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7/9・10 浅草寺の「ほおずき市」

 
梅雨明けの頃、東京を中心に全国各地で、
「ほおずき市」が開かれます。
 
「ほおずき市」の発祥の地である
東京都港区芝にある「愛宕神社」では、
6月23日と6月24日の2日間、
千日詣り・ほおづき縁日」が行われます。
 
 

「ほおずき市」とは

 
「ほおずき市」と言うと、
東京・浅草の「浅草寺」が有名ですが、
最初に始めたのは東京・芝の「愛宕神社」で、
どちらも「四万六千日」(しまんろくせんにち)
縁日がきっかけとなっています。
 
毎月18日は「観音様の縁日」
「縁日」は、正式には「有縁日」(うえんにち)「結縁日」(けつえんにち)と言って、
神仏の降誕、降臨、示現、誓願などの
(ゆかり)のある日を言います。
そしてその日に神社や寺院をお参りすると、
普段に勝る御利益があると言われています。
 
「観音様の縁日」は毎月18日です。
この日に参拝すると、
「千日分参拝したのと同じだけの
 御利益が得られる」と言われたことから、
「千日詣」(せんにちもうで)とも言われます。
 
功徳日

 
室町時代末期頃(16世紀半ば)からは、
毎月1回新たに
「功徳日」(くどくにち)という縁日が設けられ、「功徳日」の参拝は、
何百日、何千日分にも相当するとされました。
そのため人々は「功徳日」にこぞって
参拝するようになりました。
 
江戸時代になると、元禄時代の頃より
7月10日を「功徳日」(くどくにち)とし、
この日にお参りをすると
「四万六千日(約126年)分のご利益がある」と
言われるようになり、
多くの人々がこぞって参拝に
訪れるようになりました。
そうなると、参拝客目当ての
「市」(いち)が立ち、
見せ物小屋が並び、
夜店が出るようになりました。
「ほおずき市」もそんな市のひとつです。
 
 
因みに、この「四万六千」という数字は、
白米一升分が四万六千粒で、
「一生(一升)食いはぐれることなく、
 息災に過ごせる」ことに由来しています。
 
 
愛宕神社の「ほおずき市 千日詣り」
 
「ほおずき市」と言えば、現在では
東京・浅草の「浅草寺」が有名ですが、
その発祥は東京・芝の愛宕山に始まります。
 

www.atago-jinja.com

 
江戸の昔、愛宕神社では、
毎年6月23・24日の両日、
「千日詣」が行われていました。
千日分の御利益があるということから、
この日は大勢の参拝客で賑わいました。
 
明和年間(1764~72)に、
境内で自生しているまだ青いほおずきを
「御夢想の虫の薬」と名付け、
参拝土産として売る露店が現れます。
これが大評判になり、
瞬くうちに参道には、「ほおずき」の露店が
立ち並ぶようになりました。
「ほおずき」を煎じて飲むと、
子供の疳の虫(かんのむし)
女性の癪(しゃく)によく効くという
触れ込みでした。
 
愛宕神社の「ほおづき市」は、
暦が変わった後も昔と同じ
「千日詣」のある6月23・24日に行われ、
この日に社殿の前にしつらえた
「茅の輪」(ちのわ)を潜ってお参りすると、
千日分の御利益がいただけると信仰されて
います。
 

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浅草寺の「ほおずき市」

 
これが「四万六千日しまんろくせんにち」の本家である
浅草寺にも波及し、
次第に愛宕神社をしのぐようになりました。
 
更に、7月10日に一番乗りで
参拝したいという熱心な人が増え、
前日の9日から意気込んだ人々が
寺を訪れるようになったことから、
毎年7月9日と7月10日の両日が、
浅草寺の「四万六千日しまんろくせんにち」の縁日とされ、
今日に至ります。
 
 
「ほおずき市」には、
毎年200もの露店が境内に軒を連ね、
威勢のよいかけ声とともに、
ほおずきの鉢が売られています。
 
 
多くのほおずきの鉢には
風鈴がついているのが見られます。
これは暑さを和らげるという目的の他に、
澄んだ音色で邪気払いをするという
意味があるそうです。
 

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鬼灯(ほおずき)

 
鬼灯(ほおずき)はナス科の植物です。
ほおずきの赤い部分は、
「咢」(がく)が大きく膨らんだものです。
「咢」(がく)とは、花の最も外側にあって、
花びらを支える部分のことで、
葉が変化したものです。
 
 
ほおずきは薄クリーム色の花が咲き終わると、
「咢」(がく)が発達して大きくなり、
果実を包み込むように袋状になっていきます。
そして包み込んだ​果実が熟すのと同じように、
「咢」(がく)も赤・オレンジ色になっていく
のだそうです。
 
名前の由来
 
名前の由来には、様々な説があるようです。
代表的なものとしては、次のようなものが
あります。
  • ほおずきが赤く染まることから、
    頬を連想させることから
  • ほおずきを鳴らして遊ぶ際に、
    頬を突き出す様子「頬突き」から
  • 「ホホ」というカメムシが
    付きやすい植物のため、
    「ホホ付き(ホオ付き)」から
  • 実を包んでいる部分が赤く、
    火が付いて見えることから
    「火火着」(ほほつき)
 
鬼灯提灯
 
「ほおずき」は、
日本で昔から栽培されている植物です。
『古事記』や『日本書紀』には、
八岐大蛇(やまたのおろち)の瞳が赤いことを
「あかかがち」(=ほおずき)を用いて
表現しています。
 
 
 
彼の目は赤加賀智の如くして、
身一つに八頭八尾有り。
亦其の身に蘿ち檜椙と生ひ、
其の長は谿八谷岐八尾を度りて、
其の腹を見れば、悉に常に血爛れたり。
その目は赤かがち(ほおづき)のようで、
ひとつの身体に頭が8つ、尾が8つあります。
その身体にはコケやヒノキやスギが生え、
その長さは8つの谷、8つの山に渡り、
その腹を見ると一面がいつも血にまみれて
ただれています
 
その「鬼灯」(ほおずき)は、
ふっくらした形と炎の様なオレンジ色から、
「鬼灯」の文字からも分かるように、
お盆に帰ってくる御先祖様や精霊が迷わずに帰って来れるように
灯りとしての道標になる様に
提灯(ちょうちん)に見立てられ、
「鬼灯提灯」(ほおずきちょうちん)が使われ、
また仏壇や盆棚、精霊棚に飾られてきました。
 
 
盆踊りや夏祭りで用いられる提灯も
同じ意味合いを持ち、道標としての
(あか)りとして灯(とも)されます。
御先祖様は体を持っていないため
空洞を探し、お盆の4日間は鬼灯の空洞の中に
身を宿して過ごすと言われています。
 
薬用
「ほおずき」は、平安時代から
薬として利用されてきた歴史を持ちます。
当時の薬草辞典『本草和名』の中にも、
薬草としての効能が記録されています。
漢方医学では、咳止めや解熱、利尿の薬として
熱や黄疸の時に用いられています。
子供の夜泣きやひきつけ、
大人のお腹や胸の痛みを和らげる
効能があるとされていました。
 
Chinaでは、根が「酸漿」(さんしょう)という
生薬名で知られています。
 
鬼灯の根には、
子宮を収縮させる作用があり、
妊娠中に食べてしまうと
流産を引き起こす恐れもあります。
これは、株全体に含まれる
「アルカロイド」の毒性によるもので、
江戸時代には堕胎剤として使われました。
 
食用
「ほおずき」は、ヨーロッパなどでは
「食用」として栽培されてきました。
中の丸い実を食べるのですが、
英語名「Strawberry Tomato」にあるように
まさにベリー類にも似た味わいだそうです。
 
 
日本でもここ数年、珍しいフルーツとして
徐々に知られるようになり、
栽培を本格的に始めた地方も
増えてきているようで、
「ストロベリートマト」
「フルーツホオズキ」
「ほおずきトマト」
「オレンジチェリー」など、
産地や生産者によって様々な名称で
出荷されています。
 
「食用ほおずき」は、
「イノシトール」という
ビタミンBの1種を豊富に含み、
体内に脂肪を溜め込まないようにする
働きがあるとされています。
 

赤とうもろこし

 
浅草寺では、
「ほおずき市」でほおずきが売られる前、
文化年間(1804~1818年)頃の
「四万六千日」の縁日では、
雷除けの「赤とうもろこし」が
売られていたと言います。
 
 
明治初期には、
「赤とうもろこし」が不作で
売ることが出来なかったため、
浅草寺では雷除けの護符を
「赤とうもろこし」の代理で
配布したこともあったようです。
 
 
この風習は次第にすたれ、
明治の終わり頃には、
ほうずきを売る市に変わり、
やがて芝の愛宕神社をしのぐ盛大なものに
なっていったようです。
 

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