元日、または正月三が日の間に降る
雨や雪のことを「御降り」(おさがり)とか
「富正月」(とみしょうがつ)と言います。
「御降り」を「おさがり」と読むのは、
「降る」(ふる)という語が「古」(ふる)に繋がる他、
「雨」が涙や泣くことを連想させるため、
正月の忌み言葉となるためです。
俳諧などでは、正月三が日の間に、
物の名を忌み、呼びかえて使う言葉を
「翳し詞」(かざしことば)と言います。
この「御降り」(おさがり)は、
「翳し詞」の代表的な言葉の一つです。
「おさがり」と呼び替えると、
天から離れて下がってきたものという
意味になります。
「翳し詞」には他に、
「寝る」 を「いねつむ(稲積む)」、
「起きる」を「いねあぐ(稲挙ぐ)」が
あります。
また「富正月」(とみしょうがつ)は
「御降り」の異名で、
正月三が日に降る雨や雪は、
その年に豊穣をもたらすとの考えからきた
呼び名です。
正月に限らず、雪の多い年は豊作の前兆とも、
また五穀(米・麦・粟・豆・黍)を
雪汁(雪どけの水)に浸せば
虫が食わないとされ、
「雪は五穀の精」(ゆきはごこくのせい)と
「雪は豊年の瑞」(ゆきはほうねんのしるし)という
ことわざもあります。