「初夏」の季語には、「立夏」を始め、
「夏めく」「夏浅し」「夏兆す」「薄暑」
「夏の色」などがあります。
これらには同じような意味合いと感じが
重なるところがありますが、
それぞれ微妙に違うようです。
夏めく
「夏めく」とは、
夏真っ盛りという時期には
まだまだ遠いけれども、
木々や生き物や、
また人間の生活のあれやこれにも
夏らしい趣が増してきたと
感じられる頃を言います。
全てが萎えてしまいそうな
「猛暑」はさておき
「夏」には、万物生い茂り発展する
躍動感があります。
そういう「夏が来た」という喜びが
「夏めく」には含まれています。
「めく」とは、名詞、形容詞、形容動詞の語幹や
副詞、擬声語、擬態語などに付いて、
「そのような状態になる」
「そのような様子になる」とか、
(実際にはそうではない、
未だそうはなっていないけれども)
「そのように見える」
「そのように感じられる」などといった
といった意味合いの動詞を作る接尾語です。
そして「めく」を接尾語として用いた表現は、
主観的な感じ方や印象を表すことが多いです。
「めく」は、春・夏・秋・冬のいずれにも付いて、
「春めく」「夏めく」「秋めく」「冬めく」と
それぞれの季節になったことを実感させる
季語を作ってもいます。
「春めく」が一番嬉しさが感じられますが、
「夏めく」もなかなか捨てたものでは
ありません。
春の花が終わり、
草木は若葉や新樹が輝いて緑の世界に変わり、
更に花菖蒲などの初夏の花々が咲き始めるなど
辺りは夏の景色に近くなった様子になります。
日差しが強くなり、空の色が青く澄み渡たり、
気温が上昇し、爽やかな風が吹き始めると、
夏の気配を感じ、夏の到来に期待を抱き、
喜びを感じます
夏浅し(なつあさし)
夏に入ってからそれほど日が経たず、
木々もまだ新緑の状態である頃を
「夏浅し」(なつあさし) と言います。
「夏浅し」は言葉通り、夏にはなったものの、
「未だ夏景色整わず」といった気分を表した
季語です。
夏兆す(なつきざす)
夏の始まり、夏の気配を表す言葉です。
特徴的な景色なり、事物なりを捉えて、
それを以て夏が来たことを言い表すに
相応しい季語です。
薄暑(はくしょ)
本格的な暑さには至らないが、
初夏のやや汗ばむほどの
ちょっとした暑さという体感を表した
季語です。
夏の色(なつのいろ)
辺りの景色や雰囲気が
如何にも夏らしく見えるようになったという、
視覚を通して夏を発見した気分が前面に出た
季語です。