「八十八夜」(はちじゅうはちや) と言えば、
「茶摘み」というイメージがありますが、
これが定着したのは、文部省唱歌『茶つみ』がきっかけと言われています。
雑節「八十八夜」
(はちじゅうはちや)

雑節の「八十八夜」は、
お茶の収穫シーズン到来を告げる日として、
日本人の生活文化に深く根付いて来ました。
「八十八夜」という言葉を聞くと、
今年も新茶の季節が近づいてきたと感じる方も
多いのではないでしょうか。
ところで、「八十八夜」という言葉を
「♬ 夏も近づく八十八夜~」で始まる
文部省唱歌『茶摘み』という歌を通して
言葉を知ったという方も少なくないはずです。
唱歌『茶摘み』
世代を超えて歌い継がれてきた
唱歌『茶摘み』の歌は、
明治45(1912)年に刊行された
『尋常小学唱歌(三)』に
『うさぎ』『春の小川』『ふじ山』と共に、
小学3年生の共通教材 (必ず授業で習う歌) として
初めて掲載されました。
親子で長く歌い継がれる歌として
平成18(2006)年に文化庁と日本PTA全国協議会が
「日本の歌百選」に選定しています。
この日本人には馴染み深い『茶摘み』ですが、
実は、作詞者・作曲家ともに分かっていません。
またオリジナルの曲名は『茶摘み』ですが、
「摘」という漢字は小学校で教えないので
教科書では「茶つみ」と表記されています。
- ♬ 茶摘み -
1.夏も近づく八十八
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘みじゃないか
あかねだすきに菅の笠
2.日和続きの今日このごろを
心のどかに摘みつつ歌う
摘めよ 摘め摘め 摘まねばならぬ
摘まにゃ日本の茶にならぬ
『茶摘み』の
手遊び歌と遊び方
『茶摘み』は、2人組ならではの
振り付けを楽しむことが出来る遊びです。
相手と息を合わせる調整力や、
コミュニケーション力の基礎を
育くんでくれることから、
今も昔も変わらない幼児教育の場で
人気の手遊び歌です。
まず2人で向かい合って、手を繋ぎ、
「せっせっせーのよいよいよい」から
始めます。
♪ せっ・せっ・せの
繋いだ手を、拍子に合わせて上下します。
♪ よい・よい・よい
手を繋いだまま交差してトン・トン・トン
♪ 夏も近づく 八十八夜
拍子に合わせて、自分の手を叩いたら、
相手と手を交差して打つことを
繰り返します(右手から始めましょう)。
相手と手を交差して打つことを
繰り返します(右手から始めましょう)。
ここで、向かい合う人の両手のひらを打ちます。
♪ 野にも山にも 若葉がしげる
拍子に合わせて、自分の手を叩いたら、
相手と手を交差して打つことを
繰り返します(右手から始めましょう)。
相手と手を交差して打つことを
繰り返します(右手から始めましょう)。
ここで、向かい合う人の両手のひらを打ちます。
♪ あれに見えるは 茶つみじゃないか
拍子に合わせて、自分の手を叩いたら、
相手と手を交差して打つことを
繰り返します(右手から始めましょう)。
相手と手を交差して打つことを
繰り返します(右手から始めましょう)。
ここで、向かい合う人の両手のひらを打ちます。
♪ あかねだすきに すげのかさ
拍子に合わせて、自分の手を叩いたら、
相手と手を交差して打つことを
繰り返します(右手から始めましょう)。
相手と手を交差して打つことを
繰り返します(右手から始めましょう)。
ここで、向かい合う人の両手のひらを打ちます。
宇治田原に伝わる
「茶摘み歌」
茶摘みをする時の仕事歌
唱歌『茶摘み』の歌詞のルーツには
諸説ありますが、そのうちの一つは
京都の宇治田原に伝わる『茶摘み歌』を
基にして作られたというものです。
宇治田原の『茶摘み歌』は、
茶畑で茶葉を摘む時に歌われてきた
仕事歌です。
4月下旬から5月上旬の「八十八夜」の頃に、
近くから茶摘みのために雇われた女達が、
仕事をしながら鼻歌を歌ったのがきっかけで
生まれた歌と言われています。
日本緑茶発祥の地
「宇治田原町」

宇治田原町で茶の栽培が始まったのは
鎌倉時代です。
鎌倉時代前期の華厳宗の名僧
明恵上人 (みょうえしょうにん) の弟子により
栽培方法がもたらされ、
霊峰・鷲峰山の麓「大福谷」(おおぶくだに) に
最初の茶の種が植えられました。
「大福谷」は地味・気候ともにお茶栽培に最適で
お茶の味も優れていたので、
宮中や鎌倉将軍へも献じられ
「もっとも茶香深し」と賞賛されたそうです。

江戸時代中頃の元文3(1738)年、
宇治田原の篤農家・永谷宗円 (ながたにそうえん) は、
当時の製茶法に改良を加えながら研究し、
それまでよりも香りも味も圧倒的に優れた
「青製煎茶製法」(あおせいせんちゃせいほう) を
この地で考案し広めたことから、
宇治田原町は「日本緑茶発祥の地」、
永谷宗円は「日本緑茶の祖」と
言われています。

宇治田原の『茶摘み歌』

宇治田原の『茶摘み歌』は、
茶摘みや製茶に関することを歌っています。
ああお茶がありゃこそ
湯谷のみやこ よいしょ
お茶がなければ いやの谷
ああお茶を摘むなら
湯谷へござれ よいしょ
煎茶元祖の お茶を摘む
おおお茶を摘むなら
すそから摘みやれ よいしょ
ああ かたい約束
茶園の中で よいしょ
お茶が切れても 縁切れん
ああ、お茶の摘みちん
さきまわりしても よいしょ
とれた主さんにゃ 不自由ささん
ああ、今年これきり
また来年の よいしょ
八十八夜の お茶に会う
ああ、お茶がすんだら
早うもどれよと よいしょ
言うた親より 殿が待つ
ああ、宇治でもうけて
田原でつこて よいしょ
花の朝宮で 丸裸
ああ、嫁入りするなら
田原へおいで よいしょ
田原よいとこ 米がある
あら おしゃれは さをおやぁ
ああ、暑けりゃ
笠きよう
いろ黒くやけなあ よいしょ
都住まいをさす程に
あら おしゃれは さをおやぁ
茶摘みしてては
ようやしなわん よいしょ
あなた ほいろし しておくれ
恋しい恋しいと
鳴く蝉よりも よいしょ
鳴かぬほたるが 身を焦がす