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コツコツと

吊るし飾り、吊るし雛

 
「吊るし飾り」「吊るし雛」は、江戸時代に
布で作った動物や植物、縁起物などを吊るし、
雛人形の代わりに飾るようになったのが
始まりです。
一つ一つのアイテムにはそれぞれ意味があり、
どれも子供の成長や幸せを願うものです。
 
 

吊るし飾り、吊るし雛

 
「吊るし飾り」「吊るし雛」は、
布で作った小さな人形を糸や紐で繋ぎ合わせ、
高い所から吊るして飾るのが
糸で吊るして仕立てたお飾りです。
 
最近は、その華やかさから
「雛人形」に添えるお飾りとして、
また飾るのも仕舞うにしても
場所を取らないこともあって人気が高まり、
日本各地の工房で製作されるようになり、
全国的に販売されるまでに広がっています。
 

由来

 
「吊るし飾り」「吊るし雛」が始まったのは、
江戸時代とされており、
当時は「雛人形の代用品」として
用いられることが多かったようです。
 
当時、特別裕福ではない一般の庶民にとって、
「雛人形」はとても高価なもので、
なかなか手に入らないものでした。
 
ですが、生まれてきた子供が
健康に育ち幸せになって欲しいという
親の願いは、いつの時代もみんな一緒。
 
そこで、赤ちゃんのお母さんやお祖母ちゃん、
叔母さんから近所の人達まで、
手持ちのキレイな布やハギレで、
縁起の良い小物や小さな人形を作り持ち寄って
「吊るし飾り(吊るし雛)」に仕上げて
赤ちゃんに贈っていたとされています。
 

飾り

 
吊るす飾りは、様々な形がありますが、
どれも開運や招福や健康を呼ぶ縁起物で、
全部で100種類以上にも上ると言われています。
「飾り」の意味や云われを一部ご紹介します。
 
這い子人形(はいこにんぎょう)
赤ちゃんが「はいはい」している姿のお人形。
 

www.linderabell.com

 
花(はな)
花のように可愛く育ちますようにと
祈って飾られます。
 
桜(さくら)
桜の花、葉の甘い香りは、
美しく優しい心を育むとされています。
 
桃(もも)
花、葉、種の全てに薬効がある桃は、
「邪気・悪霊を払い、延命長寿を授けてくれるように」との願いが込められています。
みずみずしい果実と早春の花の艶やかさは、
女の子の象徴です。
 
梅(うめ)
厳寒に耐え、香しく凛と咲く梅の花は、
女性の「美しく、芯のある生き方」を示すもの。
松竹梅の一つとして、お正月に限らず、
一年中かかせない縁起物です。
 
菊(きく)
菊は、日本の皇室の象徴であり、
格調高くおめでたい花です。
また長寿の薬草として使われたことから、
「延命長寿、安泰、厄除け」などを願い
飾られます。
 
椿(つばき)
日本女性の美しさを表す大輪の椿の花は、
優美さと華やかさの象徴です。
優雅で美しい女性に育つよう
願いが込められています。
 
鬼灯(ほおずき)
子供や女性のお守りです。
実や根に薬効があり、婦人病に悩まされない
ようにとの願いが込められています。
また「ほうずきちょうちん」とも言われ、
この世を明るく照らし困難なく生きていける
ようにとの意味もあります。
 
鶴(つる)
長寿や健康への祈りが込められています。
またその美しい姿から、目にすると心が豊かに
なる縁起物としても知られています。
 
鶯(うぐいす)
春を知らせる、良いニュースを知らせる
縁起の良い鳥です。
鳴き声を 聞くと幸運が訪れると言われます。
 
雀(すずめ)
雀は災難や厄をついばみ、
五穀豊穣を意味することから、
古くから縁起が良いとされる吉鳥です。
 
兎(うさぎ)
優しく素直で言い争いをしないけれど、
赤い目に魔除けと病気を退治出来る霊力があり、
「芯のある優しい人になれる」との言い伝えが
あります。
 
さるぼぼ
さる(去る)にかけて、「病が去る」「災いが去る」
という願いを込めて。
 
犬(いぬ)
子守り・厄除けに加えて、
犬のお産が軽いことにあやかり、
「子宝・安産・健康」に恵まれますように
との願いを込めて飾ります。
 
金魚(きんぎょ)
金魚のように「華麗に瑞々しく、悠々と人生を渡れるように」との願いが込められています。また金魚は、金運、多産祈願に通じる
縁起の良い魚とも言われています。
 
蝶(ちょう)
蝶のように、可憐に可愛らしく
成長しますようにと願って飾ります。
 
亀(かめ)
長寿と健康にあやかりを願う縁起物です。
また、亀の一歩一歩たゆみない努力、
そこから生まれる「幸せな人生」への
願いが込められています。
 
鯛(たい)、金目鯛(きんめだい)
めで“たい”の鯛。
暮らしの中におめでたい日が
たくさん訪れますようにとの願いを込めて。
 
蛤(はまぐり)
蛤は他の貝とは合致しないことから、
貞節の象徴とされています。
可愛い娘の幸せを祈って飾られます。
 
唐辛子(とうがらし)
可愛い娘とお雛様に悪い虫がつかないように
との意味があります。
 
海老(えび)
腰の曲がった老人の姿を海老に例え、
長寿の願いが込められています。
 
羽子板(はごいた)
女の子の生まれた家に贈られる縁起物です。
悪いものを跳ね飛ばすとも言われ、
災厄を払い、無事に成長して幸せを招くように
との願いが込められています。
 
打出の小槌(うちでのこづち)
七宝の1つで、大黒様の持つ小槌。
振れば欲しいものが手に入り、
望みが叶うといわれる縁起の良い宝物です。
「金運財運にあやかれる」とされています。
 
お多福(おかめ) 
福を多く招く(お多福)との意味があります。
 
巾着(きんちゃく)
将来の夢をいっぱい巾着に詰めて、
幸せな人生を歩むようにとの
願いが込められています。
また、巾着にお金が溜まり、
「お金に困ることがないように」という
意味もあるそうです。
 
だるま
昔から「七転び八起き」として、
福を招く縁起物とされていました。
また、赤い色には魔よけの意味があります。
 
絵馬(えま)
お願い事を伝える、神様への掛け橋として
飾られます。
 
糸巻き(いとまき)
お裁縫の道具のひとつ。
お裁縫が上手になりますようにと願って。
 
お手玉(おてだま)
「お手玉」は女の子の大切な遊具として
考えられてきたことから、
いつも楽しく遊べるようにとの思いが
込められています。
また、4枚の布を合わせて作ることから、
幸せ(四合わせ)を意味するとも
言われています。
 
鞠(まり)、手毬(てまり)
幼子の遊び道具の鞠(手毬)は、
初正月に飾る縁起物であり、
丸々と円満に弾む心豊かな暮らしへの
願いが込められています。
 
扇子、扇(せんす、おうぎ)
その形から「末広」と言われ、
「末広がりに栄える」に通じる
昔からの縁起物です。
 
草履(ぞうり)
早く歩けるようになりますように。
健脚健康になり、働き者になれる
お守りとして。
 
風車(かざぐるま)
厄除け、魔除けの他、何事においても
良い風向きに恵まれ、物事が上手く運びます
ようにとの願いが込められています。
 
でんでん太鼓
「悪を払い、福を呼ぶ」とされており、
「幸せなことが増えますように」という
願いを込めて飾られます。
 

日本三大つるし飾り

「吊るし雛」の風習は全国でも珍しく、
静岡県伊豆稲取の「雛のつるし飾り」、
福岡県柳川市の「さげもん」、
山形県酒田市の「傘福」の3つの地域は、
「日本三大つるし飾り」と呼ばれ、
歴史的な背景や由来・文献等の残る
「吊るし飾り」ゆかりの地とされています。
 
雛のつるし飾り(静岡県伊豆稲取)
 
伊豆半島の東側に位置する稲取温泉は、
「吊るし飾り」の発祥の地と言われています。
例年1月から3月までの長期間、
メイン会場となる「文化公園 雛の館」では、
何と6000個以上もの人形がついた
「ジャンボつるし飾り」が飾られます。
 
「おかたごろ」は、この地方の代表的な
飾り物です。
「おかた」とは、花嫁姿や晴れ着の装いの
人のことで、将来、良い家柄のところへ嫁いで欲しいという娘の幸せを願って飾ります。
 
 

inatorionsen.or.jp

 
さげもん(福岡県柳川市)
 
江戸時代の美しい城下町の風情も色濃く残る
福岡県柳川では、
「吊るし雛」を「さげもん」と呼びます。
毎年1月を過ぎると市内の各所に
柳川地域の伝統工芸品「柳川まり」を下げた
カラフルな「さげもん」が飾られます。
最大の見所は「おひな様水上パレード」です。
 
 

www.city.yanagawa.fukuoka.jp

 
傘福(山形県酒田市)
 
酒田地方の「吊るし雛」は、
ぐるりと布を巡らせた傘の下に
人形を吊り下げるので「傘福」と言います。
 
 
発祥の由来には「傘には魂が宿る」という説、
酒田祭り(山王祭)に登場する亀傘鉾の形から
来ているなど諸説があります。
明治28(1895)年に建てられた老舗料亭で
国の登録有形文化財の「山王くらぶ」には
「傘福」が常設展示されています。
 
 

odecafe.tohoku-epco.co.jp