「熱中症」が起こりやすいのは、
太陽が照りつける暑い日だけとは限りません。
実は梅雨時も「熱中症」に注意が必要です。
東京消防庁のまとめでは、
令和4(2022)年の「熱中症」による
月毎の救急搬送者数は、
6月が1870人、7月が2434人、8月の1483人と
湿度が高い時期に、
「熱中症」が多くなっています。
「熱中症」とは
「熱中症」は、気温や湿度が高い環境下で
体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、
体温や循環の調節機能が乱れたりすることで
生じる障害の総称です。
梅雨時期に
「熱中症」が多い理由
梅雨の時期特有の高湿度な環境下で発症する
「熱中症」のことを
「梅雨型熱中症」と言います。
暑さに慣れていない時期に、
日常生活の中で自分で気がつかないうちに
脱水症状と体温上昇が進んでしまうのが特徴で、
梅雨の時期に重なることから
「梅雨型熱中症」と呼ばれています。
湿度が高い
人は体温が上昇すると、
体の表面から空気中へ熱を逃がしたり、
汗が蒸発する時の気化熱が体の熱を奪って、
体温を下げる働きをします。
ところが湿度が高くなると、
気化熱による熱の放散が少なくなって、
体内で作られた熱を
外に逃がすことが出来なくなるため、
体の中に熱がこもって体温を下げにくくなり、
そのため「熱中症」のリスクが高ってしまうの
です。
具体的には、湿度が70%を超えてくると
汗が非常に出にくくなり、
汗も蒸発しにくくなるため体に熱がこもり、
更に喉の渇きも感じにくくなります。
そのため気がつかないうちに
「体温の上昇」と「脱水症状」が進行し、
「熱中症」のリスクが高まります。
「気温」「湿度」「日差しの強さ」から
熱中症のリスクを算出する
「暑さ指数」を見てみると、
気温が26℃とそれほど暑くなくても、
湿度が90%を超えると
「激しい運動は中止」が推奨される
「厳重警戒」となっています。
WBGT値早見表
【WBGT値】
注意 25℃未満 |
警戒 25-28℃ |
厳重警戒 28-31℃ |
危険 31℃以上 |
急に気温が上がる
梅雨時は、身体がまたまだ
暑さに慣れていないため、
体温調節をする準備が不十分となっているのも
熱中症を引き起こす原因の一つです。
特に梅雨の晴れ間や梅雨明けの時期は
要注意です。
「梅雨型熱中症」になりやすい人
高齢者
体温調節機能が低下し、
暑さや喉の渇きを感じにくくなるため。
乳幼児
体温調節機能が未発達で、
汗をかきやすい一方、
水分補給が上手く出来ないため。
肥満の方
皮下脂肪が多く、熱がこもりやすいため、
また重い身体を動かすため
より多くの熱が発生するためです。
持病のある方
糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、
精神神経系の疾患、広範囲の皮膚疾患で
治療を受けている人は、
体温調節機能が低下していたり、
服用薬の影響で
脱水になりやすいこともあるため、
熱中症になりやすいことがわかっています。
また、以前熱中症になったことのある人も
特に注意しておきましょう。
体調の悪い方
寝不足や疲れが溜まって体調が悪い時や、
二日酔いや下痢で体内の水分が減っている時は、
体温調節機能が普段通りに働かないため、
熱中症を起こす危険性が高くなります。
体力不足の人
体力や持久力の低い人も
暑さに弱いため注意が必要です。
厚着をしている方
衣服内の温度が上昇し、
体内の熱を逃がしにくくなるため。
エアコンを使わない環境にいる方
室温が高い状態が続くと、
体温が上昇しやすくなるため。
「梅雨型熱中症」の兆候
最初に気がつくサインは「脱水症状」です。
喉の渇きを感じにくい高齢者の中には、
疲労とか膝などの痛みが増すといった
サインが出ることもあります。
人によって異なるのですが、
大体湿度が60%を超えてくると、
汗がジトジトして、蒸発しにくくなります。
いつもより汗が乾きにくいなと思ったら
注意して下さい。
「梅雨型熱中症」の予防策
湿度をチェックする
梅雨の時期は湿度の高い日が多くなりますので
気温だけでなく「湿度」も確認して、
冷房や除湿などで室温を適切に調節しましょう。
特にキッチンや浴室などの、
湿度が高くなりやすい場所は
こまめに換気をしましょう。
エアコンは「除湿」で
エアコンは「除湿」にして使いましょう。
また「冷房の設定温度は28度に」という
呼びかけがありますが、
これはあくまでも目安です。
人それぞれ室温の感じ方は違うので、
快適に過ごせる温度、
寝る前なら寝付きやすい温度が目安です。
扇風機やサーキュレーターを使うと
より効果的です。
汗を上手にかく
暑さにスムーズに体を慣らしていくためにも、
汗をかきやすい身体づくりをしましょう。
前後に水分補給を忘れずに!
シャワーで済ませず、湯船に浸かりましょう。
但し、片頭痛の症状がある場合は、
血流が盛んになると悪化する場合があるので、
長湯しないなど注意して下さい。
42℃くらいのお湯に、踝まで足を浸ける
「足湯」もおススメです。
時間は7分から8分くらいと短めでOK。
足湯は、冷え、むくみ改善に効果的で
時間がない時にもおススメ出来る方法です。
汗ばむ程度の運動を無理せずに行いましょう。
家の階段の昇り降りや
掃除などの家事を頑張って
ジワッと汗をかくのもいいそうです。
特にふくらはぎの運動が大切とのことで、
座ったままで踵を上げ下げして動かしても
いいそうです
上着で体温調節
身体を冷やさないことも対策のひとつです。
すぐに体温調節が出来るように、
薄手のカーディガン・ジャケット・ストールなど、
脱ぎ着しやすい羽織物を1枚用意しましょう。
身体を温める食事
湿度が高くなると、冷たい飲み物を摂ったり、
食欲不振からサッパリした冷たい食べ物を
食べがてしまいがちになりますが、
身体が冷えるので余りおススメはできません。
食事の最初に、味噌汁やスープ、
熱いお茶などの温かい飲み物を摂ると、
食欲増進にも繋がります。
適度な水分・ミネラル補給
適度な水分・ミネラル補給が大事です。
喉が渇いてからでは遅いので、
意識して早め早めに飲みましょう。
少なくとも、
起きた時や入浴前、寝る時には200cc、
暑い日は1時間おきに100cc
摂るといいそうです。
質の良い睡眠
体温のコントロールを行う
自律神経を整えるためには、
質の良い睡眠を取ることが重要です。
就寝前はパソコンやスマートフォンの光を
見るのは控えて、
部屋を少しずつ暗くして就寝しましょう。
起床時にカーテンを開けて太陽の光を浴びる、
熱いシャワーを短時間だけ浴びるなどして
交感神経とのスイッチングを促すことも、
生活リズムが整い、質の良い睡眠に繋がります。
「マスク熱中症」にご注意!
マスクをすると、通常に比べ呼吸が妨げられ、
体熱を放散しにくくなります。
また口の渇きを感じにくくなるため、
水分補給が不十分になり、気づかないうちに
脱水が進む危険性もあります。
特に子供において顕著で、
更に、子供は口呼吸をすることが多く、
呼吸数も多いため、
「熱中症」を招く危険性が更に高くなります。
暑い時には、マスクを外しませんか?
「熱中症」の種類と病型
「熱中症」は、原因や症状によって
いくつかの病型(種類)に分けられています。
主な病型は、「熱失神」「熱けいれん」
「熱疲労」「熱射病」の4種類があります。
熱失神
炎天下にじっとしていたり、
立ち上がったりした時、運動後などに、
皮膚血流の著しい増加と多量の発汗とにより、
相対的に脳への血流が
一時的に減少することにより生ずる
立ちくらみのことを言います。
症状 |
・めまい
・一時的な失神
・顔面蒼白
・脈は速くて弱くなる
|
熱けいれん
大量の汗をかいた際に、
塩分が不足することにより生じる
筋肉のこむら返りや筋肉の痛みのことです。
症状 |
・筋肉痛
・手足がつる
・筋肉が痙攣する
|
熱疲労
脱水が進行して、全身のだるさや
集中力の低下した状態を言い、
放置しておくと、
致命的な「熱射病」に至ります。
症状 |
・強い口の渇き
・倦怠感
・強い疲労感
・頭痛
・めまい
・興奮
・高体温
・昏睡
|
熱射病
「熱疲労」が重症化し、
40度を超えるような体温上昇が継続し、
発汗が止まり皮膚は乾燥。
体内で血液が凝固し、
全身の臓器に障害が起こり、
死に至ることもある危険な状態です。
「呼び掛けや刺激に対する反応がおかしい」、「応えない(意識障害がある)」時には
誤って水分が気道に流れ込む可能性があるため、無理に飲ませることは避けて下さい。
「吐き気を訴える」または「吐く」という症状がある時は、口から水分を摂らせることは適切ではないため、医療機関での点滴等の処置が必要となります。
症状 |
・40℃以上の高体温
・発汗停止
・頻脈
・血圧上昇・
・意識障害
・呼びかけや刺激への反応が鈍い
・言動が不自然
・ふらつく
・昏睡
|
熱中症になったら
「梅雨型熱中症」の治療の基本は、
一般的な「熱中症」と同様です。
軽症の場合は、涼しい場所で休んで、
水分と塩分を補給するだけで
症状が改善することがほとんどです。
経口補水液やスポーツドリンクを飲むのも
効果的です。
最初は軽症でも、放置するとあっという間に
重症化することもあるため、油断は禁物です。
「熱が高くないから大丈夫」と思い込まず、
他の体の症状をよく観察しましょう。
そして必要に応じて
すぐ医療機関に連れて行きましょう。
1.涼しい場所へ移動させる
風通しのよい日陰など涼しい場所で
安静にさせる。
冷房の部屋も効果的です。
2.衣服を緩めて足を少し高くして寝かせる
3.身体を冷却する
・うちわなどであおぐ
・水道に繋いだホースで全身に水をかけ
続ける「水道水散布法」をする
・氷水の洗面器やバケツで濡らした
タオルをたくさん用意し、
全身にのせて、次々に取り換える
・扇風機も併用
・氷やアイスパックなどを
頚、腋の下、脚の付け根などに当てて
追加的に冷やす
4.意識が正常な場合には、水分と塩分を補給
・スポーツドリンクに塩を足したものや、
生理食塩水(0.9%食塩水)など
濃い目の食塩水で水分と塩分を補給する
・「呼び掛けや刺激に対する反応がおかしい」
「応えない(意識障害がある)」時には、
誤って水分が気道に流れ込む可能性がある
ため、無理に飲ませることは避ける
・「吐き気を訴える」または「吐く」症状が
ある時は、口から水分を摂らせることは
適切ではない
⇩
医療機関での点滴等の処置が必要
5.意識がなかったり、反応がおかしい場合は
速やかに救急車を呼ぶ