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七十二候「麦秋至」

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「むぎのときいたる」
と読みます。
 
初冬に蒔かれた麦が熟し、
畑一面にたっぷりと金色の穂が実り始める頃。
収穫時を迎えます。
 
季節は「梅雨」にさしかかる頃で、
暦の上では「初夏」に当たる時季ですが、
麦にとっては「実りの秋」であることから、
「麦の秋」とか「麦秋」(ばくしゅう)
言います。
 
元々「秋(あき)」という言葉には、
穀物が成熟した収穫の時期という意味があり、
「麦」において「秋(実りの季節)」は初夏で、
「米」の「秋」は、稲穂が頭を垂れる
9~10月ぐらいと言えるでしょう。
 
「米」同様、古より日本人の生活の中で
重要な役割を担ってきた「麦」には、
「麦秋」以外にも様々な言葉があります。
 
黄金色の波のように、麦の穂を揺らしながら
吹き渡る爽やかな風を「麦嵐」(むぎあらし)
「麦風」(ばくふう)、「麦の秋風」、
その風によりそよぐ穂を「麦の波」、
麦の種蒔きや刈入れにぴったりな日は
「麦日和」(むぎびより)と言います。
 
麦が熟するこの時期に降る雨は
「麦雨」(ばくう)と言います。
麦は、雨に当たると穂の状態のままでは
発芽してしまうので、「梅雨」に入る前に
収穫しなければなりません。
 
二毛作の農家では、
麦を刈り取った後に田植えが始まり、
稲刈りが終わった秋になるとまた、
麦の種撒きが行われます。
 

 
 
「麦」は、世界中で一番多く作られている
穀物です。
「小麦」「大麦」「ライ麦」
「燕麦」(えんばく)などその種類は数多く、
全てイネ科に属する植物です。
 
日本では主に「大麦」と「小麦」が
作られています。
弥生時代の中末期には、畑で作られていた
ことが分かっていて、奈良時代には日本各地で
広く栽培されました。
鎌倉時代に「二毛作」が普及した後は、
寒冷・乾燥に強く、手間の掛からない
「大麦」の栽培が米の裏作として広がりました。
 
 
「大麦」には、外皮が硬いため、
剥けにくい「皮麦」と剥けやすい「裸麦」があり、
それぞれに結実する穂の数により、
「二条大麦」と「六条大麦」があります。
更に、含有されるアミロースの割合により、
粘りの少ない「うるち性」と
粘りが強い「もち性」に分けられ、
「もち性」は通称「もち麦」と呼びます。
 
 
 
「二条大麦」は、6列ある穂のうち2列のみに
大粒の実がなるため「大粒(だいりゅう)大麦」
とも呼ばれています。
明治初期にビール醸造を目的に導入され、
現在では焼酎の原料にもなっています。
 
 
 
「六条大麦」は、6列ある穂全てに小粒の実がなるため「小粒(しょうりゅう)大麦」とも呼ばれています。
日本では普通、「大麦」と言うと「六条大麦」のことを言います。
大麦は米などより繊維質が多く含まれるため、
古くから日本独自の技術で加工され、
消化を良くして食用にされてきました。
 
他にも、煎って粉にした「麦こがし」や、
煎った実を煮出した「麦茶」も日本ならではの
味わいです。
 

 
「押麦」(おしむぎ)

最もスタンダードな大麦で、
大麦を精白し、蒸気で加熱し
ローラーで圧扁加工(平たく)したもの。
粒の真ん中にある黒条線があるのが特徴です。
「麦とろごはん」などに利用されています。
 
「胚芽押麦」(はいがおしむぎ)

独自技術により「胚芽」を残して精白した
「押麦」です。
ビタミンB1、ビタミンEを多く含みます。
 
「丸麦」
大麦の外皮を取り除き、周りを削り取った状態
そのままの形をした丸い大麦です。
プチプチ、プリプリした食感が特徴です。
 
「白麦」(はくばく)

「丸麦」の中央にある黒条線に沿って
2つに切り、黒条線を取り除いててから、
蒸した後にローラーで圧扁加工したもの。
押麦ほど黒条線が目立ちません。
 
「ビタバレー」

「白麦」を疲労回復に役立つ「ビタミンB1」で
コーティングしたもの。
他のものより少しだけ黄色いのは、
ビタミンの色です。
 
「米粒麦」(べいりゅうばく)

お米と一緒に炊いても
大麦が余り目立たないように、
お米と同じような形に加工したもの。

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