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七十二候「大雨時行」(たいうときどきふる)

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「たいうときどきふる」
と読みます。
 
七十二候「大雨時行」は、
「夏」の最後の候で、
集中豪雨や夕立など、
時に激しい雨が降る頃という意味です。
 

 
 
この時季多い
夕立(「ゆうだち」または「ゆだち」)は、
夏の夕方になり、上昇気流によって発達した
「積乱雲(夕立雲)」が降らせる雨で、
局地的かつ一時的に
大粒の激しい雨が激しく地面に叩きつけられ、
しばしば雷や雹(氷雨)を伴います。
 
この夕立の雨は、積乱雲の下だけに降り、
積乱雲とともに移動するため、
局地的でかつ一時的な雨です。
ある地域を境に、一方では降っているのに
他方では晴れているなど、
局地的な降り方をするため、
昔から「夕立」は「馬の背を分ける」とか
「馬の背の片側には降らない」と言われて
きました。
「夕立は馬の背を分ける」
夕立は、馬の背の片側はぬらしても、
片側は乾いていることがあるの意で、
夕立の雨の降る区域のごく狭いことのたとえ。
精選版 日本国語大辞典
 

 
「驟雨」(しゅうう)は、急にサッと降り、
すぐに止んで晴れることが多い
夏のにわか雨のことです。
ただ「夕立」は夕方のものですが、
「驟雨」は午前中や日中のにわか雨のことも
言います。
吉行淳之介の芥川賞受賞作の小説『驟雨』、
藤沢周平の小説『驟り雨』(はしりあめ)
ありますね。
 
「白雨」も夏のにわか雨、夕立のことですが、
雲が薄くて明るい空から降る雨のことです。
北宋の政治家で、宋代随一の文豪でもあった
蘇軾 (そしょく) の『望湖樓ぼうころうひて書す』という
漢詩から生まれた言葉です。
黑雲翻墨未遮山  黒雲墨を翻して未だ山を遮らず
白雨跳珠亂入船  白雨珠を跳らして乱れて船に入る
卷地風忽吹散  地を巻き風来たって忽ち吹き散ず
望湖樓下水如天  望湖楼下 水天の如し
 
 黒雲が墨をこぼしたかのように広がり、
 まだ山を隠してしまわないうちに、
 白い雨粒が真珠を撒き散らしたかのように、
 乱れて船の中に飛び込んで来た。
 大地を巻き上げんばかりの風が吹いて来て、
 たちまち黒雲を吹き散らすと、
 望湖楼の下、水はまた大空の青さに戻った。
 
昼間の蒸し暑さが極限に達し、
青空にむくむくと湧き上がる「入道雲」が
突然の雷鳴とともに激しい「夕立」に変ると、
乾いた大地を潤し、地上の熱気を洗い流す
「打ち水」のように気温が下がります。
短時間で止んだ後は、
カラリと晴れて涼気を感じさせてくれます。
雨後の虹もまた格別ですね。
 

 
ところで、最近はあまり
「夕立」という言葉は使われなくなり、
代わりに「ゲリラ豪雨」という言葉を
よく耳にするようになりました。

「夕立」も「ゲリラ豪雨」も
夏の午後に急な激しい雨が降る現象ですが、
「夕立」は急に激しく降ってもすぐに止むため災害に繋がるようなことは余りないのに対し、
「ゲリラ豪雨」は、時には1時間に
100mmを超えるような凄まじい雨量を観測し、
冠水被害も相継ぎ、深刻な状況になることも
あります。