単に「夕焼」と言えば「夏」の季語ですが、
夕焼自体は四季を通して見られるため、
春に見られるものは「春の夕焼」、
秋に見られるものは「秋の夕焼」、
冬に見られるものは「冬の夕焼」(ふゆゆうやけ)
というように呼び分けます。
「冬の夕焼」(ふゆゆうやけ)にも
鮮やかな美しさがあります。
冬は日没が早いので、
夕焼けを楽しむ時間は短く、
西空を燃え立たせて
たちまち薄れて消えてしまいます。
その儚く、寒々とした赤さの余韻は、
情緒的であり、しみじみと心に沁みます。
枯野の果てを染める夕焼け、
殺伐としたビル街をひと時浸す夕焼け、
枯木立や建物のコントラストも美しく、
それらを窓ガラス越しに眺めるのも、
冬ならではの趣ですね。
冬空を茜色に染めることから、
「冬茜」(ふゆあかね)という別名もあります。
口に出した時の響きが、何とも優しいですね。
更に1月から2月にかけての最も寒さが厳しい
「寒の内」の夕焼けを
「寒夕焼」(かんゆうやけ)と言います。
冬の寒さの厳しい時期で、大気も引き締まり、
夕日は眩しいくらいに輝きます。
その堅くきっぱりした語感のせいか、
一層峻烈な印象があります。
寒中の空を茜色に染める夕焼けを
「冬茜」に対して、
「寒茜」(かんあかね)と言います。
「寒茜」の方が、より厳しい寒さを感じる。
凍てつく赤さがより印象に残る夕焼けです。
沈む太陽を「落暉」(らっき)と呼ぶところから、
寒中の入日ということで、
「寒落暉」(かんらっき)という別名もあります。