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五月雨(さみだれ)


「五月雨」(さみだれ)とは、
旧暦五月に降る長雨のことで、
「梅雨」のことです。
 
 

五月雨(さみだれ)

 
「五月雨」(さみだれ)とは、
「五月」とつくので「5月に降る雨」と
考えてしまうかもしれませんが、
この「五月」とは「陰暦5月」のことで、
現在は「新暦6月頃」に当たるため、
「6月に降り続く雨」、
つまり「梅雨」のことを指します。
このことから旧暦の「五月」には、
「五月雨月」(さみだれづき)という
異称もあります。
なお「五月雨」には、
「さつきあめ」という読み方もありますが、
これは意図的にそう読ませる場合が多いので、
振り仮名がついていない場合には、
一般的に「さみだれ」と読みます。
 
「五月雨」の語源
 
「五月雨 (さみだれ)」の「」は、
「皐月 (さつき)」や「早苗 (さなえ)」
「早乙女 (さおとめ)」などと同様に、
田の神」に縁の深い言葉です。
 
 
一方「みだれ」は「水垂れ」で「」のこと。
つまり「五月雨(さみだれ)」とは、
「田の神(さがみ)の水が下垂る(したたる)」で、
田植えの頃の雨」を意味し、
「五月」(さつき)は、田の神が山から下りて来て
田植を司る月でした。 
 
「五月雨」と「梅雨」の違い


「五月雨」は「梅雨」と同義ですが、
「梅雨」が主に「時候」を指しているのに対し、
「五月雨」は「雨そのもの」を指す表現です。
 

五月雨に関連する言葉

五月晴れ(さつきばれ)


「五月晴れ」(さつきばれ)は、
梅雨の間の僅かな晴れ間のことを指します。
「五月」は陰暦5月のことなので、
実際には6月を指します。
 
 
ただ今では、太陽暦の「五月の晴天」の意味で
使う場合が多いようです。
 
五月雲(さつきぐも)
梅雨の時期の薄暗い雲のことを指します。
 
五月闇(さつきやみ)

 
「五月雨」の降り続く梅雨時の暗さを
「五月闇」(さつきやみ)と言います。
昼の雨雲に覆われた暗さと、月の出ない闇夜と
昼にも夜にも使われる夏の季語です。
 
そう言えば、池波正太郎の『鬼平犯科帳』の
単行本第9巻に「五月闇」がありますね。
鬼平の配下の54人の密偵の伊三次さんが
殺されたお話でした。
 
五月雨星(さみだれぼし)


「五月雨星」(さみだれぼし)とは、
牛飼座のα星「アルクトゥールス」です。
「アルクトゥールス」と言われても、
(私も含めて)ピンとこないとは思いますが、
林完次さんの『宙ノ名前』によると、
「梅雨の晴れ間に、ほぼ頭の真上で
 オレンジ色の光を放っている」
星であることから付いた名前だそうです。
 
 
この星は他にも、
オレンジ色の怪しげな光を
天狗(狗賓)の怪異と見立て「狗賓星」(ぐひんぼし)
見える時期が麦の刈入れと重なることから
「麦星」(むぎぼし)
Chinaでは「大角」(だいかく)と呼ぶそうです。
 
五月川(さつきがわ)
梅雨期の頃の、水量の増した濁水が
延々と流れる河川を
「五月川」(さつきがわ)と言います。
 
五月(皐月)波(さつきなみ)
陰暦五月(皐月)頃は、
梅雨時で海が荒れやすいことから、
この時期の荒い波浪のことを
「五月(皐月)波(浪)」と言います。
 
五月(皐月)山(さつきやま)
旧暦五月頃の梅雨の恵みを受けて
樹木が青々と茂った山々のこと
梅雨期の霖雨に濡れそぼり、
霞む山々を言います。
「梅雨の山」(つゆのやま)とも言います。
 
五月富士(さつきふじ)
旧暦五月頃の富士山のこと。
富士山の雪解けは陰暦五月(新暦六月)。
この頃になると残雪も消え、
荒々しい山肌を見せ始め、
夏山らしい雄渾(ゆうこん)な姿となります。
 
その後この「五月富士」は「夏富士」となり、
すっかり雪が消えて、黒々とした
雄大な姿を見せることになります。
富士山の山開きは、山梨県側は7月1日頃から、
静岡県側は7月10日頃からとなります。
 
五月蠅(さばえ)
「五月蠅」(さばえ)とは、
陰暦の五月頃に発生する
「蠅(ハエ)」のことです。
 
ハエは梅雨時期になると活動的になり、
その音が非常にうるさいことから、
明治期に「うるさい」の当て字として
「五月の蠅」という漢字が使われ、
それが一般に広がったと言われています。
 
 
なお「五月蠅」の動詞である
「五月蠅なす」(さばえなす) は、
陰暦五月頃の蠅のように
騒がしく、煩わしい様を言います。
 
五月雨髪(さみだれがみ)
 
湿気を帯びて鬱陶しい女の髪のこと。
髪の毛は湿気が多いと周囲の水分を取り込み、
髪が水分で伸びてしまうことから、
髪がまとまりにくくなるそうです。
梅雨は美容室に行く回数が増えるとも
言われています。
 
五月雨式(さみだれしき)
 
こちらは天候を表す言葉ではなく、
ビジネスシーンでよく使われる言葉です。
 
梅雨時期の「五月雨」(さみだれ)
断続的にだらだらと続く長雨を指すことから、「物事がだらだらと続いていること」または
「そういったやり方」を表現する言葉です。
立場や相手を問わず使えるビジネス表現なので
メールやチャットでも重宝する言葉です。
 
立て続けに連絡をする時には
「五月雨式に申し訳ございません」を使えば、
相手からの返事を待たずに再度連絡をしても
穏便に済ませることが出来ます。
 
成果物を複数回に渡って納品する時に、
「申し訳ありませんが、完成したものから
 五月雨式に送付してもよろしいでしょうか」
と事前に確認をとって
「お手数をおかけしてごめんなさい」
といった気持ちを伝えることも出来ます。
 
 
出来上がったものから
どんどん納品してほしい時にも、
「完成次第、五月雨式に納品して下さい」と
使うことも出来ます。
 
但し、「五月雨式」自体に
「謝罪」の意味は含んでいませんので、
「五月雨式に申し訳ございません」
「五月雨式に~していただければ幸いです」
「大変恐縮ですが、
 五月雨式に~していただきますよう
 お願い申し上げます」などと使えば、
取引先へスマートにお詫びの気持ちやお願いを
伝えることが出来ます。