うまずたゆまず

コツコツと

時雨(しぐれ)

 
晩秋から冬にかけて降る、
急にパラパラと降ってしばらくすると止む、
一時的に降ったり止んだする雨のことを
「時雨」(しぐれ)と言います。
 
 

時雨(しぐれ)

晩秋から冬にかけて降る、
降ったり止んだりのあまり強くない雨のことを
「時雨」(しぐれ)と言います。
俳句では「冬の季語」になります。
 

時雨(しぐれ)の別名

時知る雨(ときしるあめ)
「秋が終わり、冬の訪れを待つ雨」
「冬の訪れを知らせてくれる雨」の意味です。
「時の雨」「時の間の雨」とも言います。
時節をわきまえて降る雨には、
どこか律義な「季節の使者」の風情があります。
 
運び雨(はこびあめ)
通り過ぎるような降り方を、
「運ぶ」に例えた言葉です。
 
入液(にゅうえき)
「時雨」の季節に入ることを言います。
二十四節気「立冬」から10日目を「入液」とし、
「出液」は「小雪」とされています。
そして「入液」と「出液」の間に降る雨を
「液雨」と呼びます。
 
液雨(えきう)
旧暦10月は「小春」の異称もあるほど
穏やかな日が続くことがありますが、
虫達はこの暖かな雨を飲んで冬を越すため
「薬雨」「薬水」とも言われます。
 

「時雨」がついた雨

晴れていた空が急に暗くなり、
ハラハラと軽く降る通り雨の「時雨」には
様々な呼び方があります。
 
冬時雨(ふゆしぐれ)
「時雨」は「冬」のものですが、
「晩秋」に降るものとはっきり区別するため
「冬時雨」と呼びます。
 
片時雨(かたしぐれ)
空の一方で、時雨が降っているが、もう一方では晴れていることを言う。ある場所では雨が降ったり止んだりしていて、別の場所では晴れていること。
 
村時雨(むらしぐれ)
時雨の中でも特にひとしきり強く降って通り過ぎていく雨のこと。「群時雨」「叢時雨」とも書く。激しく降って、さっと通り過ぎてしまう。
 
横時雨(よこしぐれ)
晩秋から初冬にかけて、横殴りに降り、
降ったかと思うと、直ぐに青空が戻るような時雨のこと。
 
ほろ時雨
晩秋から初冬にかけて、パラパラと、僅かな時間降る時雨。
 
十月時雨(かんなづきしぐれ)
陰暦十月に降る時雨のこと。十月の異称は「神無月」と書き、この月は、全国の神々が出雲神社に集まって会議をするのだという。
 
朝時雨(あさしぐれ)
朝方に降ったり止んだりする「時雨」こと。
「時雨」は一般的に朝方に降るのは少ないです。
 
夕時雨(ゆうしぐれ)
夕方に降ったり止んだりする「時雨」こと。
「時雨」は一般的に夕方に降るのは少ないです。
 
小夜時雨(さよしぐれ)
夜に降る時雨で、「夜の時雨」とも言います。
小夜の「サ」は接頭語で、語調を整えています。
 
月時雨(つきしぐれ)
月が出ている夜、
月明りの中を通り過ぎていく「時雨」のことで、
月明かりの中の「時雨」のことを言います。
物語や絵画の中のような風流な「時雨」です。
 
めぐる時雨(めぐるしぐれ)
山廻りをするように降る「時雨」のこと。
山向こうに「時雨」を降らせた雲が、
山越えして「時雨」を降らせることで、
盆地に多く、京都のような地形に
しばしば見られます。
 
北山時雨(きたやましぐれ)
京都独特の気象現象で、
京都の北山の方から降ってくる
「時雨」のことを言います。
京都の北山の風物詩です。
 
北時雨(きたしぐれ)
北風とともにやってくる、
晩秋から初冬の頃の
北の山の方から降って来る風を伴う
冷たいにわか雨のこと。
 
山茶花時雨(さざんかしぐれ)
山茶花の紅い花が咲く頃に降る
「時雨」のことです。
花が少ない真冬に紅い花を咲かせる山茶花は、
美しいだけでなく、強さも感じさせる花です。
 
なお、12月上旬の山茶花が咲く時期は、
移動性高気圧が北へ偏ることから、
前線が本州の南の海上に停滞してきます。
この時降る、まるで梅雨のような雨を
「山茶花梅雨」と言います。
この「山茶花梅雨」を経て、
秋から冬へと本格的に季節が変わります。
この時期は寒暖差が大きく、
「体調を崩しやすい季節」とも言われています。
 

偽物の時雨(にせもののしぐれ)

「時雨」はその風情や音は大変好まれ、
様々なものに例えられました。
「落ち葉時雨」「木の実時雨」
「虫時雨」「蝉時雨」「青葉時雨」
「川音の時雨」「松風の時雨」など、
どちらかと言うと音の風景が多いようです。
「空の時雨」「袖の時雨」などは、
涙を例えた粋な言葉です。
 
木の葉時雨(このはしぐれ)
「木の葉が盛んに散る音」を
雨の音に見立てた言葉です。
「木の葉の雨」とも言います。
 
「木の葉時雨」の中を歩くと、自然と、
落葉が衣服に降り掛かってきます。
この落ち葉が降り掛かった衣服のことを
「木の葉衣」(このはごろも)とか
「落葉衣」 (おちばごろも)と言います。
木の間から漏れる月光が
着衣の上に葉影を落として、
落ち葉を散らしたように見える衣のことや、
仙人などが着る木の葉を綴って作ったという
想像上の衣のことも言います。
 
木の実時雨(このみしぐれ)
木の実が落ちる音を時雨に見立てた言葉です。
木の実とは、櫟・楢・橡・椎・樫・無患子など
木になる実の総称ですが、果樹は含みません。
自然と寄り添って生きてきた日本人にとって、
古くから身近な食べ物であり、
子供にとっては親しみ深い遊び道具でした。
 

食べ物

和菓子の時雨
は、もち粉もしくは米粉とこし餡を混ぜ、そぼろにして蒸した棹菓子の関西での呼称。なかでも大阪府泉州地域の銘菓とされ、村雨とも呼ばれる。鹿児島県関東で高麗と呼ばれる和菓子に似ている。
なお「時雨」は、大阪府岸和田市の和菓子店「竹利商店」の登録商標(登録番号第77725号)であるため、他店は「◯◯しぐれ」といった商品名になっています。
 
時雨煮
生姜を加えた佃煮の一種で
略して「時雨」(しぐれ)と呼び、
「志ぐれ煮」と表記されることもあります。
貝のむき身などの魚介類や牛肉などが
材料として使われています。
元来は三重県桑名市の名産である蛤を用いた
佃煮の「時雨蛤」を指しましたが、
今日では生姜入りの佃煮全般を指します。
なお「時雨蛤」は江戸時代中期の俳人、
各務支考(かがみしこう)が名付けたとされます。
 
「時雨煮」の語源には、
色々な風味が口の中を通り過ぎることから、
一時的に降る時雨に例えて
「時雨煮(時雨蛤)」と名付けられたいう説や、
時雨の降る時期は蛤が最も美味しくなる
季節だからといった説、
「時雨煮」の短時間で仕上げることが
出来る調理法が、降ってすぐに止む「時雨」に
似ていることからとする説があります。