「くされたるくさほたるとなる」
と読みます。
梅雨を迎え、水辺の湿った草陰から、
「蛍」が幻想的な光を放ちながら
飛び始める頃となりました。
「腐草為蛍」とは
「腐草為蛍」(くされたるくさ ほたるとなる)とは、
「腐った草が蒸れ、蛍になる」という意味
です。
「腐草(朽草)」(くちくさ)とは、
「蛍」(ほたる)の異名です。
「蛍」(ほたる)は、
一年近くを幼虫として水の中で過ごし、
土が柔らかくなる雨の日に水から上がり、
土にも潜り込み、そこで蛹(さなぎ)になり、
数週間を土の穴の中で過ごします。
そして梅雨の始め頃に羽化し、
その後、暑くなり湿気で蒸れて
腐りかけた草(腐草=朽草)の下で
明かりを灯し始めることから、
「朽ちた草が蛍になる」と表現したのです。
蛍
世界には約2000種、
そのうち日本には約40種の蛍がいます。
実は陸生の方が圧倒的に多く、
幼虫期を水中で過ごす種はごく僅かです。
水性ホタルの棲息は、湿潤な東南アジアに
集中しているため、水のある環境、
つまり蛍は水田とともに進化してきたと
考えられています。
<ゲンジボタル(源氏蛍)>
5月下旬~6月下旬頃成虫になる。
体長12mm~18mm。本州、
九州、四国に生息。
約2~4秒間、黄色に大きく光る。
<ヘイケボタル(平家蛍)>
6月下旬~8月頃成虫になる。
体長7mm~10mm。
北海道から九州にかけて生息。
黄色に光る。
<ヒメボタル(姫蛍)>
5月下旬~7月下旬頃成虫になる。
体長6mm~9mm。
青森から九州に生息。
水辺ではなく陸に生息し、ゲンジボタルや
ヘイケボタルに比べると光は弱い。
蛍の一生は短く、儚い
蛍の生涯は約1年で、そのほとんどは幼虫期。
幼虫期の約10か月間は、水の中で過ごし、
陸に上がって40~50日間は、
蛹(さなぎ)になって土の中で過ごします。
羽化して成虫になったら概ね1~2週間程度で、
オスが飛んで発光しながらラブコールを送り、
それに応えてメスが光れば「婚約成立」で、
オスがメスのもとに飛んでいきます。
そして「結婚」。
「産卵」をした後2~3日で、
その短い生涯を終えます。
私達が目にする蛍の乱舞は、
子孫を残すために
必死にパートナーを探す姿だったんですね。
その儚くも、精一杯、命をかけた
恋のときめきが伝わり、
心を奪われてしまうのでしょうか。
蛍の光
「蛍」と言えば「光る」と思っていますが、
幼虫の時は発光するものの、
実は、成虫の多くは発光しないのだそうです。
ほとんどの蛍は一生を陸上で過ごし、
昼間に活動するため、
光ではなく匂いを発しているそうです。
「蛍狩り」の主役である
「ゲンジボタル」や「ヘイケボタル」のように
長い幼虫期を水中で過ごし、
成虫してから発光する種類は、
珍しいのだそうです。
蛍の腹部の後方には発光する器官があって、
そこが光を放っています。
オスは光を発しながら飛び、
メスは葉や草の上などで弱い光を放ちます。
オスとメスが出会って、意気投合すると
強い光を放つそうです。
これで「婚約成立」という訳です。
ヒーリング(癒し)効果
水辺や野の暗がりに浮かんでは消える
夏の夜を幻想的に照らし出してくれる
「蛍」の光には、
「1/fの揺らぎ」と呼ばれる
「ヒーリング(癒し)効果」があると
言われています。
自然界には、多くの「揺らぎ」が溢れています。
心臓の音、ロウソクの炎の揺れ、波の感覚、
雨音・・・いずれも一定のようでいて、
実は予測出来ない不規則な揺らぎがあり、
それが「1/fの揺らぎ」です。
"1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)とは、
パワー(スペクトル密度)が周波数 f に
反比例するゆらぎのこと。
ただし f は 0 より大きい、有限な範囲をとる
ものとする。
・・・[中略]・・・
自然現象においても見ることができ、
具体例としては人の心拍の間隔、
ろうそくの炎の揺れ方、電車の揺れ、
小川のせせらぐ音、目の動き方、木漏れ日、
蛍の光り方などがある。
・・・[中略]・・・
人間の生体は五感を通して外界から1/fゆらぎを感知すると、生体リズムと共鳴し、自律神経が整えられ、 精神が安定し、 活力が湧くと考えられている。
「蛍狩り」の楽しみ方
ストレス社会の現代人は、
積極的に自然の癒しを取り入れたいものです。
特に6月は、「蛍狩り」関連のイベントが多く催されているようですので、
お出掛けになってみてはいかがでしょうか。
「蛍狩り」の時期や条件
「蛍狩り」が出来る期間は毎年初夏の季節だけ。
更に、地域や気候、平地か山地など
環境の違いによって変わります。
● 飛翔する時期(例年)
・西日本:5月中旬~6月
・東日本:5月下旬~7月上旬
● 飛翔しやすい時間帯
・およそ19時~23時
・激しく乱舞するピークは
19時頃から約1時間
● 天候条件
湿気が多く、風の少ない夜に
よく飛び回ります。
雨が降る前と後、曇り空や月明かり
のない新月の頃が狙い目です。
蛍狩りの名所
[ホタル観賞・蛍まつりなどイベントスポット]
■宮城県東和町
「鱒淵川」
6月下旬~7月上旬。
ゲンジボタルの群生地として国の天然記念物に指定されています。
■栃木県日光市
「日光だいや川公園」
令和5(2023)年6月3日、7月1日に
「ホタル観賞会」開催
■群馬県利根郡みなかみ町
「月夜野」
6月下旬頃、「ホタル鑑賞の夕べ」があります。
■埼玉県秩父郡小鹿野町
6月下旬~7月上旬。
■千葉県いすみ市
「源氏ぼたるの里」
5月下旬~6月中旬。
ゲンジボタルの生息地「山田地区」。
■千葉県君津市
「ロマンの森共和国」
5月下旬~7月上旬まで、
ゲンジボタル、ヘイケボタルが観賞出来ます。
■東京都文京区
「ホテル椿山荘東京」
5月下旬~6月末にかけ「ほたるの夕べ」開催。
■東京都清瀬市
「金山緑地公園」
自然繁殖の蛍もいますが、6月には保護されている蛍を鑑賞することもできます。
■東京都稲城市
「よみうりランド」
6月~7月にかけ、「ほたる鑑賞」イベント開催。
■神奈川県横浜市中区
「三渓園」
5月中旬頃から「蛍の夕べ」開催。
■静岡県伊豆市
5月下旬頃から「ほたるの夕べ」開催。
■静岡県伊東市
「松川湖」
6月に「ほたる観賞会」が開催。
■長野県辰野町松尾峡
「ほたる童謡公園」
6月中旬に「ほたる祭り」開催。
明治時代から知られる蛍の名所。
■長野県池田町
「花見ほたるの里」
令和5(2023)年6/30~7/2、7/7~9
「花見ほたる祭り」開催。
■名古屋市中区
「名古屋城外堀」
5月下旬~6月上旬。
陸に住むヒメボタルを見ることが出来ます。
■三重県伊賀市
■岐阜県大垣市 金生山明星輪寺
「金生山姫螢観察会」
令和5(2023)6月3日、6月10日
■滋賀県天野川流域
米原市長岡周辺は
「長岡のゲンジボタル及びその発生地」として
国の特別天然記念物に指定されています。
■京都府京都市各地
6月上旬。
「哲学の道」や「祇園白川沿い」など、
名所が点在しています。
■奈良県奈良市
「奈良公園」
東大寺の二月堂裏参道、大湯屋周辺に
ゲンジボタルの群生が観られます。
■兵庫県朝来市
■兵庫県養父市
「奥米地ホタルの里」
祭は毎年6月中旬
■岡山県真庭市
「北房ほたる公園」
6月上旬~下旬。
環境省の「ふるさといきものの里100選」。
■広島県竹原市小梨町
「おなし名水」が湧き出るほたるの里。
毎年6月に「ホタルまつり」開催。
■鳥取県鳥取市
「樗谿公園」
5月下旬~6月上旬。
国の重要文化財「樗谿神社」(おうちだにじんじゃ)
の境内を流れる樗谿川にゲンジボタル、
ヘイケボタル、ヒメボタルが生息しており、
鳥取市ホタルの里と呼ばれています。
■山口県 道の駅・蛍街道西ノ市
「ホタル舟」
令和5(2023)6月7日(水)~24日(土)
■愛媛県大洲市柳沢地区
6月1日~15日。
矢落川流域はゲンジボタルの発生地として
愛媛県の天然記念物に指定。
■高知県四万十市
「四万十川」
5月下旬~6月中旬。
佐田の沈下橋周辺などで観賞出来ます。
■大分県佐伯市
「本匠ほたるの里」
5月中旬~6月中旬。
西日本最大級とも言われる蛍狩りスポット。
■長崎県新上五島町・相河地区
令和5(2023)5月27日~6月11日
■沖縄県島尻郡
「久米島ホタル館」
4月中旬~5月中旬。
4月下旬に「ホタルまつり」開催。
県指定天然記念物「クメジマホタル」を
鑑賞出来ます。
蛍狩りのマナー
幻想的な「蛍」の光を
この先も見続けられるように、
観賞などに行く際には、細心の注意を払って
そっと静かに見守るようお願いします。
1.蛍狩りは蛍を愛でるもの。
触ったり、捕まえたりするのは厳禁!
2.光は厳禁!
音が出るものもダメ!
静かに干渉しましょう。
3.生息エリアを汚さない!
蛍が生息出来る環境を保ちましょう。
草むらに立ち入ったり、
川を汚したりしない!
4.ホタルは虫。
虫除けをする場合は、
顔など最小限にとどめましょう。
香りの強い物も持ち込まないように!
5.歩きやすい靴、長袖・長ズボンが基本!
帽子や手袋、タオルで首回りを覆う等
肌の露出が少なくするといいでしょう