うまずたゆまず

コツコツと

稲刈り

いよいよ実りの季節です。
一般的に稲の収穫時期は9月〜10月頃で、
この頃に「稲刈り」をする地域が多いようです。
この時期には、
その年の稲が無事に収穫されたことを祝い、
来年も豊作であることを祈願する
「秋祭り」なども各地で行われます。
 
 

実ほど頭を垂れる稲穂かな

 
稲の穂に実が入ると垂れ下がるように、
人は知識や素養が深まるほど
礼儀正しくなるものだという諺(ことわざ)です。
 
地位が上がるほど、
ふんぞり返る人があまりにも多いので、
「少しは稲穂を見習えよ」という小言であり、
地位が上がって偉そうにしているのは、
実は中身が伴っていないからだという警句でも
あります。
 

案山子(かかし)

 
「案山子」(かかし)は、
田畑の中に設置して人がいるように見せかけ、
作物を荒らす鳥などの害獣を追い払うための
竹や藁などで作った人形のことです。
 
「案山子」は、「嗅がし」(かがし)
語源ではないかと言われています。
田畑の作物を狙うスズメやカラスなどの
有害鳥獣を追い払うため、
髪の毛や魚の頭などを焼き、
串に刺して立てて、
その悪臭で追い払っていたことから
「嗅がし」(こがし)と呼んでいたのが、
次第に「案山子」(かかし)に変化したのだとか。
 

 

 
『古事記』において「案山子」は、
一本足で立つ人形の姿として登場しています。大国主神が出雲の御大(みほ)の岬にいた時、
海上から小さな神様がやって来ましたが、
誰もその正体を知りません。
その時、ヒキガエルの多邇具久(たにぐく)が、
「久延毘古(くえびこ)なら知っているはずです」
と言うので久延毘古の元に訪れて尋ねると、
「神産巣日神(かみむすびのかみ)の御子神・
 少名毘古那神(すくなびこなのかみ)です」と
教えてくれました。
 
そして、久延毘古は歩行不能の案山子だが、
天下の事を知る神と説明されています。
 

linderabella.hatenadiary.com

 
古代の民間習俗では、「案山子」は
単に鳥獣の侵入を防ぐのではなく、
田畑の所有権を示し、
その侵犯を防ぐための霊物で、
田の神の依り代であったと言われ、
呪術的な要素も含んでいました。
収穫が終わると、案山子を田から家に迎えて、
供え物をして祀る祭りが行われます。
 

稲刈り

春の種まきから5カ月余り。
農家の方々が大切に育ててきた稲が
田んぼで黄金色に輝いています。
稲刈りのシーズンです。
 
「米」という字は「八十八」と書きます。
お米が出来るまでには、
88回もの手間が掛かるという意味です。
昭和30年代から稲作の機械化が進んだことで、
昔に比べて、米作りも早く楽に出来るように
なりました。
それでも3月の「種もみ」の準備から、
9~10月の「稲刈り」や「乾燥」まで、
数多くの作業があるのは変わりありません。
 
穂が出てから約40~45日、黄金色の稲穂が
垂れ下がると稲刈りの時期となります。
早く刈り過ぎると未熟粒が多くなり、
収穫量が少なくなります。
逆に、遅れると収穫量は増えますが、
籾が熟れ過ぎて米の色や、つやが悪くなり、
品質や食味が低下します。
稲刈りはタイミングが大切です。
 
稲が実ると、水田の水は必要なくなるので、
畔の水口を切って水を落とし、田を乾かして
刈入れに備えます。
田んぼがしっかり乾いたら、
さあ、「稲刈り」の開始です!
 
稲刈りは朝露が乾いてから開始します。
大体、11時頃が目安です。
稲刈り専用の「鋸鎌」(のこぎりかま)を右手に持ち、
稲株を左手で握って、田面から5~6cm程上を
順次刈り取りながら移動します。
5~6株で左手が一杯になったら、
地面に置きます。
これを「一手刈り」といい、
もう1回の分と合わせた「二手刈り」で
「一把」(いちわ)とします。
それを藁などで束ね、その日のうちに
「稲架」(はさ)に掛けるのが原則です。
 

苅田(かりた)

「苅田」(かりた)とは、
黄金色に実った稲がすっかり刈り取られて、
広々とした田のことです。
稲の刈株だけが残る田は、
近づく冬の気配を感じさせて、
うら寂しくもあります。
 

はざかけ

 
稲刈りが終わったら、
はざ木に渡した横竹に、刈り取った稲をかける
ことを「稲架掛け」(はさかけ)と言います。
「稲掛」(いねかけ)、「稲架」(とうか)など、
地方によっては、様々な呼び方があります。
 
束ねた稲を棒などに架けて約2週間、
天日(太陽光線)と自然風によって乾燥させます。
刈り取ってすぐの籾の水分は約20~25%です。
このままでは水分が多過ぎる米が変質するので15%くらいになるまで乾燥させます。
乾燥することによって固くなり、
籾すりの時に砕けにくくなります。
 
「稲架掛け」は、地方によっては、
何段にも重ねて干すなど、
様々な干し方があります。
 

脱穀

「脱穀 」とは、乾燥させた稲の穂先から
(もみ)を落とす作業のことです。
「稲扱き」(いねこき)とも言います。
 
元禄年間に発明された
「千歯扱き」(せんばこき)
鉄の歯の隙間に稲の穂先を入れて、
引き抜くと籾(もみ)だけが落ちます。
「唐箕」(とうみ)を使って、
(もみ)と藁くずなどを選別したら、
籾から籾殻(もみがら)を除去して「玄米」にする
「籾すり」作業をします。
その玄米から糠(ぬか)を取り除く「精米」すると、
「白米」になります。