うまずたゆまず

コツコツと

京都の師走の風物詩「大根焚き」

12月に入ると、京都の様々な寺院では、
甘みがグッと増した冬場の大根を炊いて、
参詣者に振舞われる「大根炊き」が
行われています。
なお「だいこんたき」ではなく
「だいこだき」と言います。
 
 

大根焚き

 
体が冷える12月から翌年の2月にかけて
京都のお寺で行われている、
伝統行事の「大根焚き」は、
京都の師走の風物詩として知られています。
 
 
古くは『古事記』にも登場する大根は、
昔から大根を煮た物を頂くと、
心身の解毒作用や諸病を封じ、
中風(脳卒中)を退ける
御利益があると言われており、
参拝者は無病息災を願いながら
アツアツの大根をいただきます 。
 

「大根焚き」の由来

12月8日は釈迦が悟りを開いたとされる日で、
各宗の寺院では「成道会」(じょうどうえ)という
法要が営まれています。
このお釈迦様が悟りを開いたこの日に、
鎌倉時代になると、
炊いた大根を仏前に供えた後、
参拝者に振る舞う行事が
行われるようになったようです。
 
鳴滝の大根焚
「鳴滝の大根焚」(なるたきのだいこたき) とは、
毎年12月9日、10日の両日、
京都市右京区鳴滝の了徳寺で行われている
伝統行事です(令和6(2024)年は中止)。

www.ryoutokuji.or.jp

 
鎌倉時代中期の建長4(1252)年11月、
関東から帰京した親鸞聖人が、
愛宕山山中の月輪寺にあった
法然上人の旧跡を訪れた帰りに、
鳴滝の里に立ち寄り、村人を集めて
念仏を唱えました。
 
 
親鸞聖人の説法を聞いた村人達は
その教えに感銘し、感謝のしるしとして
村の里で豊富に採れる大根を鍋にかけ、
塩炊きの大根を煮て輪切りにして
聖人にお出しし、おもてなしをしました。
 
とても満足された親鸞聖人はお返しにと、
鍋の煤 (すす) を瓦で搔き集めて墨を練り上げ、
庭に生えていた薄 (すすき) の穂を筆代わりにして
庭に出てススキの一穂を筆代わりにして
「帰命尽十万無碍光如来」
という弥陀の名号をスラスラと書き上げ、
帰っていかれました。
 
 
「帰命尽十方無碍光如来」
(きみょうじんじつぽうむげこうにょらい)
 阿弥陀如来に身を委ね、
 心の拠り所とするという意味です。
 
その後、村人達は毎年、旧暦の11月9日に
大根を煮て親鸞聖人の像に供え、
参拝者にも振舞うようになったそうです。
 
 
現在、了徳寺では、京都府亀岡市篠町で
作られた3千本もの青首大根を大鍋で炊き、
親鸞に供えるとともに
朝から並んだ参詣者に振舞われています。
醤油で煮込んで飴色に炊けた大根を頂くと
中風(脳卒中)を退けると言われています。
 
千本釈迦堂の大根焚き
 
京都市上京区の「千本釈迦堂 (大報恩寺)」で
毎年12月7、8日の
「成道会」(じょうどうえ) の法要に因んで行われる
「千本釈迦堂の大根焚き」は、鎌倉時代に
同寺の三世の茲禅上人 (じぜんしょうにん)
大根の切り口に梵字を書いて魔除けとしたのが
始まりです。
 
今も梵字を書いた大根を加持祈祷した後、
切り分けて炊き込んだ大根を頂くと、
冷えた体も芯から温まります。
 
 
なお「千本釈迦堂」(せんぼんしゃかどう) は通称で
大報恩寺(だいほうおんじ) が正式名称で、
全国のおかめ信仰の発祥の地です。

daihoonji.jp

 

「大根焚き」が行われている
京都のお寺

冬の京都では、12月から翌年2月にかけて
様々な寺院が大根を炊き、
参詣者に振舞っています。
 
大根の味付けは、お寺によって個性が出ます。
各寺院の大根を食べ比べるのも
楽しいのではないでしょうか。
 
同聚院
「大根焚き供養」
東福寺の塔頭・同聚院(どうじゅいん)では、
「小雪」の日を挟む前後10日間に
大根供養が行われています
(令和6(2024)年は11/12~12/2)。
厄除け長寿を祈願した大根と油揚げを
炊いたものが振舞われます。

www.doujyuin.jp

 
三寳寺
京都市右京区にある三寳寺 (さんぼうじ) では、
毎年12月第一土曜・翌第一日曜に、
日蓮聖人の遺徳を偲ぶ法要と合わせて、
「大根焚き」が営まれます
(令和6(2024)年度は中止)。
炊いた大根の他に
ゆず御飯も食べられるのが特徴です。

sanbouji-kyoto.or.jp

 
妙満寺
「釈尊成道会・大根だき」
京都市左京区にある妙満寺では、
毎年12月第1日曜に「成道会」が行われた後、
「大根だき」が行われます。
令和6(2024)年は、
12月8日(日)11時から12時に「釈尊成道会」、
12時から14時には「大根だき」が行われます。
 
鈴虫寺(華厳寺)
「納めの地蔵と大根焚き」
 
鈴虫寺 (正式名称は 「華厳寺」 ) 」では、
毎年12月24日の「納めの地蔵」の頃に、
また生命を育む大地を象徴するお地蔵さまと、大地にしっかりと根を張って育った大根は
古くから結びつきがあるとして、
梵字を書いて御祈祷された大根が振舞われて
います(令和6(2024)年は12月15日)。
 
秋だけでなく、四季を通じて
涼やかな鈴虫の音色が聞けることから
鈴虫寺」 の名で親しまれている 「華厳寺」 には
本尊である大日如来の他に
草鞋を履いていて願いを一つだけ叶えてくれる
「幸福地蔵菩薩さま」も安置しており、
全国から地蔵信仰、入学・開運・良縁祈願のため多くの方が祈願に訪れています。
 
「納めの地蔵」では、
一年の感謝と来年の無病息災を願い
千羽鶴と草鞋のお焚き上げ供養や法要が
執り行われます。

www.suzutera.or.jp

 
蛸薬師堂
 
京都の繁華街・新京極通にある
「蛸薬師堂(正式名称は「永福寺」)」では、
毎年12月31日の10時から「大根焚き」が行われ、
旬の大根を頂いて、1年の厄を落とし、
無病息災を祈願して新年を迎える
京都の年末の風物詩になっています。
また正午からは500円で年越しそばの用意も
あります。
 
「蛸薬師堂(正式名称「永福寺」)」には
蛸にまつわる次のような伝説があります。
昔、善光という僧とその母が永福寺で暮らして
いました。
ある時、病で倒れた母から「好物の蛸を食べれば治るかもしれない」 と言われ困り果てますが、
「薬師様に叱られても願いを叶えてあげよう」と
僧侶という身でありながら、母のために生蛸を買って箱に入れて寺へ戻りました。
それを不審に思った町人から箱の中身を見せるよう求められた善光が箱を開けると、箱の中の
蛸はお経が書かれた八巻の巻物へと姿を変え、
霊光を放ったと言われています。
その後、巻物は蛸へと戻り再び霊光を放ち母を照らすと、母の病気はすぐに治ったそうです。
 
法住寺
「無病息災大根炊き」
京都市東山区三十三間堂廻り町にある
天台宗の寺院「法住寺(ほうじゅうじ)では、
毎年1月15日の最寄りの日曜日に
お不動さまに祈願を込め大根炊きが
振る舞われます(令和7(2025)年は1月12日)。
 
この日のみ、「大根健康守」や
「大根焚き限定ご朱印」が授与され、
後白河法皇御尊像が特別開扉されます。
 
法住寺」の本尊は「身代わり不動」と呼ばれ、
開運・厄除けの御利益があると言われています。
また赤穂浪士の大石内蔵助が討ち入り前に
参拝したと伝わっていることから、
その縁から四十七士の像が安置されています。

hojyuji.jp

 
三千院
初午大根焚き
 
「三千院」では、毎年2月の立春を過ぎて
「初午」の日を挟んだ数日間、
出世金色不動明王にお供えして特別祈祷した、
地元・大原の畑で有機栽培された大根で
「初午 大根焚き」が行われ、
無料で参拝者に振舞われます
(令和7(2025)年2月8日~11日)。
無病息災・開運招福のご利益があります。

kyoto-ohara-kankouhosyoukai.net

 
生駒山 寶山寺
「生駒聖天厄除大根焚き」
 
京都ほど有名ではありませんが、
奈良でも「大根焚き」をする寺院があります。
商売繁盛などに御利益があると言われる
生駒山 寶山寺」では、
今年の厄と身体に溜まった毒を祓うため、
聖天様の大好物の大根をお下がりでいただき、
お神酒で炊いて、宝山寺味噌を酒で煮詰め、
タレをかけた大根炊きが振舞われます。
 

www.hozanji.com

 
信貴山大本山千手院
「厄除長寿祈願 大根だき会」
奈良県平群町の「信貴山大本山千手院」では、
農家から大根が奉納されたことをきっかけに、
大根を食べて新しい年の無病息災を願う
年末の行事が行われています
(令和6(2024)年12月1日)。
厄除・健康・長寿の御祈祷札が授与されます。

www.senjyuin.or.jp