春、いよいよ行楽シーズンスタートです。
春の長閑な日に、
春の飲食物などを用意して
野山を歩き回って遊ぶことを
古くは「野遊」(のあそび) 、
「野掛け(野駆け)」(のがけ) と言いました。
江戸の人達は、
「一日の遊びは百年の命をのばす」
(『江戸繁盛記』)と言って、
各地の「野遊び」の名所に出掛けて行き、
飲食に興じたり、花や草を摘んだりしながら、
その日一日を有意義に楽しんでいたようです。
秋の野に出て、日和の一日を楽しむことは
「秋の野遊び」(あきののあそび)と言います。
「野遊び」の風習は、古くからあり、
『万葉集』にも「野遊」と題した歌を
見ることが出来ます。
現代においては、「野遊び」は
ピクニックなどと同様に、
春の行楽となっていますが、
元は本格的な農事の始まりに先駆けて、
田の神を祀る資格を得るために
山に籠って精進する行事であったと
されています。
なお「野遊び」「山遊び」は、
旧暦三月三日の「上巳の節句」、
あるいは四月八日の「卯月八日」、
修験道の「山開」「戸開式」の日に
行われるところが多く、
「共同飲食」(きょうどういんしょく)の他に、
水辺で禊をする例もありました。
「共同飲食」(きょうどういんしょく)とは、
広義では、特定の機会に家族・親族・地域社会・
職場・趣味の仲間などの成員が集まって、
同じ飲食物を共に飲食する行為で、
「共食 」「共飲共食 」とも言います。
神道では、特に同じ神を崇拝する集団
(神職及び氏子)が祭りの後などに神饌や供物を
共同して飲食することを言います。
「神と人が共に飲食すること」は
「神人共食」(しんじんきょうしょく)と言います。
山の神、野の神と一緒になって
野山や花の下で遊び、共に楽しむことにより、
冬籠りで衰えた生命力を蘇らせ、
春の息吹を取り込んで、体に活力をつける
意味合いがあったと言われています。
特に、外出する機会の少ない、
江戸の女性達にとって「野遊び」は
楽しいレクレーションだったのです。
ワイワイはしゃぎながら「摘み草」をし、
蓬 (よもぎ) や野蒜 (のびる) 、嫁菜 (よめな) 、
蕗の薹 (ふきのとう) などの若草を摘んで、
お土産にすることも楽しみの一つでした。
行楽の一番の楽しみといえば、
何と言っても「お弁当」。
この時代のお弁当の人気おかずは、
色合いがよくて汁気の出ない
「玉子焼き」「蒲鉾」「煮しめ」など。
ご飯ものには、傷みにくく、香ばしさもある
炙りおにぎりが好まれたとか。
それを「提重」(さげじゅう) に入れて、
家から持参しました。
「提重」(さげじゅう)
重箱や酒器などを携行出来るように
持ち手のついた外枠に収めた弁当箱の一種。
また風流人の間で用いられたのは
「茶弁当」(ちゃべんとう) と言い、
野点用の茶道具一式と茶菓子箱に弁当箱が
全て組み込まれた「提重」でした。