「きじはじめてなく」
と読みます。
雉のオスがメスを求めて
鳴き始める頃となりました。
雉のメスは全体的に茶褐色をしていますが、
オスは濃い緑色の体で、
長く美麗な羽を持っています。
そして早春の繁殖期になると、
ハート型の赤い顔になり、
「ケーン、ケーン」と鋭く鳴き立て、
翼を激しく震わせて「ドドドド」という
羽音を立てて縄張りを宣言し、
求愛行動をとります。
ところで、オスが羽で大きな音を出すことを
「母衣打ち」(ほろうち)と言います。
色鮮やかなオスが懸命にアピールをしても、
メスがなかなか応じず、素っ気ない様子から、
雉の鳴き声の「けん」と羽音の「ほろろ」で
「けんもほろろ」という慣用句が生まれたのだ
そうです。
なのに子供が生まれると、
子育てはメスが行い、オスは協力しません。
更に雉は一夫多妻のため、
オスは複数のメスと繁殖するそうです。
残念なことに、生物はほぼ雌雄同数なので、
大モテのオス雉がいる一方、
メスに選ばれない、可哀想な独身オス雉が
と~っても多いのです。
「雉」は日本の「国鳥」です。
古名を「キギス」または「キギシ」と言い、
それが転じて「キジ」になったそうです。
<日本の国鳥選定の理由>
- 日本の固有種で、
全国的に通年見られ、
昔から親しみ深い鳥であること - オスの羽色が鮮やかで美しく、
姿が立派 - メスは子供を守る母性愛が強いこと
- 大型で肉の味がよく、
狩猟の対象として好適であること
昔から日本人と関わりの深い鳥として、
「桃太郎」を始め、
色々な物語に登場しています。
また、雉は地震を予知して鳴くと言われ、
古くからその挙動が注目されてきました。
「朝キジが鳴けば雨、
地震が近づけば大声で鳴く」とも
言われています。
これは、足の裏で
震動を敏感に察知出来るからだそうで、
地雷・雷などの時に雉が鳴くことを
「音合わせ」といいます。
また、雉は宮廷や貴族の間では
美味なるものとして好まれ、
雉子の切身を焼いて熱燗の清酒をかけた
「御雉子 (おきじ)=雉子酒」は、
天皇が正月の祝いに用いたとされています。
狩人の 霞にたどる 春の日を
妻とふきじの 声に立つらむ
妻とふきじの 声に立つらむ
藤原定家