うまずたゆまず

コツコツと

颪(おろし)・空っ風

颪(おろし)

f:id:linderabella:20201127063626j:plain

 
「木枯らし」が平野で吹きすさぶ一方、
各地の名峰からは
「颪」(おろし)とか「空っ風」(からっかぜ)呼ばれる
山や丘から(主に太平洋側の)平地に
強い風が吹き降りてきます。
 
シベリアから日本海を渡ってきた冷たい北風は、
まず日本海側の地方に空気中の水蒸気を
雨や雪として降らせた後、山を越えて来るため、
冷たく乾燥しています。
 
群馬県の赤城山の「赤城颪」(あかぎおろし)
浅間山からの「浅間颪」(あかぎおろし)
栃木県那須野原では「那須颪」(なすおろし)
「伊香保風」とも呼ばれる「榛名颪」(はるなおろし)
日光の男体山からの「男体颪」(なんたいおろし)
関東平野中央部の
利根川沿いの「筑波颪」(つくばおろし)
静岡県西部では「遠州のからっ風」、
滋賀県の比叡山の「比叡颪」(ひえいおろし)
京都市上嵯峨北部にある
愛宕山からの「愛宕おろし」(あたごおろし)
兵庫県の六甲山の「六甲颪」(ろっこうおろし)
などが有名です。
 
「赤城颪」(あかぎおろし)
 
特に群馬県で冬に見られる乾燥した北西風は
群馬全域では「上州のからっ風」と呼ばれ、
赤城山から吹き下ろしてくる
「赤城颪」(あかぎおろし)はその代表です。
「かかあ天下とからっ風」という言葉が
有名ですね。
 
 
「かかあ天下」は、
一般に男性が奥さんの尻に敷かれるという
意味で使われることが多いですが、
明治時代に群馬県で栄えた絹産業が
女性に依存する部分が多かったことから、
上州の男が絹産業を支える自分の妻に感謝し、「ウチの妻は天下一」と自慢することから
生まれた言葉と言われています。
 
 
なお群馬県では、乾燥した強風の
「上州のからっ風」を利用して
農作物や魚などを「天日干し」により
干物に加工した食品工業が発達しています。
 
 
遠州のからっ風
 
日本海側に大雪を降らせ
水分を使い切った乾いた風が、
3000m級の高い山地が連なる南アルプスを
乗り越えて太平洋側にやってきます。
 
 
この北西の季節風を「遠州のからっ風」と呼び、
御前崎付近では10m/s以上の強風が吹くことも
あるそうです。
 
 
そんな風の強いこの地方では、
「ホソバ囲い」と呼ばれる独特の生け垣で
住宅を守っています。
 
六甲おろし
阪神タイガースの球団歌としても有名な
「六甲おろし」は
寒い冬に神戸市の六甲山地から吹き降りる
冷たい北風のことです。
 
 
西高東低の冬型の気圧配置になると、
神戸の西に位置する明石からの季節風が
六甲山頂にぶつかって一気に吹き降ります。
 
 
神戸市街を見下ろすように
東西にそびえ立つ六甲山地は
最高峰で931mとさほど高い山ではありませんが
山と海の距離が短い、急勾配である地形が
その速度を強めています。
日本一の酒どころとして有名な
神戸市の「灘五郷」(なだごろう)は、
神戸市東部から西宮市今津に至る
大阪湾に面した沿岸地帯です。
ここで造られた日本一の
日本酒の味と品質の高さの秘密は、
冬の厳しい「六甲おろし」も大きく影響して
います。
灘は昔から寒造りが主体で、年間を通して
最も寒い季節に酒の仕込みが行われています。
敢えて低温下で醸造することで、
雑菌の繁殖を抑えて
酒質をより一層高めることが、
その名を一躍全国に広めることとなりました。