うまずたゆまず

コツコツと

雀隠れ、「雀」の名前が付く植物

 
春の季語となっている「雀」は多いです。
「恋雀」(こいすずめ)、「雀交る」(すずめさかる)
「雀の巣」(すずめのす)、「孕み雀」(はらみすずめ)
「雀の子」(すずめのこ) などなどです。
 
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そもそも「雀」という語は、
「小鳥」全般を指す言葉でもあったようで、
「雀」という字に目を移すと、
「雲雀」(ひばり)、「山雀」(やまがら)
「雀鷹」(ツミ)、「四十雀」(しじゅうから)
「葦雀」(よしきり)、「金糸雀」(かなりあ) など、
他の鳥の名前によく登場します。
 
また「雀」を冠した植物もあります。
 
 

雀隠れ(すずめがくれ)

「雀隠れ」(すずめがくれ)とは、
春になって萌え出た若草が生長して、
ようやく雀の姿を隠すほどに伸びた様を
言います。
 
古くから使われた言葉で、和歌で好まれた他、
藤原道綱母の『蜻蛉日記』にも登場します。
 
 
 
三月になりぬ。
木の芽、雀隠れになりて、
祭りのころおぼえて、榊、笛恋ひしう、
いとものあはれなるにそへても、
音なきことをなほおどろかしけるもくやしう、
例の絶えまよりも安からずおぼえけんは、
なにの心にかありけん。
 
三月になりました。木の芽が繁って、雀が隠れるほどになり、賀茂の祭りの頃の時候で、榊や笛の音が懐かしく偲ばれて、感傷的な気持ちになるにそえて、あの人からは何も音沙汰がないのに、こちらから歌を送ったりしたこともいまいましく、いつもの絶え間よりも落着いていられないのは、どういう心持ちだったのでしょう。
 

「雀」の名前が付く植物

雀の鉄砲すずめのてっぽう
イネ科スズメノテッポウ属の
「雀の鉄砲」(すずめのてっぽう)は、
田や畦道などの湿地に多く群生する草で、
細長い円柱形の花穂の形を鉄砲に例えて
名付けられた名前です。
「雀の槍」「雀の枕」「槍草」などの
可愛らしい別名も
この形から付けられたようです。
花穂は引き抜くとツッと音を発し、
この茎を吹いて遊んだことから、
「フエフキ」「ピーピーグサ」といった
別名もあります。
 
成長速度が速く、繁殖力も強いため、
大量発生しやすく、
特に農家では作物の養分を奪う
強害雑草となっています。
 
また、イネ科の花粉症の原因になるとも
言われています。
 
雀の帷子すずめのかたびら
イネ科イチゴツナギ属の一、二年草の
「雀の帷子」(すずめのかたびら)は、
日当たりの良い所ならば、
畑や路傍など至る所に生える雑草で、
世界中に分布し、南極大陸にも帰化しています。
 
早春の寒いうちから地を這うようにして
淡緑色の花穂を密につけます。
これを雀が着る「帷子」(かたびら)に見立てた
ものです。
 
雀の槍すずめやり
 
イグサ科スズメノヤリ属の「スズメノヤリ」は、
日本全国の海岸から山地に分布しています。
4月から5月、上部に集まった頭花の形が
大名行列の「毛槍」(けやり)に例えたものです。
「雀の稗」(すずめのひえ)という別名もあります。
 
雀の瓜すずめのうり
ウリ科スズメウリ属の
「雀の瓜」(すずめのうり)の実は丸く、
白く熟します。
名前の由来はこの実が
「カラスウリ」より小形であるため、
または実が雀の卵に似ているからとも
言われます。
 
雀野豌豆すずめのえんどう
 
日当たりのよい乾燥した場所に生える
マメ科ソラマメ属の1年から越年草
「雀野豌豆」(すずめのえんどう)は、
同じ仲間の「カラスノエンドウ」に比べると
葉や花、果実が小さくて、
全体的に繊細な感じであるため、
「カラス」に対して「スズメ」を当てたのが
名前の由来です。
 
雀袴すずめのはかま
 
葉はクローバーにそっくりで、
6月から9月頃に、日本各地の道端や畑などに、
黄色や白、ピンク色の小花を咲かせる
「酢漿草」(かたばみ)の別名には、
「雀の袴」(すずめのはかま)というのがあります。
夜になると、小さい葉が袴を畳んだように
葉が閉じることがその由来です。
 
 
可愛らしい見た目の「雀の袴」ですが、
こちらも非常に繁殖力が強いことから
ガーデニングでは雑草として扱われているのだ
そうです。
 
 
ただカタバミは、「サクショウソウ」とか
「ソショウソウ」という生薬名で、
解毒や炎症を抑えたり、下痢止めとしても
民間療法で利用されていました。