七十二候もとうとう最後、「鶏始乳」です。
「にわとりはじめてとやにつく」
と読みます。
春の気配を感じた鶏(ニワトリ)が
卵を産み始める頃となりました。
「とや」は「鶏屋」のことで、
鶏を飼っている小屋のことです。
そして「とやにつく」は、鶏が産卵のために
卵を抱いて巣に籠ることを意味しています。
「鳥屋に就く」(とやにつく)とも書きます。

現代では、「養鶏」(ようけい) が中心で、
季節を問わず店頭に並ぶため、
旬の感覚は希薄ですが、
本来はニワトリも
自然の中で生きている他の鳥類と同様に、
春から初夏にかけて産卵を行ない、
卵はその時期にしか生まれない貴重品でした。

この時季の卵は、
母体の中でゆっくり時間をかけて成熟するため、
栄養価が高くなると言われています。

但し、これは「有精卵」の場合のみで、
「無精卵」は一年中、味わいや質に
変化はありません。

ところで現在、スーパーなどに
大量に並んでいる卵は「無精卵」です。
「無精卵」は受精していない卵なので、
どんなに温めてもヒヨコが生まれる
可能性はありません。

なぜオスがいなくても
「卵 (無精卵) 」が生まれるのか不思議ですが、
鶏が卵を産むこと(「産卵」)を
私達人間は、「出産」と比較して
考えてしまいがちですが、
鶏の「産卵」は人間の「排卵」と同じこと
なのです。
人間の生理が月周期であるのに対し、
鳥類は日周期なので、整った条件下であれば
オスがいなくても卵を産むことが出来ます。

なお、「有精卵」と「無精卵」には、
成分的な違いはほぼなく、
明確な優位性は認められていません。
確かに「有精卵」の方が賞味期限は短いですがかといって品質が急激に劣化する
可能性は低いため、
賞味期限もほぼ変わらないと思って
いいでしょう。

味や栄養面の違いを大きく左右するのは、
鶏が飼われている「環境」や
与えられる「餌」や「水」などの違いです。
平飼い・放し飼いでストレスの少ない環境で育った鶏の卵が「有精卵」で、
多くの場合ケージ飼いの鶏の卵が
「無精卵」です。

「ケージ飼い」だからと言って、
ストレスが重過ぎる訳ではありません。
「ケージ飼い」の場合、
人間の手で環境が整えられているため
平飼い・放し飼いで問題が起こりやすい
衛生面での心配が少ないため
安全性が高いと言えます。

またエサ・水に強くこだわりをもった
養鶏場の卵なら、
「有精卵」と「無精卵」の味に違いは出にくく
美味しくいただくことが出来ます。
「新鮮」「安全」「美味しい」卵を
年間を通して、安価に買えるのが
「無精卵」なのです。
