うまずたゆまず

コツコツと

七十二候「菖蒲華」

「あやめはなさく」と読みます。
あやめの花が美しく咲き始める頃です。
 

f:id:linderabella:20200722104942j:plain

 

この「菖蒲」(あやめ)は、
端午の節供に用いる「菖蒲」(しょうぶ)ではなく、
「花菖蒲」(はなしょうぶ)のことです。
 
「花菖蒲」(はなしょうぶ)は、江戸時代に
園芸植物として盛んに改良されて、多くの品種が生まれました。
 
大輪から小輪、多彩な色や形と、
様々な種類を持つ「花菖蒲」は
しっとりとした風情が魅力で人気を博し、
江戸の堀切周辺(現在の東京都葛飾区堀切周辺)には、
様々な品種を集めた菖蒲園が沢山出来ました。
 

 
 
「しょうぶ」と「あやめ」は
どちらも「菖蒲」と同一の漢字表記になりますが、
全く別の植物です。
 
端午の節句に飾る「しょうぶ」はサトイモ科の多年草で、
黄緑色の小花が密集してガマに似た花が咲かせますが、
「あやめ」とは違って目立つ花ではなく
花が咲いているとすらなかなか気付かれません。
但し、芳香を持つ精油成分を含んでいるため、
爽やかな良い香りがします。

 
一方「あやめ」はアヤメ科の多年草で、
花菖蒲を含めたアヤメ科全体の総称でもあります。

 
その「しょうぶ」も、昔は「あやめ」と呼ばれていたそうです。
「あやめ」も「しょうぶ」も「あやめ」でした。
但し、どちらも葉はそっくりなのに異なる花を咲かせることから、
この葉がそっくりな2つの植物を区別すべく、
端午の節句に飾る「しょうぶ」を「あやめ草」、
「花菖蒲」の方は「花あやめ」と呼ぶことにしました。
 
それが後に、美しい花を咲かせる「花あやめ」が目立ったことから、
「あやめ」と言った場合は、現在の「あやめ」を指すようになり、
一方「あやめ草」の方は「しょうぶ」と呼ばれるようになりました。
ただ漢字の「菖蒲」の読み方は2通りのままでした。
 
 
 ところで、あやめ、杜若、そして花菖蒲・・・、
これらは全てアヤメ科の多年草で、姿かたちがよく似ています。
「何れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」ということわざがあります。
これは、あやめと杜若はよく似ていて区別がつきにくいところから、
どちらも優れていて優劣がつけにくいという意味です。
これら3つの花を正しく見分けられるでしょうか?
実は見分けるための方法があります。
 
見分け方のポイント、
1つ目は「花弁の根元部分」です。
「あやめ」は網目模様、
「杜若」は白い筋、「花菖蒲」には黄色い筋が入っています。
2つ目は「生えている場所」です。
「あやめ」は山野に生え、水がなくても生育します。
一方、「杜若」は水の中に生えています。
「花菖蒲」はちょうど中間で、
水辺などの湿ったところに群生しています。
 
 

菖蒲(しょうぶ)[サトイモ科]

  
  • 葉幅が細くて固く、つやがあり、香りが強い
  • 葉の基部は淡い紅色を帯びている
  • 池沼やため池など水辺に群生
  • 花は淡い黄緑色の楕円形
  • 5〜7月に花が咲く
 

菖蒲、文目、綾目(あやめ)[アヤメ科]

  

  • 花びらの中央に網目模様
  • 葉脈は目立たず、細長い
  • 畑や草原など乾燥した場所に群生
  • 5月上旬に花が咲く
 

杜若(かきつばた)[アヤメ科]

  

  • 花びらの中央が真白な剣型の模様
  • 葉脈が目立たず、葉の幅が広く柔らかい
  • 湿地に群生
  • 5月中旬に花が咲く

  

     尾形光琳の『燕子花屏風図』
 

花菖蒲(はなしょうぶ)[アヤメ科]

  

  • 花びらの根元に細長い黄色の模様がある
  • 葉は面に1本、裏に2本の葉脈がある
  • 乾燥地や湿地に群生
  • 花色は紫の他、ピンクや白、ブルーもある
  • 5月中旬〜6月下旬に花が咲く