うまずたゆまず

コツコツと

放生会(ほうじょうえ)

 

放生会(ほうじょうえ)とは

仏教の「生き物を殺してはならない」という
戒めに基づく行事です。
生きている鳥や魚、虫などを
山野や池に放つことで、
日頃私達が生きるために
命をいただいている生き物を供養し、
感謝を捧げる神事です。
 
その起源は古く、インドにおいては、
釈迦在世の時代から行われていたと伝えられ、
我が国においては、『日本書紀』にも登場し、
養老4(720)年に「宇佐八幡宮」で行われた
「放生会」が日本最初と言われています。
やがて全国の八幡宮を中心に広まりました。
かつては旧暦8月15日に催していましたが、
今は9月15日近辺に行うところが多いようです。
 

放生池(ほうしょうち)

寺社仏閣には、「放生会」で、
捕らえられた亀や魚を逃がすために、
「放生池」(ほうしょうち)
設けられているところが多いです。
 
仏教儀式としての「放生会」は、
6世紀、中国天台宗の開祖・智顗(ちぎ)が、
漁民が雑魚を捨てている様子を見て憐れみ、
自身の持ち物を売っては魚を買い取って、
国清寺の近くに池(放生池)を作って放ったことに始まるとされます。
 

全国で行われている「宝生会」

現在、「放生会」(ほうじょうえ)は、
収穫祭・感謝祭の意味も含め、春または秋に、
全国の寺院や、大分県宇佐市にある宇佐神宮を初めとする全国の八幡宮(八幡神社)で
催されています。
 
特に、「石清水八幡宮」や「筥崎宮」で
行われている「放生会」は、
それぞれ「三勅祭」、「博多三大祭」の一つに数えられ、多くの観光客を集める祭儀としても
知られています。
 
「筥崎宮放生会」(ほうじょうや)
「博多どんたく」「博多祇園山笠」と並んで
「博多三大祭り」のひとつと言われています。なお地元では、訛って「ほうじょうや」と
呼んでいます。
 
「筥崎宮放生会」(はこざきぐうほうじょうや)は、
「万物の生命をいつくしみ、殺生を戒め、
 秋の実りに感謝する」秋祭りです。
千年以上の歴史を持つ最も重要な神事で、
毎年9月12日から18日までの七日七夜に渡り
様々な神事や神賑わいの行事が行われます。
 
期間中は、参道一帯に約500軒の露店が
立ち並びます。
「放生会に行けば、梨も柿も(秋の物なら)
 何でもかんでも揃う」ことから、
昔から「梨も柿も放生会」と言われ、
露店では、梨や柿、栗などの果物を始め、
季節の物が豊富に売り出されています。
また「葉つきの新ショウガ」を売っている
お店も目立ちます。
 
筥崎宮の名物菓子「社日餅」(やきもち)
素朴な味わいで人気のお餅です。
白いプレーンタイプのお餅と緑のよもぎ餅の
二種類があり、中には粒あんが入っています。
 
かつては「放生会着物」と言って、
女達はこの日のために
晴れ着を新調する習慣がありました。
そして、「人を見るなら宰府の祭り、
衣装見るなら放生会」と言われたそうです。
 
宇佐神宮
現在、全国の神社仏閣で斎行される
「放生会」の起源となる祭典が、
宇佐神宮で行われる
「仲秋祭」(ちゅうしゅうさい)です。
「放生会」とは神仏習合時代の法会の名称で、
明治以降に「仲秋祭」と改められました。
 
720年、大和朝廷に乱逆した
大隅・日向の隼人の鎮圧に、
豊国神軍の守護として宇佐八幡大神が
神輿に乗って南九州へ出御しました。
乱の平定後、宇佐に還御した八幡大神は、
失われた隼人の御霊を鎮めるために
「年毎に放生会を修すべし」と
託宣を下されたことから、
毎年、宇佐神宮では「仲秋祭」が行われています。
 
「仲秋祭」は、「宇佐神宮放生会」として
大分県選択無形民俗文化財に指定されています。
 
「仲秋祭」の内容はいくつかの点で独特です。
「放生会」は、正式には陰暦8月15日ですが、
「仲秋祭」は10月の「スポーツの日」を含む
土曜・日曜・月曜の3日間に催されます。
「仲秋祭」で放されるのは、「蜷(巻貝)」です。
 
石清水八幡宮
石清水八幡宮の「放生会」は、
例年9月15日に行われる勅祭「石清水祭」の中の
儀式として執り行われています。
「石清水祭」は、「葵祭」や「春日祭」と共に
「日本三勅祭」の一つに数えられています。
 
「石清水放生会」は、
宇佐八幡宮の放生会に倣って、
清和天皇の貞観5(863)年旧暦の8月15日に
放生川に生ける魚鳥を放ち、
「生きとし生けるもの」の平安と幸福を願う
祭儀として始められました。
天暦2(948)年からは「勅祭」(ちょくさい)として
斎行されるようになりました。
「勅祭」とは、天皇陛下のお使いである勅使が直々に天皇陛下からのお供え物(幣帛)を供えに参向される祭典のことで、全国8万社ある神社の中でもこの「勅祭」が斎行される神社は16社しかありません。
 
鶴岡八幡宮
9月14~9月16日の3日間執り行われる
「例大祭」の神事の一つ「鈴虫放生祭」では、
境内の林に鈴虫を放ちます。
『吾妻鏡』に文治3(1187)年8月15日に
「放生会」と「流鏑馬」が行なわれた記録が
あります。
 
興福寺
天平21(749)年に放生池として造られた
人工池「猿沢池」(さるさわいけ)に、
例年4月17日、桶に入った鯉や金魚などを
池に放ちます。
 
放生寺
毎年「スポーツの日」に、日々食事で魚介、鳥、動物などの命をいただくことに感謝をする「放生供養法要」を厳修し、
境内の放生池に金魚が放流されます。