「きりぎりすとにあり」と読みます。
戸口で秋の虫が鳴き始める頃となりました。
「キリギリス」とありますが、
昔は「蟋蟀 (コオロギ)」のことを「キリギリス」と呼び、
秋に鳴く虫の総称としていました。
キリギリスは、
古くから日本人によって観賞用に飼育されてきました。
そのため、江戸時代から大正にかけて、
蟋蟀(こおろぎ)、鈴虫(すずむし)、松虫(まつむし)、
轡虫(くつわむし)、蜩(ひぐらし)などを
美しい籠に入れて売り歩く「虫売り」という
行商ビジネスもありました。
コオロギ科以外で
唯一商品価値を持つ「鳴く虫」であったキリギリスは
竹製のカゴ「ギスかご」に入れて販売され、
そのカゴが縁側や店先に吊るされて
キリギリスが鳴き声を響かせ、
お盆になると、飼い置いた虫を放ちました。
1980年代初頭までは、
キリギリスがデパートや夜店で販売され、
大きな河川敷や野原では、
小銭稼ぎの「ギッチョ採りのおじさん」が見られましたが、
いつの間にか消えてしまいました。
ところで、キリギリスは別名を「機織り虫」と言います。
昔は、秋の夜長、聞きなしした虫の声に励まされながら、
針仕事に勤しみました。
声の主は、「ツヅレサセコオロギ」。
リ、リ、リ、リ、リ、・・・と、
一定のリズムで10分も20分も続く鳴き声が、
「肩刺せ、裾刺せ、綴れ刺せ」と聞こえたのだとか。
「着物の肩や裾に針を刺して、
綴れ(ほころび)を直しておきましょうね。
早くしないと寒さが来ちゃいますよ!」と、
虫達が冬支度を導いてくれたのでしょうか?