雛祭りのお菓子
菱餅
雛飾りには欠かせない「菱餅」(ひしもち)。
緑・白・赤(桃色)の餅が層になったもので、
これは雪の下から植物が芽生え桃の花が咲く姿を表しているのと言われます。
植物としての「菱」の強い繁殖力にあやかり、
「子孫繁栄」を願うものです。
菱の実は滋養強壮に良いとされています。
「菱餅」の起源は、古代Chinaの「上巳節」で
食べられていた「母子草」の餅が
日本に伝わったものですが、
日本に伝わってからは、
「母と子を混ぜるのは縁起が悪い」ため
「蓬」(よもぎ)に代わって、
江戸時代は緑と白の二色に、
明治時代にクチナシを混ぜた赤色の層が加わり、
現在のような三色の餅になりました。
「菱餅」 の三色はそれぞれ次のような意味が
込められています。
<白い餅>
菱(ひし)の実を入れた白い餅は、
清らかな「雪」を表しています。
「清浄・純潔」の意味があります。
<赤い餅>
解毒作用のあるクチナシで色付け、
「魔除け」「厄除け」の意味を持つ
「桃」の色を表しています。
<緑の餅>
増血効果のあるよもぎ餅で、
健康を祈る「新緑の若葉」を表しています。
ひなあられ
「菱餅」とともに、
雛飾りにお供えするお菓子として、
「ひなあられ」は欠かせません。
その昔、家の外に雛人形を持ち歩いて
人形に様々なものを見せてあげる、
「ひなの国見せ」という風習があり、
その際に外で食べるために持っていったことが
「ひなあられ」の起源とされています。
「ひなあられ」は元々、
「菱餅」を砕いて作ったものと言われ、
緑・白・赤(ピンク)それぞれの色の意味は
「菱餅」と同じです。
香川県「おいり」
「おいり」とは、
ピンク・赤・黄・緑・白・紫・青の七色が
カラフルで可愛らしい、
もち米で作った丸くて可愛らしいお菓子です。
香川県の西讃岐地方では、婚儀の時には
欠かせない嫁入り道具の1つとして、
更には、 出産祝い、命名祝い、雛祭り、
新築祝い、長寿祝いなどに使われています。
桜餅
「桜餅」も雛祭りの定番和菓子ですが、
実は伝統的な由来や意味はないとされて
います。
淡い桃色の華やかな見た目と
食べやすい甘さから、
端午の節句の「柏餅」に対して
桃の節句の「桜餅」として定番になった
ようです。
関東風の「長命寺」(ちょうめいじ)と
関西風の「道明寺」(どうみょうじ)があります。
草餅
鮮やかな緑色と爽やかな香りの「草餅」は、
餅にゆでたヨモギの葉を混ぜ込んだものです。
「蓬」(よもぎ)は、古くから邪気や
病気を祓うと考えられ、
また様々な有効成分を含むことから、
薬草としても重宝されてきました。
京都の菓子「引千切(あこや餅)」
雛祭りの日、京都で伝統的に食べられる菓子が
「引千切」(ひちぎり)です。
「引千切」は、蓬餅を伸ばして
真ん中にくぼみを作り、
その上にあんこを乗せたもので、
ひきちぎったような形をしたものです。
大量の菓子を作らなければならない
宮中において、
餡を餅に入れて丸める手間を省くために、
この形になったと言われています。
またこの独特な形は、
真珠を抱く「あこや貝(真珠貝)」にも
似ていることから、
別名「あこや餅」とも呼ばれています。
真珠のように大切な娘をしっかりと守るという
意味が込められた名前です。
長崎の伝統菓子「桃カステラ」
「桃カステラ」は、しっとりと焼き上げられた
カステラの上に
甘いすり蜜(フォンダン)をコーティングし、
葉と枝を飾って、桃の形に仕上げたものです。
長崎では、「初節句」を迎えた女の子のいる
家庭からのお祝い返しとして
「桃カステラ」が贈られてきました。
金平糖(こんぺいとう)
雛祭りに金平糖を食べる地域もあるそうです。
鮮やかな色合いは、視覚的にも雛祭りを
盛り上げてくれます。
雛祭りの飲み物
白酒
「白酒」には、厄除けや長寿の意味があります。
厄除けや不老長寿の意味があり、
大人の女性が飲むものとして
江戸時代に定着したようです。
「白酒」と「甘酒」は別のお酒です。
桃の節句にお供えする「白酒」は、
蒸したもち米に、
米麹、味醂または焼酎を混ぜて寝かせ、
一月ほど熟成させたら、擦り潰して作ります。
「白酒」はアルコール度数5%程になるので、
法律上、リキュール類として扱われていますから
未成年は飲むことが出来ません。
そのため、アルコールの含まれない
「甘酒」を代わりに飲むことが多いようです。
桃花酒(とうかしゅ)
「桃花酒」とは、桃の花を刻んで
酒に浮かべたものです。
平安、室町の頃までは「桃花酒」の方が
主流だったそうです。
桃は百歳に通じるため、
長生きの縁起物の酒とされます。
古代Chinaの故事に、
桃の花が流れる川の水を飲んだところ、
300歳まで生きられたとあり、それにあやかり、
曲水の宴で飲まれるようになりました。
雛祭りの定番料理
ちらし寿司
「ちらし寿司」が雛祭りに食べられるようになったのかについての明確な由来はないそう
です。
ただ一説によれば、平安時代にお祝いの席で
食べられていた「なれ寿司」が
「ちらし寿司」の始まりと言われています。
それが江戸時代に入り、
見た目が華やかな「ばら寿司」になり、
その後、更に見た目が華やかで、
具材を混ぜずに上に乗せる形の
「ちらし寿司」へと変化したとされています。
なお「ちらし寿司」の具材には、それぞれ、
縁起の良い意味があると言われています。
- 海 老:腰が曲がるまで長生き出来るように。
赤い色は魔除けとなる。 - 蓮 根:穴が開いているので、
将来の見通しがきくように。 - 豆 :まめに(勤勉に)働き、
まめに(丈夫で元気に)暮らせるように。 - 錦糸玉子:財宝が貯まるように。
- 人 参:根を張るように。
因みに「ちらし寿司」には
他にもたくさんの具材を入れますが、
それは「生涯食べ物に困らないように」という
願いが込められていると言われています。
手まり寿司
「手まり寿司」は、一口サイズの小ぶりで
丸く握られているお寿司です。
京都の花街の発祥で、
舞妓さんが口紅などにつかないように、
おちょぼ口でも食べられるようにと、
小さく丸い形状にして上品に仕上げたもの
だそうです。
「京寿司」とも呼ばれます。
「手まり寿司」は、元々は「雛祭り」限定の
食べ物ではなかったのですが、
コロンとした可愛らしい見た目が
「雛祭り」にピッタリで、
子供でも食べやすいことから
今では「雛祭り」の食べ物として
人気が高まりつつあります。
雛そば(ひなそば)
3月3日の「桃の節句」、または翌日の4日に
雛壇に供える節句そばを「雛そば」と言います。
お雛様と来年までのお別れを告げるためとか、
お雛様の引越しだからということで、
蕎麦を供えてから雛人形などの雛飾りを
仕舞うそうです。
雛壇に供える蕎麦は、
初めは普通の「二八そば」でしたが、
時代とともに変化して、
「三色そば」や「五色そば」などの
「変わりそば」に変わったようです。
3月3日と「3」が重なる(重三)縁起から、
「三色そば」が本来のあり方と言われています。
蛤(はまぐり)
蛤は、一対の貝がピタッリ合わさって、
他の貝とは合いません。
そこから転じて、一組の夫婦が一生添い遂げられますようにとの願いを込めて、
桃の節句では、蛤のお吸い物を頂きます。
一対の蛤の貝には具を2つ入れるそうです。
田螺(たにし)
田螺の貝は丸くてつぶらな形をしています。
そんな田螺を食べて、つぶらな瞳の
キレイな顔立ちの女の子になりますように、
そう願って、桃の節句に田螺を頂くように
なったそうです。
田螺は、田んぼで獲れる巻貝で、
昔は貴重なたんぱく源でした。