
ほおずき
「ほおずき」は、
赤い提灯がぶら下がったような姿が可愛らしく
古くから親しまれてきたナス科の多年草です。
あの赤い提灯の様に見える部分は、
花びらを支える部分「萼」(がく) が
大きく膨らんだものです。
「ほおずき」は花が咲き終わると、
6月末から7月にかけて黄色い花を咲かせた後、
六角の「萼」(がく) の部分が発達して大きくなり、
果実を包み込むように袋状になっていきます。
そして包み込んだ果実が熟すのと同じように、
「萼」(がく) も赤・オレンジ色になっていくのだ
そうです。
「ほおずき」という名前
名前の由来
「ほおずき」の名前の由来・語源には
諸説あるようです。
・「ほおずき」が赤く染まることから、
「頬」を連想させるという説
「頬」を連想させるという説
・膨らんだ様子が「頬」を連想させることと、
「ほおずき」を鳴らして遊ぶ際に
「頬」を突き出しているからという説
「ほおずき」を鳴らして遊ぶ際に
「頬」を突き出しているからという説
・「ホホ(ホオ)」という虫が
付きやすい植物のため
「ホホ付き(ホオ付き)」となり、
「ほおずき」になったという説
付きやすい植物のため
「ホホ付き(ホオ付き)」となり、
「ほおずき」になったという説
・実を包んでいる部分が赤く、
火が付いて見えることから
「火火着(ほほつき)」となった説
火が付いて見えることから
「火火着(ほほつき)」となった説
ほおずきの古名
「カガチ (輝血)」「ヌカズキ (奴加豆支)」
また「ほおずき」は、かつては
「カガチ (輝血)」とか「ヌカズキ (奴加豆支)」と
呼ばれていたそうです。
『古事記』には、
「彼が目は赤かがち如なして、
身一つに頭かしら八つ、尾八つ有り」
(八岐大蛇 (やまたのおろち) の目は
アカカガチ (赤加賀智/赤輝血) のようだ…)
という記述があります。
血走った目を爛々と輝かせる八岐大蛇の目が、
赤く熟した「ほおずき」の実を連想させた
のでしょう。
一方「ヌカズキ (奴加豆支)」は
平安時代の呼び名です。
『枕草子』の中で清少納言は
「ぬかづきなどいふ物のやうにだにあれかし。されど、なほ夕顔といふ名ばかりはをかし。」
と記しています。
これは「夕顔の実がほおずきのようだったら
よかったのに、名前だけは趣があるけど」と、
夕顔の実が美しくないことを残念がり、
「ほおずき」のように立派なものであれば
良かったのにと願う気持ちを表しています。
ほおずき・ほうずき・ほおづき?
「ほおずき」「ほうずき」「ほおづき」など、
様々な表記がありますが、
一般的に使われるのは「ほおずき」です。
ほおずきを漢字
「鬼灯」「鬼燈」「酸漿」
「鬼灯」の漢字の由来は、
赤い実(身を包んでいる萼)の見た目が
提灯に似ていたことからとされています。
「鬼」は亡くなった人のことで、
「灯」は提灯の意味です。
「酸漿」は、「ほおずき」とも読みますが、
「さんしょう」とも読まれています。
「酸漿」(さんしょう) は生薬名で使用されます。
生薬としては、全草を「酸漿」(さんしょう)、
根茎を「酸漿根」(さんしょうこん) として扱われ、
鎮咳、解熱、利尿作用があり、
咳、発熱、喉の痛み、むくみなどに
効き目があるとされています。
「法月」は、お花屋さんやホームセンターに
陳列される時に読みやすいようにという理由で
使われることの多い表記です。
縁起物
「ほおずき」は縁起物として知られています。
特に、「無病息災」「魔除け」「金運アップ」
などの効果があるとされています。
また、お盆の時期には、ご先祖様を迎える
提灯の役割を果たすとも言われています。
無病息災
ほおずきの赤い実は、夏負けや疫病から
身を守る力があると信じられてきました。
魔除け
ほおずきの赤い色や、提灯のような形が、
悪いものを寄せ付けない力を持つとされて
います。
金運アップ
ほおずきを玄関に飾ることで、
良い運気を呼び込み、金運を高める効果がある
とも言われています。
お盆の飾り
お盆の時期には、御先祖様が帰ってくる
目印として、また、提灯の代わりに飾られます
品種
「ほおずき」の品種には、大きく、
「観賞用」と「食用」の2つがあります。
観賞用
日本では「観賞用」のイメージが強いです。
なお生薬に用いられるのは、
「観賞用」のほおずきです。
平安時代の頃から
「生薬」として利用されてきました。、
江戸時代には「生薬」だけでなく、
子供の玩具として盛んに愛用されたと
言われています。
食用の品種
淡いオレンジ色のミニトマトのような
「食用ほおずき」は、中南米が原産で、
その種類は100以上もあります。食用ホオズキは、特にフランスやイタリアなどヨーロッパで盛んに栽培され、美容と健康に良いフルーツとして知られています。
日本でも、ある地域で山に 「ほおずき」 を植え、
山仕事の合間に喉の渇きを潤していたという
話もありますが、一般的に日本で栽培が
始まったのは平成に入ってからです。
「オレンジチェリー」「ゴールデンベリー」
「ストロベリートマト」などの名前のついた
これらの「食用ほおずき」は、
お洒落な見た目とマンゴーのような甘みと
上品な香りが特徴です。
デザートとして、ジャムやパウンドケーキ、
アイスクリームなどにも加工されています。
また「食用ほおずき」は
生薬としては使われてはいませんが、
栄養価も高く健康と美容に効果のある
スーパーフードとして脚光を浴びています。
ビタミンA、ビタミンCやビタミンB群、
カロテン、鉄分を豊富に含むだけでなく、
抗脂肪肝ビタミンと呼ばれる「イノシトール」も
豊富に含んでいるので、脂肪肝や動脈硬化を
予防したい人におススメです。
また最近の研究では、多糖類による抗酸化活性、
ACE阻害による血圧降下作用、
メラニン生成を抑制することによる美白効果、
シワ・たるみの改善効果などがあることが
報告されています。
ほおずきの楽しみ方
「ほおずき」は古くから
婦人や子供の健康を守る薬用ともされていたので、こうした遊びも生まれたのでしょう。
実の大きい「丹波ほおずき」がもてはやされ、 江戸時代にはそれを売り歩く「ほおずき売り」の姿もありました。
鑑賞
観賞用としては、花瓶に生けたり、
お盆に飾ったり、玄関に吊るしたり、
鉢植えで育てて成長を楽しむことも出来ます。
緑色からだんだん赤くなっていく様子を
注目してみて下さい。
季節の移ろいを、感じることが出来ると
思います。
透かしほおずき
ほおずきのドライフラワー
スケルトンほおずき
ほおずきの膨らんだ袋をよく観察すると、
筋状や網目状に通る筋「葉脈」があります。
「葉脈」だけになったほおずきの中に、
ランプや小さな人形が入った雑貨を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この「透かしほおずき」を作るのは、簡単。
1週間程水に浸けておくと、
朱色の萼の部分が徐々にふやけて、
腐ってきます。
そしたら腐った部分を洗い流しながら、
歯の柔らかい歯ブラシなどで
残った繊維を優しくこすり落として、
しっかり乾かしたら完成です。
ほおずき風船、
ほおずき笛
「ほおずき」の熟した実を手で揉み、
中身を取り出した後、風船のように膨らませ、
音を鳴らしたり、浮かべたりして遊びます。
「ほおずき」を吹き鳴らす遊びは
古くからあって、
平安時代の宮中でも親しまれていたようです。
藤原道長の栄華を描いた『栄花物語』には、
「ほおずき」を膨らませて遊ぶ様子が
描かれています。
「ほおずき風船」「ほおずき笛」の作り方は、
次の通り。
① 熟した実を選んで、袋を破きます。
② 実を手で丁寧に揉んで柔らかくします。
回しながら、 中身(種や汁)を
取り出します。
③ クルクルと芯を回しながら、
中身を取り出し、息を吹き込むと、
「ほおずきの風船」が出来ます。
④ ③の「ほおずき風船」の穴を下唇に当て、
前歯で軽く噛んで音を鳴らして遊びます。