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コツコツと

春の雨(はるのあめ)

 
春に降る雨は、降り方の強弱など
様々なものがあります。
「雨」にはどこか暗さを含むものですが、
「春の雨」には、
春特有の華やぎが感じられます。
 
 

春の雨(はるのあめ)

寒明けの雨(かんあけのあめ)
「立春」で寒が明けた頃に降る雨を
「寒明けの雨」(かんあけのあめ)と言います。
この時期の雨は雪交じりの地方もあり
春の雨とは名ばかりの冷たい雨です。
 
春霙(はるみぞれ)
春先は寒暖差が激しく、
雨は霙(みぞれ)に変わったり、ボタン雪に
なったりします。
この時に降るのが「春霙」(はるみぞれ)です。
春でありながら冬の感じを覚えます。
 
溶けかけた雪と雨が混ざって降る霙(みぞれ)は、
古くは「雨氷」とも書いたようで、
雪から雨へ、氷から水へと移り変わる
「雨水」の時期を象徴するような
自然現象です。
水分を多く含んだ霙(みぞれ)は、
ぽたぽたと落ちる感じで、
雪のような静けさも、
霰のような軽やかさもありません。
 
木の芽雨(きのめあめ)
春、木の芽時に降る雨で、
冬の間、身を固くして寒さに堪えていた
木の芽の芽吹きを促し、
その成長を助ける雨です。
 
甘雨(かんう)
しとしとと降り、草木を潤す
優しく降る印象の雨のことです。
 
瑞雨(ずいう)
穀物の生長を助ける、
春の恵みの雨のことです。
 
梅若の涙雨(うめわかのなみだあめ)
 
梅若は梅若丸のことで、
謡曲『隅田川』に登場する
悲劇の少年の名前です。
梅若丸は、京で人買いにさらわれて、
東国に連れて来られ、
隅田川の畔で重病になったので
足手まといになり隅田川に投げ込まれ、
息絶えてしまいました。
この梅若を哀れみ、
塚がある東京都墨田区の木母寺(もくぼじ)では、
4月15日に供養の大念仏会を行われています。
この日は、死んだ梅若を憐れんで、
天が雨を降らすと言われています。
 

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植物の名前が付いた春の雨
 

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降り方による
春の雨の名前

春の雨には柔らかく降り注ぐ雨だけでなく、
荒れた天気の時に降る雨もあります。
 
春雨(はるさめ)
 
雨脚が細かく、けむるように降る雨のことです。
「けむる」には、雨・霧・霞などで
辺りがぼんやりするという意味があります。
 
小糠雨(こぬかあめ)
「小糠雨」(こぬかあめ)は、
春先にしとしとと降る、
雨粒が霧のように細かい雨のことです。
雨音を立てないことから、
別名「音なき雨」とも言われます。
なお「小糠雨」とは、春に降るものを指して、
秋に降るものは「霧雨」と言います。
 
春時雨(はるしぐれ)
「時雨」は冬の季語ですが、
春に降ったり止んだり、
「時雨」のような気まぐれな降り方をする
春の雨を「春時雨」と言います。
「夏時雨」「秋時雨」「冬時雨」もあります。
雷を伴うこともあり、
これを「春雷」と言います。
 
春夕立(はるゆうだち)
「夕立」は夏の季語ですが、
春に、夕立のように激しく降る
にわか雨のことを「春夕立」と言います。
 
春驟雨(はるしゅうう)
「驟雨」も夏の季語で、
急に降り出しては降り止む、
激しい俄雨のことです。
「春驟雨」は、夏のものほど
激しい降雨はありませんが、
どこか華やぎと艶とを含んでいます。