田植花(たうえばな)
「田植え」の頃に咲く花を
「田植花」(たうえばな) とか「田植草」(たうえぐさ)
または「早乙女花」(さおとめばな) と言います。
花は、農作業のスケジュールを把握する上で
重要な役割を果たしているのですが、
「田植花」は「田植え」の目安となる花で、
花を鑑賞しながら「田植え」をすることも、
農村の文化の一部です。
「田植花」の種類
地域によって「田植花」の花の種類は異なり、
各地で様々な花が
「田植え」の時期を担っています。
谷空木(たにうつぎ)

「谷空木」(たにうつぎ) は、
スイカズラ科タニウツギ属の落葉低木で、
日本海側の山地に自生している木です。
谷間に多く生えていることから、
「谷空木」(たにうつぎ) と言います。
5月~6月に、葉の付け根に
ピンク色の3cm程の漏斗形の花が並び、
枝の曲線に沿って群れ咲く様子は優雅です。
田植えの時期が開花期と重なる地方では
「田植え花」とも呼ばれています。
漏斗形の花を逆さにして水面に浮かべた姿を
菅笠を被って田植えをする早乙女に見立て、
「早乙女花」(さおとめばな) とも呼ばれます。

「空木」(うつぎ) や「箱根空木」(はこねうつぎ) も
田植えの時期に咲くことから、
「田植花」とする地方もあります。
山吹(やまぶき)

黄色い花が特徴の「山吹」(やまぶき) も
田植えの時期に花を咲かせることから
「田植花」と呼ばれています。
躑躅(つつじ)

ツツジ科ツツジ属の常緑低木「(皐月) 躑躅」は
他のツツジより開花が一ヶ月程度遅く、
旧暦5月 (新暦6月) 頃の田植えの時期に
一斉に花を咲かせます。
花菖蒲(はなしょうぶ)、
文目(あやめ)、
燕子花(かきつばた)

アヤメ科アヤメ属の植物で、
田んぼの畦に自生していた
「花菖蒲」「文目」「燕子花」は
古代稲作伝来の時より農事暦の役割を果たし、
初夏になり開花し出すと
村落総出で共同して田植えが行われ、
「入梅」の予告をしていました。
別名「早乙女花」
灸花(やいとばな)
里山や山地の藪に絡みつく多年草の
「灸花」(やいとばな) は、8月の灼けつくような
日差しの下で、小さな白い花を咲かせますが、花を水に浮かべると
田植えをする早乙女の被る笠に似ている
ことから「早乙女花」という別名があります。
なお「灸花」(やいとばな) という名前は、
花の中央部が赤く燃える灸 (やいと) をすえた
跡のように見えることから名付けられた
そうです。
また葉を揉むと嫌な臭いがするために
「ヘクソガズラ(屁糞葛)」という別名も
あります。
藪萱草(やぶかんぞう)

咲く明るいオレンジ色の花
ススキノキ科ワスレグサ属の多年草
「藪萱草」(やぶかんぞう) は、夏の盛りに
スカシユリに似た鮮やかなオレンジ色の花を
咲かせます。
その花が並んだ様子が
早乙女の田植えの姿に見えることから、
「早乙女花」(さおとめばな) という
別名もあります。