うまずたゆまず

コツコツと

彼岸西風(ひがんにし)


「春の彼岸」の前後に吹く西風を
「彼岸西風」(ひがんにし)と言います。
 
柔らかな西風もありますが、
発達した低気圧が日本海を通過した後などに
気圧配置が一時冬型に戻ることから、
「寒の戻り」を感じさせる寒気を含んだ
西風もあります。
 
同じ頃に吹く西風に「涅槃西風」(ねはんにし)
というのもあります。
涅槃会(ねはんえ)とは、
お釈迦様の亡くなられた日
(陰暦2月15日(令和6年3月24日))に
行われる法要のことです。
この「涅槃」という言葉が、
西方浄土を連想させ、
その浄土から此岸(しがん)に吹いて来る
風であるとの連想もあるのでしょう。
 

 
「春風」(はるかぜ)と言えば、
草花やこの芽を育み、鳥のさえずるを誘う、
暖かくて穏やかな風をイメージしますが、
実際は、大陸から移動性高気圧と温帯低気圧が
交互に進んで来て、気圧配置が一定しないので、
吹く風も方位も、強弱、寒暖も様々です。
 
 
日本列島が高気圧に覆われた時は
穏やかに晴れて暖かな
そよそよとした微風が吹きます。
春風が長閑に吹く様を
「春風駘蕩」(しゅんぷうたいとう)
言います。
 
「春風駘蕩」(しゅんぷうたいとう)という言葉は、
人の動作がゆっくりと温和な様、
物事に動じない余裕のある様の例えにも
用いられています。
 
 
春の風は、実際は、
穏やかなものばかりとは限らず、
春一番など突風や台風並みの暴風や猛吹雪、
海岸では高波となることもあります。
1日中南風が吹き、気温も上昇しての雪崩やフェーン現象なども起こします。
 
 
このような春に吹く強い風を
「春疾風」(はるはやて)と言います。
他にも、「春荒」(しゆんこう、はるあれ)
「春嵐」(はるあらし)、「春烈風」(はるとつぷう)
「春はやち」などといった言葉もあります。
 
このような激しい現象の発生要因は、
日本付近に北から入り込んでくる冷たい空気と
南から流れ込む暖かい空気がぶつかり合って
上昇気流が生まれることで、
温帯低気圧が急速に発達するためです。
 
 
台風の場合は、台風の中心が近づくと
急激に風が強まりますが、
「春の嵐」をもたらす発達した温帯低気圧は
低気圧の中心から離れたところでも
風が強く吹くため、被害の範囲が広がりやすい
という特徴があります。
 
このように台風並みの猛威を振るう春の嵐は、台風と同様、事前に気象情報に注意して、
必要な対策を取ることが重要です。