うまずたゆまず

コツコツと

七十二侯「雷乃収声」

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「かみなりすなわちこえをおさむ」
と読みます。
 
夏の間に鳴り響いた雷が鳴らなくなる頃。
春分」の末侯「雷乃発声」と対になっていて、
春分」の頃から鳴り始めて夏の間鳴り響いた
雷が声を収めるようになります。
 
 

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ところで「雷」は夏の季語なのですが、
「稲妻」となると秋の季語になります。
どうしてでしょうか?
それは稲が実る時期と関係があるからだと
言われています。
 
「雷」は大気中での大規模な放電現象で、
その際、普通には起こらない化学反応、
例えば「窒素分子」の分解も起こります。
 
「窒素原子」は大気の8割を占める
「窒素ガス」の形で
自然界に大量に存在しています。
 
と同時に、生物の体を構成する
タンパク質の基本要素「アミノ酸」には
必ず含まれている元素なのですが、
「窒素ガス」の分子は
極めて安定しているので、
植物はそれを直接吸収することは出来ません。
 
ところが「雷」によって
通常の環境ではほぼ起こることのない
窒素分子の活性化により
「窒素化合物」が生じ、
その「窒素化合物」が
雨によって「硝酸」となり地中に溶け、
作物の生育にいい影響を与えます。
雷の放電、つまり「稲妻」は
もう一つの自然産の「窒素肥料」なのです。
 
昔の人は科学的な知識はなくても、
雷光が稲穂によい影響を与えることを
経験的に知っていたようです。
雷光は稲を実らせる「稲の夫」となりました。
 
昔は男女関係なく
「妻」「夫」ともに「つま」と言いましたが、
現代では「つま」という語に
「妻」が用いられるため、
「稲妻」になったと考えられています。  
 
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