎えた「黍」(きび)を、
倒さんばかりに吹く風のこと。
 
芋嵐(いもあらし)
9月から10月は里芋の収穫時期。
里芋畑では、その里芋の大きな葉が
強めの風に倒れんばかりになびく様子を
表した言葉。
 
鮭颪(さけおろし)
秋の中頃、東北地方に吹く強い風のこと。
この頃、鮭が産卵のために
川を遡上することから、
このように呼ばれます。
この風を合図に、
鮭漁が始まると言われています。
 
青北風(あおぎた)
西日本で吹くかなり強い北風のこと。
この風が吹くと、急に涼しくなり、
海も空も青く澄むようになるという
漁師から生まれた言葉。
別名「雁渡し」(かりわたし)
気象学的には、「寒冷前線」の通過後、
高気圧の張り出しに伴うものと考えられます。
 
雁渡し(かりわたし)
雁が渡ってくる9月から10月頃にかけて
澄み切った空を吹き渡る北風のことです。
 
吹き始めは雨が降ることが多く、数日吹き続け、
波高く出漁が困難になるため漁師達が恐れて
「青北風」(あおぎた)と呼んでいたものを、
ちょうど同じ時期に、この風に乗るように
列をなした雁が渡ってくることから、
「雁渡し」「雁の使(つかい)」「雁の便(たより)」と
呼ばれるようになりました。
 

晩秋

大西風(おおにし)
晩秋に瀬戸内海や八丈島などで吹く、
西風のこと。
日本付近を低気圧が通過してから
東方洋上で発達すると、
その西側の大陸方面から西風が吹き募り、
海が時化(しけ)るので
大西風は海難の原因となることが多い。