全国各地で120年の
「淡竹」(はちく) の開花が進行中です。
兼ねてから、竹に花が咲くと
「不吉」「災いがやって来る」と、
まことしやかに囁かれてきました。
松、梅とともにめでたい植物のひとつでもある「竹」の花が咲くことが不吉であるとは、
何とも不思議に思えますね。
竹の花
日本で多く栽培されている竹は、
「真竹」「淡竹」「孟宗竹」「笹」です。
「竹」や「笹」はイネ科に属する植物なので、
花もイネの花によく似ています。
そして「竹」の花が咲いて次に花が咲くまでの
開花周期が非常に長いことから、
「竹」の花は珍しいものとされてきました。
「竹」の開花は、
目立った前触れもなく始まります。
それまで数十年から百年ほど
成長を続けてきた一カ所の竹林が
一斉に花を咲かせる(一斉開花性)だけでなく、
遠く離れた竹林も時を示し合わせたように
同時期に開花します。
「真竹」(まだけ) や「淡竹」(はちく) は
一斉開花率が高く、竹藪一体が開花します。
一方「孟宗竹」(もうそうちく) は
一斉開花性を示さず竹林の一部分が開花する
種類として知られています。
そして開花後にレモンのような果実を
実らせます。
なぜ開花するまでの期間が長いのか、
なぜ広域に渡り同時期に咲くのかなど、
未だ多くの謎に包まれています。
そして開花後には一斉に枯死することから、
国内では昔から不吉の前兆などと言われて
きました。
開花のタイミング

「竹」の花は、滅多に咲きません。
そしてあたかも「竹」自身が
年数を数えているかのように
全国的にほぼ同調して開花するという現象が
起こります。
「竹」の一斉開花のタイミングは
種類により異なりますが、
「笹」ではおよそ50年、
「真竹」と「淡竹」は古文書の記録から
60年や120年という
極めて長いスパンと考えられています。
「真竹」は江戸後期 (1844-1846) に、
全国的に一斉に開花した記録があり、
その約120年後の
昭和37年から昭和43年(1962-1968)にも
全国的に一斉に開花した記録があります。
この時、国内の「真竹」林の
およそ1/3が枯死したため
日本の竹製品は大ピンチに陥ったそうです。
「淡竹」の開花の周期について
正確な記録は残っていませんが、
古文書などを辿ると約120年と推定されます。
前回の大規模な開花の記録は
明治35(1902)年から明治41(1908)年前後に
開花しています。
その後、開花記録がなかったのですが、
2010年代半ばから開花が報告され始めており、
令和10(2028)年頃までは
全国各地で続くことが予想されています。
竹を枯らした原因は
花が咲いたから?
120年振りに珍しく花が咲いたと思ったら、
何と1、2年の内に竹藪一体の竹は
一斉に枯れてしまいます。

生命力に溢れる竹が開花と共に
竹林全体が枯れていくのですから、
「竹を枯らした原因は花が咲いたから」と
「不吉」と感じても不思議ではないですよね。
そして「これは天変地異では」
「枯れるのは伝染病によるものでは」と
「竹の開花は不吉の前兆」という言い伝えが
各地に残ることとなりました。
噂の原因は
「竹の一生」にあり!?
竹藪の「竹」は、老いも若きも皆、
それぞれが地中にある地下茎で繋がっていて、
その地下茎はびっしりと拡がって
網の目のようになっています、

そして毎年地下茎の節にある芽から筍が生じ、
半年もすると立派な若竹に成長すると同時に、
地中では長い年月をかけて根を伸ばしながら
繁殖するという特徴があります。
竹藪全体で一つの生命体になっているのです。

長い周期をかけて繁殖し育った竹藪も、
根に十分に養分を溜めて、一定の時期が来ると
最後に一花咲かせて枯れていきます。

ところが枯れるのは地上の部分のみで、
根は全て枯れてしまった訳ではありません。
僅かに残った地下茎や茎の根元の潜伏芽から、
小さな笹状のものが発達して再生することが
多いのだそうです。

この根からまた、新たな竹が育ち
数年後には元のような立派な竹林になります。
真っ新に生まれ変わる、そのサイクルは
自らをより成長させるために必要な
生態の維持であるのです。
ですから「竹」の花は不吉の前兆ではなくて、
天寿を全うしようとする竹藪の大往生を祝い、
次の世代に一新するための
「吉兆」ではないでしょうか。
因みに「竹」は
地下茎による無性生殖で増えますので、
特に花が必要という訳でありません。
そのため「竹」を別の場所に移植する場合は、
竹の根っこを切って移し替える
「株分け」によって行われています。
竹林の維持

「竹」が枯れてしまうと
今まで竹林によって覆われていた場所が
露になり保水能力がなくなってしまうため、
そこに強い雨が降ってしまうと
土砂災害の原因になってしまいます。

次なる成長と竹林の維持のためにも
人による手入れが必要です。
「竹」は光合成をして根に栄養を蓄えるため、
光を求めて丈は高く成長し、
根を伸ばして繁殖していきます。
そのためには、光を多く取り入れられるように
伐採や落葉掻きなど手入れをしないと、
病気が発生し良い竹林にならないからです。