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春一番(はるいちばん)

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春一番

「春一番」(はるいちばん)は、
立春」を過ぎて最初に吹き荒れる
温かく強い南風のことを言います。
春の訪れるを告げてくれる風物詩です。
 
近年、関東地方では
令和3(2021)年は「2月4日(木)」、
令和4(2022)年は「3月5日(土)」、
令和5(2023)年は「3月1日(水)」に
「春一番」が吹いたと
気象庁により発表されました。
 
そして令和6(2024)年ですが、
気象庁は「きょう15日、関東地方で春一番が
吹きました。」と発表しました。
昨年より、14日早い発表となりました。

news.yahoo.co.jp

 

「春一番」の影響

「春一番」は、文字通り春の到来を告げる
優しい風のように感じますが、
実際は災害を伴うことが多い強い南風です。
 
日本海で急速に発達する低気圧の影響から、
竜巻など突風を伴った強い雷雨となったり、
海上は大シケで海難事故が発生し、
空のダイヤも乱れ警戒を要する風でもあります。また乾燥した暖かく強い南風は、
大火事や雪どけ洪水、雪崩を引き起こしたり
もします。
 
更に「春一番」が吹いた時は
季節外れの暖かさとなりますが、
低気圧の通過後は冬型の気圧配置となり、
日本海側では雪や雨、
各地の気温もその時期らしい寒さに戻り、
日ごとの気温差が大きくなります。
 

「春一番」の由来

ところで今やすっかり定着した
「春一番」という言葉ですが、
そのルーツは壱岐で起こった悲しい事故と
されています。
 
そもそも嵐の呼び名には、漁師や農民が
言い習わしたものが多いのですが、
「春一番」とか「春一」という言葉も
壱岐や能登・志摩以西の漁師達は
早春に吹く南の暴風を知らせる、防災上、
非常に重要な表現として使っていました。
 
江戸後期の安政6(1859)年2月13日
(新暦では3月17日)、
長崎県壱岐郡郷ノ浦町の漁師達が出漁中、
強風によって転覆し、53人の死者を出しました。
 
地元の漁師達は「春一番」「春一」と呼ばれる
南の暴風を恐れてはいたのですが、
その日は快晴であったため出漁しました。
ところが、南の水平線に黒雲が湧き上がり、
漁船群は壱岐に戻ろうとしたのですが、
強烈な南風は海上を吹き荒れ、
漁師達は船もろとも海中に消え去りました。
当地では今日でも2月13日は出漁を見合わせ、
「春一番供養」を行っています。
 

「春一番」という言葉が
定着する過程

このように、壱岐がルーツとされる
「春一番」という言葉ですが、
どのように定着していったのでしょうか。
 
気象研究家の根本順吉によると、
昭和11(1936)年、民俗学者の宮本常一の処女作
『周防大島を中心としたる海の生活誌』の中に、
文献に初めて「春一番」が登場したそうです。
 
その後、宮本常一は自ら全国を隈なく歩き、
「春一番」という言葉が、
能登、志摩以西の漁師らが肌で感じ取って、
一様に言い始めた言葉であったことを確かめ、
昭和34(1959)年出版の『俳句歳時記(春の部)』に
「春一番」という語句を掲載しました。
春一番(仲春)
【解説】壱岐で春に入り最初に吹く南風をいう。
    この風の吹き通らぬ間は、漁夫たちは
    海上を恐れる。(宮本常一)
 
昭和37(1962)年2月、
朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の記者らが
新聞紙面の天気解説でこの言葉を使い始めると、
これを契機に、その後「春一番」という言葉が
広く一般に普及し始めました。
 
更に昭和51(1976)年、キャンディーズの
『春一番』という歌謡曲の大ヒットにより、
「春一番」は知らない人はいないほど
有名なフレーズとして定着しました。
 
こうした過程を経て、
気象庁でも用語として正式に採用されることに
なりました。
 

2/15「春一番名付けの日」

2月15日は「春一番名付けの日」です。
 
昭和38(1963)年2月15日の朝日新聞朝刊に
「春の突風」という記事があり、
これが「春一番」という語の新聞初出とされ、
これに由来して2月15日が
「春一番名付けの日」とされています。
 

気象庁による「春一番」の定義

ところで気象庁では「春一番」の到来を
毎年発表しています。
ただ「春一番」は毎年発生する訳ではないので、
認定基準に当てはまらなければ、
「春一番の観測なし」とされる年もあります。
 
気象庁では、「春一番」の定義を、
「春一番」が吹かない北日本と甲信地方、
沖縄県を除く全国で次のようにしています。
 
地方 定義
関東地方 立春から春分。
日本海に低気圧(理想的には発達)。
東京で東南東から西南西の風で
8.0m/s以上。
前日より気温が高い。
九州地方北部
(含山口県)
立春から春分。日本海に低気圧。
南よりの風、最大風速7m/s以上で、
最高気温が前日より高くなる。
九州地方南部 立春から春分。
南よりの風(東南東から西南西)で
最大風速8.0m/s以上。
九州南部が低気圧の暖域に入る。
近畿地方 立春から春分。南よりの風で
最大風速が8.0m/s以上となり、
最高気温が平年(または前日)より
高くなる。
四国地方 立春から春分。
低気圧が日本海付近にあって
発達し、南よりのやや強い風
(概ね10m/s以上の風)が吹き、
最高気温が前日より昇温する。
中国地方
(除山口県)
立春から春分。
複数の気象官署等で
南よりの風が最大風速10m/s以上、
最高気温が前日より3℃以上高くなり
10℃以上になることが目安。
東海地方 立春から春分。
日本海に発達した低気圧。
東海地方の地方気象台の1ケ所以上で
日最高気温が平年値を上回り、
最大風速8m/s以上(津は10m/s以上)
の南よりの風。
北陸地方 立春から春分。
日本海に低気圧。
金沢・富山・福井のいずれかの
気象台で最大風速10m/s以上、
そのほかの気象台で最大風速6m/s
以上の南よりの風が吹き、最高気温が前日より高いかほぼ同じになる。