うまずたゆまず

コツコツと

「懐炉」(かいろ)

袋から取り出すと
ポカポカと温かく熱を発散し、
暮らしの必需品にもなっている
「使い捨てカイロ」は、
日本のメーカーが40年以上前に開発をした、
20世紀の大発明品です。
 
 

懐炉(かいろ)

昔は、「温石」(おんじゃく)といって、
手頃な石を火で温め、
布に包んで懐などに入れて使いました。
 
 
元禄時代(17世紀末)に発明された
保温性の強い灰「懐炉灰」(かいろばい)
金属製容器に入れて点火する
「箱型懐炉」が登場しました。
 
大正12年(1923)には、
発売されました。
現在も利用され、今年で100年になる
ロングセラーアイテムです。
「ベンジン」という燃料を使いますが、
直接ベンジンに火をつけている訳でも、
火を燃やし続けている訳でもありません。
燃料であるベンジンの気化ガスが
プラチナ(白金)触媒と接触して起こる
発熱学原理を利用したものです。
 
気化したベンジンはプラチナの接触作用により
「炭酸ガス」と「水」に分解されるので、
環境にとても優しい、
安全でクリーンなカイロと言われています。
反応開始後の立ち上がりが速く、
熱量(カロリー)は「使い捨てカイロ」の約13倍。
氷点下40度でも利用出来るので、
寒冷地や冬の野外のレジャー時にも
非常に威力を発揮します。
たった25ccのべンジンで、
最大約24時間保温出来るので低燃費です。
必要な量の燃料で、
持続時間を自分で調整することも出来ます。
繰り返し使用出来て、余計なゴミは出ません。
 
 
<ハクキンカイロのデメリット>
・反応が始まると燃料が切れるまで
 ノンストップ。
・人によってはベンジンのニオイが気になる。
・消耗品に注意(火口は800円程度)。
・(慣れれば簡単なのですが)
 準備に多少手間が掛かる。
 
そして今では、鉄粉や活性炭が入った
「使い捨てカイロ」が主流になっています。
 

「使い捨てカイロ」誕生

 
昭和50(1975)年、米陸軍が使用していた
「フットウォーマー」を参考に、
旭化成工業(現:旭化成)が開発し、
「アッタカサン」という名前で
主に鍼灸治療院向けなどに発売しました。
火を使わないため、誰でも安心して使え、
軽くて持ち運びが便利で、
ベンジンカイロのようなニオイもない、
画期的な発明品でした。
 
米軍では寒い戦場に赴く時に、
水筒の中に鉄の粉と食塩を入れて
熱を発散させて「フットウオーマー」として
使っていました。
「鉄の粉は錆びる時に酸化熱を出す」という
化学原理を利用したものでした。
 
それを昭和53(1978)年、
ロッテ電子工業(現:ロッテ健康産業)が
日本純粋素(現:パイオニクス)と共同開発し、
「ホカロン」の商品名で全国販売がスタート。
1個100円と値段も手頃であったため、
「ホカロン」は一気に普及し、今や海外でも
人気ロングセラー商品になっていきました。
 
 
今では、貼るタイプの他、くつ下用、足首用、
指先用、手首に巻くタイプなど様々なタイプも
出来て、懐に限らず、どこでも温めてくれます。

「使い捨てカイロ」が発熱する仕組み

 
鉄を濡れたまま放置すると錆(さび)が出ます。
これは鉄が空気中の酸素と反応して
酸化鉄になる化学反応で、
この化学反応が起こる時出る熱を
有効利用したものが「使い捨てカイロ」です。
 
カイロの中身
・鉄粉
 原料の半分以上は、酸化反応に
 なくてはならないこの「鉄粉」です。
 
・水
 鉄粉が錆びる速度を速めてくれます。
 
・バーミキュライト
 
 日本名「ヒル石」といい、
 雲母系の原鉱石から作られる人工用土です。
 観葉植物の保水土としても知られています。
 保水剤の役目をしています。
 
・活性炭
 
 表面の微孔に空気を取り込み
 酸素の供給を促します。
 
なお水や塩は酸化のスピードを速め、
活性炭は空気を多く取り込む事によって、
反応を持続させる役目を果たしています。
その為、使い捨てカイロは袋の中で、
一気に酸化させる為、温かいと感じることが
出来ます。

「使い捨てカイロ」の正しい使い方

カイロは揉んだ方がよく発熱する?
振ったり揉んだからといって
早く温まることはありません。
 
カイロ本体は、
空気を入れる微孔を開けた
不織布です。
中でも貼るタイプのものは
空気の透過量をコントロールする
特殊な不織布で出来ています。
 
 
振ったり揉むと、却って
空気を取り入れる孔が目詰まりを起こし
発熱しなくなってしまうこともあるので、
やり過ぎには注意です。
 
特に「貼るカイロ」は不織布全体から
酸素を取り込む素材を使っているので
振る揉むはしてはいけません。
粉が偏ってしまいます。
 
低温やけどを防ぐために
 
体温より高い温度のものが
長時間触れていた場合、紅斑や水疱などの
症状を起こしてしまうのが
「低温やけど」です。
皮膚表面は大したことがなくても
皮膚の深部にまで損傷が及ぶこともあります。
 
皮膚に加わった熱は
血流によって運ばれるため、
カイロを当てている所が圧迫されると
血流が抑えられて、
流れて行かない熱によって
その一部分だけ温度が上がり、
火傷をしやすくなります。
 
カイロを使用している時は、
時々、肌の状態を確認したり、
熱いと感じたらすぐ剝したり、
気づきにくい就寝時には使わないことなどの
注意が必要です。
 
氷点下では発熱しない
原料に「水」が使われているため、
酸化の化学反応に必要な
その「水」が凍ってしまうと
発熱しなくなってしまう場合があります。
温まった状態で
氷点下で使うことは可能ですが、
開ける前の保管は
氷点下にならない場所でしたほうが
良さそうです。
 
使い終わった後の処分方法
 
ゴミの処理の区分は
住んでいる地域によって違います。
カイロには「燃えないゴミ」と
表示されていますが、
厳密に言うと、パック袋・外装・本袋は
プラスチックフィルムなので
食品トレーやラップ類と同じ区分で、
中身は鉄とバーミキュライトと炭なので
鉄のフライパンや針金のハンガーなどと同じ
区分で処理して下さい。
 

12月1日は『カイロの日』

「使い捨てカイロ」の需要がピークを迎える
12月の最初の日の12月1日は
「カイロの日」です。
 
 
昭和56(1981)年、カイロのメーカー
46社が集まって設立された
「日本使いすてカイロ同業会」
(現「日本カイロ工業会」)は、
平成3(1991)年には、
設立10周年を記念して制定しました。
毎年、使いすてカイロについての
正しい知識の普及と需要促進を目的とした
啓蒙活動を実施しています。

www.kairo.jp

 

手作りカイロ

冬のあったかアイテム「カイロ」を
自分でも作ってみませんか?
 
米ぬかカイロ
 
お米を精米する際に必ず出てくる
米ぬかには実に多くの効能があり、
昔から生活の色々な場面で
活用されてきました。
 
 
「米ぬかカイロ」は、
優しい暖かさで癒してくれる上に、
繰り返し使うことも出来ます。
 
米ぬかには空気中の湿気を吸って、
加熱されると熱と一緒に
放湿するという働きがあります。
しっとりとした温かさは、
より体の奥まで届くと言われています。
 
 
<材料>(ぬか・米・塩=2:2:1)
 ・米ぬか:200g
 ・米  :200g
 ・塩  :100g
 ・手ぬぐいやさらしのような木綿の布袋
 
◎ぬかはスーパーなどに売っている、
 ぬか漬け用のぬかでOKです。
◎米はもったいなければ古い米で大丈夫です。
◎あれば、ローリエか唐辛子を一つ入れます。
 (無くても大丈夫です。)
◎中袋は、電子レンジで温めて使うので
 天然繊維100%の生地を使いましょう。
 ナイロンなどの化学繊維は加熱すると
 溶けることがありますので注意を。
 
<作り方>
1.ぬか:米:塩を、2:2:1の割合で
  混ぜてフライパンで炒ります。
2.焦げないようにそーっと炒って、
  全体に香ばしい香りが立ったら
  火を止めます。
3.炒ったぬかなどを内袋に全て入れて、
  ぬかが出ないように気をつけながら
  ミシンで縫ってしまいます。
 
<使い方>
・焦げに注意しながら電子レンジで
 1~2分加熱します。
・一度のレンジで温かさが持続するのは
 30分程度ですが、カバーをかけたり
 布団の中で使う場合は、ぬくぬくとした
 温かさが1時間ほど感じられます。
 
 
小豆カイロの作り方
 
布袋に小豆を入れ、袋の口を縫い閉じます。
これを電子レンジで30秒から1分温めると、
ホカホカのカイロに。
ほんのり小豆の香りがしますが、
乾いた状態で温めるので
茹ることはなく、繰り返し使えます。
夏場は冷蔵庫で冷やせば、
アイピローなどにすることも出来ます。
 
香りのよいハーブのカイロ
<材料>
 ・麦    :約200g
 ・ラベンダー:少々
 
◎カイロに使用するハーブは、
 香りのよい「ローズゼラニウム」や
 安眠効果がある「ホップ」なども
 オススメです。
 
<使い方>
1.使用する時は中袋を取り出し、
  電子レンジで1分程度加熱します。
2.温かさが足りなければ様子を見ながら
  加熱して、外袋に入れて使用します。
  15分程暖かい状態が持続します。
 
◎手作りカイロは、繰り返し使えますが、
 麦や小豆などに含まれる水分が減ってくると
 蒸気が出にくくなります。
 1年を目安に新しいものにしましょう。
◎暑い時期は、冷やしたカイロを目に当てて
 使うのもスッキリしておすすめです。
 冷蔵庫に保管して下さい。