うまずたゆまず

コツコツと

薄暑(はくしょ)の頃

 

「薄暑」(はくしょ)

「薄暑」(はくしょ)とは、
5月初旬の「立夏」を過ぎて、
太陽がまだギラギラというほどではけれども、
歩いているとうっすらと汗ばんできて、
やや暑さを覚えるようになった気候を言います。
 
漢字の「薄」は、
「うすい」とか「わずかな」という意味ですが、
肉薄(肉迫)と言う言葉が示すように
「迫る」とか「近づく」という意味もあります。
つまり「薄暑」(はくしょ)とは、
本格的な暑さにはまだ間があるが、
そこに迫っている、近づいていることを
予感させる暑さという意味になります。
 
「薄暑」(はくしょ)の頃は、
野山は新緑に燃え、
若葉を透かして射し込む光りは輝き、
風は芳しいばかりで、
身も心も弾むような気分になる、
一年中で一番気持の良い季節と言えるでは
ないでしょうか。
 
「薄暑」の時期を過ぎると、
間もなく長雨の「梅雨」の時期になり、
それが明けると本格的な夏になって
「大暑」「炎暑」「極暑」を迎えます。
 

「緑さす」(みどりさす)

新緑
 
五月の頃の初夏に見られる
みずみずしい鮮やかな緑色の
若葉や新樹のことを「新緑」と言います。
「新緑」は青々とした木々の風景を指し、
「若葉」は新葉を、
「新樹」は若葉に覆われる樹木を指す
季語です。
 
緑さす
 
そんな若葉や新樹に日が射して、
新緑の鮮やかな緑が周りに照り映える状態を
「緑さす」と言います。
実は植物が緑色なのは、光合成をする時に
緑色だけ吸収せず反射しているからだ
そうです。
 
そして「若葉」は日増しに緑を濃くして、
青々と生気を漲らせた「青葉」になります。
 

風薫る(かぜかおる)

風薫る・薫風
 
「風薫る」(かぜかおる)は、
緑の香りを含んだ心地の良い風を言います。
語源は、漢語の「薫風」(くんぷう)を訓読みして
和語化したものです。
最初は花の香りを運んでくる
春の風を指すことが多かったそうですが、
だんだんと、新緑の頃に森や林から吹いてくる
爽やかな若々しい緑の香のするそよ風という
意味に変化してきたそうです。
 
 
フィトンチッド
 
森林の中に足を踏み入れると、
清涼な空気に満ち、爽やかな香りがします。
この森林の香りの正体が
「フィトンチッド(phytoncide)」です。
 
 
自由に動き回ることの出来ない植物が、
害虫などの外敵から攻撃や刺激を受けたり、
傷ついた時でも病原菌に感染しないように
傷口を殺菌するために、
自ら作り出して発散する揮発性物質で、
植物が身につけた生きるための能力の1つです。
 
 
1930年頃、旧ソ連時代のロシア人の科学者、
ボリス・ペトロビッチ・トーキン博士が
この植物が持つ不思議な力を発見し、
命名しました。
因みに「フィトンチッド」とは、ロシア語で
「phyto=植物が」+「cide=殺菌する」を
くっつけた造語で、
「植物から出る揮発成分は殺菌作用がある」と
いうような意味になります。
 
 
実はこの「フィトンチッド」は、
防虫・抗菌・脱臭・消臭・リフレッシュなど、
とても有益な効能があります。
 
 
ですから普段から
「フィトンチッド」を活かした生活すれば、
ストレスやアレルギーを緩和したり、
免疫力を高めたりと
体にプラスに働く生活を送ることは
可能です。
 
 
現代の私達は、デジタル機器を始め、
様々な人工物に囲まれ、
時間に追われるようにして、
まさに「不自然な」生活をしています。
夏に向う今がちょうど一番気持ちの良い季節。「森林浴」に適した時期ですね。