季節の推移に合わせて衣服を変えることを
「衣替え」(ころもがえ)と言います。
宮中で旧暦4月1日に行われていた
「更衣」(こうい)が一般に広まった習慣で、
現在でも制服を着用するところでは
5~6月に夏服への更替えが行われます。
「衣替え」の歴史
衣服を夏服に着替える「衣替え」(ころもがえ)は
平安時代に始まった風習ですが、
6月1日に定まったのは江戸時代からです。
平安時代
「衣替え」(ころもがえ)の歴史は、
平安時代頃まで遡ります。
Chinaの習慣だったものが日本に伝わり、
宮中行事として定着したと言われています。
これを「更衣」(こうい)と言いました。
「更衣」(ころもがえ)は、年に2回、
陰暦4月1日と陰暦10月1日に行われ、
宮中では衣装だけでなく、
室内の装飾、調度品まで変えました。
但し「更衣」(こうい)は、
天皇の着替えの御用を務めた女官で、
後には天皇の傍に仕える女官を指すことから、
民間では「更衣」とは言わず
「衣替え」と言うようになりました。
なお秋の「更衣」(ころもがえ)は
「後の更衣」(のちのころもがえ)と言って、
夏の「更衣」(ころもがえ)と区別しました。
室町時代
室町時代以降になると、
日本でも綿が栽培されるようになり、
綿を入れた着物が用いられるようになると、
着物の素材や種類も増え、
「更衣」も変化します。
江戸時代
江戸時代に入ると、宮中の例に倣い、
武家や民間でも「更衣」が始められ、
「更衣」は年4回に決められた他、
着るものも幕府から指定されました。
4月1日から5月4日までが「袷衣」(あわせ)、
5月5日から8月末までは「帷子」(かたびら)、
9月1日から8日までが「袷衣」(あわせ)、
9月9日から翌年3月末までが「綿入れ」と
なっていました。
「袷衣」と「単衣」
「袷衣」(あわせ)とは、二枚の生地を縫い合わせて
仕立てた裏地付きの仕立て方のことを言います。
一方、一枚のみの生地で裏地なしの仕立て方を
したものは「単衣」(ひとえ)と言います。
涼しい時季には裏地のついた「袷」を、
夏は、裏地のついていない「単衣」に替えました。
「帷子」
「帷子」(かたびら)は、麻や苧麻(からむし)で
織った布で作る「単衣」(ひとえ)のことで、
肌にべとつかない盛夏の着物です。
「綿入れ」
「綿入れ」(わたいれ)は、袷の表地と裏地との
間に綿を入れた着物のことです。
単純に考えると、年に2回「袷」と「単衣」と「綿入れ」の3種類の着物が必要になります。
実際、庶民がそれほどたくさんの着物を
持っていた訳ではなかったので、
「更衣」の度に、着物に綿を入れたり
出したりしながら着まわしていたようです。
3月末まで「綿入れ」を着て、
4月1日には綿を抜いて「袷」に替えたことから「四月一日」と書いて「わたぬき」と
読むこともあります
明治時代以降
明治政府は洋式制服を採用し、
夏服と冬服の「衣替え」の時期も制定しました。
明治6(1873)年に新暦が施行されると
6月1日から9月30日までは「夏服」、
10月1日から翌年5月31日までは
「冬服」と定めると、
学校や家庭にも「衣替え」が定着し、
現在に至ります。
「衣替え」をするタイミング
「衣替え」は、暑くなる前の6月初めと
寒くなる前の10月初めに行うのが一般的です。
しかし、日本列島は縦に長く、
地域によって寒暖差がありますから、
多少前後することもあります。
季節の変わり目で気温も上下することから、
ある程度、移行期間を設けて
徐々に完成させるとよいでしょう。
夏服への衣替えは
「最高気温22℃以上」が目安
「衣替え」の具体的なタイミングとしては、
気温によって基準を決めて準備をするのが
ベストでしょう。
まず「最高気温が22℃」を超え始めたら、
夏服への衣替え時期になります。
そして「最高気温が25℃」以上になったら
いよいよ夏の到来です。
半袖に移行してOKです。
25℃ 以上 |
半袖へ移行 |
22℃ 以上 |
夏服へ衣替え |
15~20℃ 以上 |
春・秋服へ衣替え |
15℃ 以下 |
冬服へ衣替え |
衣替えをする時の注意点
天気の良い日に行う
「衣替え」は、天気の良い日に行いましょう。
そして「衣替え」をする時には
換気をしっかり行い、
風通しの良い空間で行うのも大切です。
雨の日に行うと、
クローゼットや洋服の中に湿気が籠り、
カビの発生や衣類の傷みの原因になります。
クリーニング・洗濯してから収納
一度でも着た服は、洗濯をしたり、
クリーニングに出したりして、
汚れを落として清潔にしてから収納しましょう。
汚れが残ったまま収納してしまうと、
次に着る時に服のニオイが気になったり、
また黄ばみが発生するなど、
服が傷んでしまう原因にもなりかねません。
シーズンが始まる前に
クリーニングに出す方もいらっしゃいますが、
なるべく衣替え前にクリーニングに出して、
清潔な状態で収納する方がと良いでしょう。
クローゼットや収納ケースを清潔に
せっかく服をキレイな状態にしたのですから、クローゼットの掃除もしておきましょう。
クローゼットが汚れていたり、
衣装ケースに菌がついていたりすると、
カビや害虫が発生する可能性があります。
ですから、まずは服を入れる場所を
清潔にしておきましょう。
普段からクローゼットを換気し、
アルコールで棚などを除菌しておくのも
おススメです。