うまずたゆまず

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二十八宿(にじゅうはっしゅく)

「二十八宿」の「宿」とは星座のことで、
28種類の星座に吉凶の意味をつけ、
それを日々に配して占うものです。
 

「二十八宿」の起源

 
「二十八宿」(にじゅうはっしゅく)とは、
元々、古代中国(周代初期・前1100頃)で、
月・太陽などの位置を示すために、
赤道・黄道(こうどう)付近で
天球(てんきゅう)を28に区分し、それぞれに
名付けられた星座「宿」のことです。
それぞれの星座を代表する「恒星」(こうせい)
「距星」(きょせい)と呼びました。
この天空での運動を暦の上に応用したものが
暦の「二十八宿」です。
 
「天球」(てんきゅう)とは

観測者を中心として、天体がそこに貼り付いているかのように見える仮想的な球面のこと。
「天球」は実在するものではないが、
天体の位置や動きを表すのに便利。
「黄道」(こうどう)は、天球上の太陽の通り道のこと。
 
月や惑星は、黄道の内側を運行していて、
月は1日に、二十八宿のうちの1宿ずつを
通過していくものと考えられました。
そして、月の星宿内での位置から
太陽の位置を推測して、季節を正すために
用いられました。
 
月の1恒星月は、27日と7時間43分11.5秒
です。
星宿の間隔は等しくないのですが、
約28日なので、「二十八宿」としました。
 
後の時代になると、天文学的な意味は薄れ、
「二十八宿」を「年」「月」「日」に循環配当し、
「東」「西」「南」「北」の四方を西から東へ
「青竜」(そうりゅう)、「玄武」(げんぶ)
「白虎」(びゃっこ)    、「朱雀」(すじゃく)
四宮とし、この四宮を7分して
それぞれ7つずつ星宿を配当して、
月や日の吉凶を占うために用いるように
なりました。
 
唐の時代(618~907)にインドに伝えられると
「牛宿」が除かれて「二十七宿」となり、
主に「日の吉凶」を知るために用いられる
ようになりました。
 

日本に伝わる

唐の時代(618~907)、インドで
西洋の七曜と組み合わさった
「宿曜経」(すくようきょう)
「二十七宿」として唐に逆輸入され、
それが後に、日本にも伝わりました。
 
そのため日本の暦法では、「宣明暦」までは
インド起源の「二十七宿」を用いていました。
渋川春海が改暦した「貞享暦」以降は、
China流の「二十八宿」に改められ、
現在の暦では「二十八宿」を用いるのが
一般的です。
但し寺院が発行している暦の中には
「二十七宿」を用いているものもあります。
「二十八宿」にあって
「二十七宿」には無い宿は「牛宿」です。
 
高松塚古墳とキトラ古墳

 
「宿曜経」(すくようきょう)は、平安時代に
弘法大師(空海)のよって唐より持ち帰られた
密教教典のひとつと言われますが、
その時には、既に日本に「二十八宿」が
伝わっていました。
 
宿曜経は正確には
「文殊師利菩薩及諸仙所説吉凶時日善悪宿曜経」
(もんじゅしりぼさつしょせんしょせつきっきょうじじつぜんあくしゅくようきょう)と言います。
余りにも長い名前なので後ろの3文字をとって「宿曜経」と呼ぶのが一般的です。
「文殊師利菩薩」は「文殊菩薩」のことで、
諸菩薩を主導するほどの智惠の優れた菩薩で、
学問成就や智惠、息災、増益、出産、除病の
功徳がある菩薩です。
「及諸仙所説吉凶日善悪宿曜経」は
その他諸々の仙人達が文殊菩薩の智惠を授かって、日々の吉凶や物事の善悪を説いた、
という意味です。
 
 
奈良県の明日香村にある
高松塚古墳」や「キトラ古墳」の天井には
「二十八宿」の星が描かれています。
 
キトラ古墳」は「高松塚古墳」よりも古く
7世紀末から8世紀初めに築造されたと
考えられいます。
 
キトラ古墳」の石室内部の壁面には、
「青龍」「朱雀」「白虎」「玄武」の四神と
獣頭人身の十二支が描かれ、
天井には精緻な天文図(「キトラ天文図」)、
東に金箔で「太陽」、西に銀箔で「月」が
描かれています。

高松塚古墳」では、盗掘により南壁の
「朱雀」が失われていたため、
我が国で四神の図像が全て揃うのは
キトラ古墳壁画のみです。
 
また「キトラ天文図」には、
古代Chinaの星座でも
特に重要視された「二十八宿」が描かれ、
地上から星を眺めた時に見える位置と
同じように配置されている上、
赤道や黄道を示す円も描かれていることから
本格的な中国式星図としては、
現存する世界最古の例と言えます。
壁画5面は、令和元(2019)年に、
国宝に指定されました。
 

「二十八宿」の吉凶

「二十八宿」の吉凶については、
暦によって違いが見られますが、
「鬼宿」(きしく)が最大吉運の日で、
「牛宿」(ぎゅうしゅく)がそれに次ぐ吉日
というところは、共通しています。
 
「房宿」(ぼうしゅく)、「壁宿」(へきしゅく)
「奎宿」(けいしゅく)、「婁宿」(ろうしゅく)
「張宿」(ちょうしゅく)は「大吉日」とされます。
 

東の青龍(せいりゅう)

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東方を守護する長い舌を出した竜神。
災いを振り払って守り、金運、富、成功を
呼び込むと信じられています。
東方七宿(角宿・亢宿・氐宿・房宿・心宿・尾宿・箕宿)を繋げて、
竜の姿に見立てたことに由来しています。
  • 象徴する色:『緑』
  • 季節   :『春』
  • 陰陽五行 :『木』
 
角宿
(かくしゅく)
【すぼし】
衣類裁断、着初め、棟上げ、建築、
普請造作、柱立て、井戸掘り、
酒造り、婚礼、開店、神仏祭祀、
新しい事を始めるなど
葬式、納骨
 
亢宿
(こうしゅく)
【あみぼし】
結納、婚礼、種まき、取り入れ、
衣類仕立て、習い事始め、贈り物、
友人に会う、物品購入など
普請、建築、造作、不動産売買、
移転、旅行
 
氐宿
(ていしゅく)
【ともぼし】
婚礼、見合い、農耕全般、新改築、
酒造り、移転、開店、
新しい事を始めるなど
衣類の着初め、大きな事、
水に近づくこと
 
房宿
(ぼうしゅく)
【そいぼし】
婚礼、神事など祝い事全般。
旅行、造作、棟上げ、柱立て、移転、
衣類裁断、新しい事を始めるなど
訴訟、不倫など、驕りや不遜は禁物の日
 
心宿
(しんしゅく)
【なかごぼし】
神事、仏事、移転、旅行、
衣類の着初めなど
婚礼、葬送、普請、造作、
投資や仕入れなど出費にまつわること
 
尾宿
(びしゅく)
【あしたれぼし】
婚礼、開店、移転、旅行、薬合わせ、
造作、建築、新しい事を始める、
修行・勉強始めなど
衣類裁断、衣類の着初め、葬送
 
箕宿
(きしゅく)
【みのぼし】
酒・醤油造り、商品の仕入れ、契約、
池や水路を構築、種まき、動土、集金
など
婚礼、葬式、納骨、驕りは禁物の日
 
 

南の朱雀(すざく)

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南方を守護する神獣とされます。
翼を広げた鳳凰様の鳥形で表されています。
幸福と家運繁栄をもたらす他、
再起や汚名返上、起死回生、信頼回復にも
力を発揮してくれます。
  • 象徴する色:『赤』
  • 季節   :『夏』
  • 陰陽五行 :『火』
 
斗宿
(としゅく)
【ひつきぼし】
婚礼、不動産売買、造作、動土、
井戸掘り、後まで残る物事、事業開拓、
倉庫の建築、造園、車両の新調、
新しい事を始めるなど
その他のこと
 
牛宿
(ぎゅうしゅく)
【いなみぼし】
 吉祥宿なので何事にも用いて吉。
 特に午の刻(11時から13時)が大吉祥。
 
女宿
(じょしゅく)
【うるきぼし】
公務・職務・芸能に関わること、
武器を造る、学芸の稽古始め、
美容・理容院に行く、神仏を拝むなど
訴訟、婚礼、葬式、争い事、
掛け合い事、衣類新調、着初め、
新築、造作、引っ越し、
新しい事・大きな事を始める
 
虚宿
(きょしゅく)
【とみてぼし】
 万事骨折り損の凶日。
 急ぎの事であっても慎重に。
入学、習い事始め、家族団欒、
衣類の着初めなど
建築、婚礼、縁談、祝い事、祭事、
葬式、納骨
大凶 相談事
 
危宿
(きしゅく)
【うみやめぼし】
 何事も慎重になるべき日
壁塗り、かまど造り、出張、
精神的鍛錬、レジャー、船の普請、
動土、酒造、公務など
婚礼、衣類裁断、
釘打ち、引っ越し、大きな事
大凶 高所での仕事、登山
 
室宿
(しつしゅく)
【はついぼし】
神仏祭祀、祝い事、祈願、婚礼、
船乗り、造作、戦、狩猟、柱立て、
井戸掘り、薬の飲み始め、理髪など
葬式、納骨、遠出
 
壁宿
(へきしゅく)
【なまめぼし】
新築改修、新事業造作、
婚礼、葬式、契約、
衣類の着初めなど、衣類裁断に
用いると子孫繁栄
南に進出、名付け
 
 

西の白虎(びゃっこ)

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西方を守護しています。
細長い体をした白い虎の形をしています。
四神の中では、最も高齢の存在であるとも
言われています。
宝と安産の神でもあり、子供や家族を守ってくれます。
  • 象徴する色:『白』
  • 季節   :『秋』
  • 陰陽五行 :『金』
 
奎宿
(けいしゅく)
【とかきぼし】
婚礼、棟上げ、柱立て、井戸掘り、
伐木、旅立ち、神仏祈願、祭事、
宮造り、会合、衣類裁断など
開店など新規の事、訴訟、交渉など
 
婁宿
(ろうしゅく・るしゅく)
【たたらぼし】
 急ぎの用事など諸事に用いて吉の日
大吉 衣類裁断は増益あり、
寿命が伸びる
婚礼の相談、婚礼、契約、取引始め、
旅行、美容、動土、建築、造作、
造園、衣類の着初め、休息に関する事
訴訟、判断すること、改革
 
胃宿
(いしゅく)
【えきえぼし・こきえぼし】
 一般にはあまり用いない日、
 王者が善を修するに良い日
公事に関する事、就職、婚礼
造作、衣類裁断、私事
大凶 葬儀
 
昴宿
(ぼうしゅく)
【すばる】
神仏祈願、手斧始め、祝い事、
新規開店、家畜購入など
衣類裁断、家の増改築、争い事
 
畢宿
(ひつしゅく)
【あめふりぼし・あけりぼし】
神事、婚礼、棟上げ、新築、増改築、
屋根葺き、造作、蔵造り、不動産取得、
農耕、契約事など
投資・仕入れ・返済など、
出費に関する事、口論
 
觜宿
(ししゅく)
【とろきぼし】
入学、稽古始め、神仏祭祀、
建築土木、山仕事始め、転居など
造作、投資、開店、事業の新規拡張、
投資などに用いると家財を失う。
婚礼に用いると金銀を散じ、
病に悩む悪日
 
参宿
(しんしゅく)
【からすきぼし】
物品の仕入れ、商品の買い付け、
倉庫納入、販売などの商取引、開業、
造作、建築全般、土木全般、
新規取引開始、婚礼、就職、旅立ち、
祝い事、養子縁組など
葬式、転居、賭け事
 
 

北の玄武(げんぶ)

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北方を守護する水神です。
脚の長い「亀」に「蛇」が巻き付いた形で
描かれることが多いです。
古代Chinaにおいて、
「亀」は「長寿と不死」の象徴、
「蛇」は「生殖と繁殖」の象徴で、
運気を切り開いて、
長寿や繁栄をもたらすとされています。
  • 象徴する色:『黒』
  • 季節   :『冬』
  • 陰陽五行 :『水』
 
井宿
(せいしゅく)
【ちちりぼし】

 人に施した福徳が自分に戻る働きを含む日
神事、種まき、婚礼、建築、動土、
普請造作、井戸掘り、落成式、商談、
不動産売買など
衣類裁断(衣類裁断すれば離婚する)、
葬式、治療始め、争い事
 
鬼宿
(きしゅく)
【たまおのぼし・たまほめぼし】

 大吉日。よろずよろし。
 「二十八宿」で最も格が高く、
 公の事、特に式典などに適する。
 一般の祝い事も全て吉。
婚礼                  
 
柳宿
(りゅうしゅく)
【ぬりこぼし】
 一般には用いない日
剛猛の事、物事を断わる
婚礼、新規事業、普請造作、衣類裁断
大凶 葬送(葬送すると不幸が重なる)
 
星宿
(せいしゅく)
【ほとおりぼし】
運転始め、療養始め、乗馬始め、
種まき、改築、祖先の祭祀など
婚礼、祝い事、葬式、納骨、不倫
 
張宿
(ちょうしゅく)
【ちりこぼし】

 大吉日。種まき、養蚕。
婚礼、見合い、祝宴、和合事、就職、
神仏祈願、新築、開業、事業の拡張
など
衣類裁断、樹木を切るなど
 
翼宿
(よくしゅく)
【たすきぼし】
 万事に用心が必要な日。
 公の行事、祝い事、祭り事には用いない。
 婚礼は離婚となる。
種まき、耕作始め、樹木の植え替え、
農耕全般、草刈り、建築、土木、出張、
旅行など
高所での仕事、入学試験、掛け合い事
 
軫宿
(しんしゅく)
【みつかけぼし・からすぼし・みつうけぼし】
婚礼、棟上げ、不動産売買、神仏祭祀、
地鎮祭、落成式、建築、祝い事、
万事新規の事
衣類裁断(衣類を裁断すると火難に遭う)、
衣類の着初め、旅行
 

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