うまずたゆまず

コツコツと

七十二候「桃始笑」

 
「ももはじめてさく」
と読みます。
 
読んで字のごとく、桃の蕾がほころび、
花が咲き始める頃となりました。
昔は花が咲くことを「笑う」と表現しました。
 

 
桃は枝から直接くっつくように、
溢れんばかりに密集して咲くのが特徴です。
上品な白から淡いピンク、濃紅まで、
彩りの競演を楽しむことが出来るのも
「桃」ならではないでしょうか。
 

 
「桃」と言うと、まず思い浮かべるのは
フルーツ(「実桃」)のほうですが、
「桃」は大きく分けて2種類あり、
雛祭りに飾る桃の花は、
花を観賞するための品種で
「ハナモモ」と呼び、
食用の「実桃」とは性質が異なります。
 
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桜の花の咲く時期に前後して
開花の最盛期を迎え、
艶やかなピンクや赤、白の花が春の庭を彩る
「ハナモモ」(花桃)は
バラ科サクラ属の落葉中高木で、
花を観賞するために改良された桃です。
 

 
日本には弥生時代に渡来したと言われています。
『古事記』には、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)
黄泉の国から逃げ帰る際、
雷神と黄泉軍に追い詰められた時に
そこに生えていた桃の実を
三個取って投げつけると
雷神と黄泉軍が退散したとあります。
 
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そして、桃に
「お前(桃)が私を助けたように、
 葦原の中国(地上世界)の人々が
 苦しみに落ち、悲しみに悩む時に
 助けてやってくれ」と命ぜられ、
意富加牟豆実命おおかむずみのみこと」という名を授けました。
 

linderabella.hatenadiary.com

 
平安時代には、
3月3日の「桃の節句」が祝われ、
桃の花が観賞されるようになりました。
 

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観賞用の「ハナモモ」の品種改良が進んだのは
江戸時代に入ってからです。
様々な園芸品種が生み出され、
現在も当時の品種が多く残っています。
 
大正時代には、
「赤・白・ピンク」の
3色が入り混じった品種が登場します。
この華やかな品種は、福沢諭吉の娘婿で、
木曽川水力発電の開発に尽力された
「日本の電力王」こと福沢桃介氏が
ドイツ・ミュンヘンから持ち帰り、
長野県・阿智村で定植させたものです。
 

 

 
現在、阿智村には、
月川温泉郷一帯に約五千本、
阿智村から南木曽町へ抜ける
国道256線「花桃街道」に約五千本と、
トータル一万本ものの花桃が植えられ、
「日本一の桃源郷」と呼ばれ、
4月中旬から5月中旬にかけて見頃を迎えます。
(詳しくは、「花桃の里」をご覧下さい。)
 

 
因みに、「ハナモモ」にも実はなりますが、
残念ながら「実桃」とは異なり、
一般的には食用に向きません。
「ハナモモ」に実がなるのは7~8月で、
大きさは5~6cm程度と小ぶりで、
実は酸味や苦味が強いです。
しかし「ハナモモ」を
自宅で育てている方の中には、
その実を果実酒にしたり、ジャムにしたり
活用しているようです。