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『江戸名所花暦』~江戸の桜の名所

 
文政10(1827)年に刊行された
江戸市中の花の名所のガイドブック
『江戸名所花暦』(えどめいしょはなごよみ) は、
計43種類の花と178の名所を
四季別に花の種類毎に紹介しています。
 
 
その中で「桜」の名所は46箇所と最多で、
全体の4分の1以上を占めることから、
江戸っ子が如何に「桜のお花見」を
楽しみにしていたのか分かります。
 
「桜の名所」は、社寺境内が36カ所と最も多く、
陵地は5カ所、河川堤2カ所、個人邸宅2カ所、
それに「新吉原」です。
 
 
江戸で一番の花(桜)の名所は、
「上野東叡山 (寛永寺)」と紹介されています。
三代将軍の徳川家光が、
奈良の吉野山を模して
寛永寺に桜を植樹させたのが始まりです。
江戸の中心部からも近く、
多くの人々が花見に訪れました。
 
 
江戸のお花見文化に大きく貢献したのは、
八代将軍の徳川吉宗です。
吉宗が、王子の「飛鳥山」、
向島の「隅田川堤」、品川の「御殿山」、
玉川上水沿いの「小金井」などに
桜の植樹を促進したことで、
桜の花見が一般庶民に広がりました。
江戸や江戸近郊に桜の木が
元々数多くあった訳ではなく、
それらはみな植樹したものだったのです。
 
これらの場所は、
江戸の「桜の名所」として有名になり
浮世絵の題材にもなって、
多くの人が押し寄せる
花見スポットとなりました。
 
 
武士も一般庶民も、中には子供連れで、
お花見に出掛けました。
 
 
そして毛艶や花筵を広げて幕を張り、
飲めや歌えの宴会をして
お互いに親交を深め合いました。
また男女の出会いのチャンスでもあったようで、
女性は花見用の着物を誂えて着飾って
出掛けたようです。
 
 
なお「新吉原」は、目抜き通りに、
毎年3月朔日に開花した桜を移植して、
散ると撤去するという、
人工的な期間限定の特殊な花見の名所でした。
行灯で夜桜を照らす中を
花魁道中が練り歩くという吉原ならではの
幻想的で非日常的な光景を、
江戸の人々は楽しんだようです。
 
これらの「桜の名所」うち
「上野」や「飛鳥山」は
現在もお花見で賑わう公園です。
また桜が植え継がれて、
存続している場所もあります。
けれども、大半は時代の変遷過程で
失われてしまいました。
 
『江戸名所花暦』に掲載されている
「桜の名所」
花見の名所 種類 場所 備考
上野東叡山 
慈眼堂
糸桜 寺境内 台東区
上野東叡山 
寒松院
糸桜 寺境内 台東区
上野東叡山 
等覚院
糸桜 寺境内 台東区
上野東叡山 
護国院
糸桜 寺境内 台東区
上野東叡山 
寛永寺中堂西
イヌ桜 寺境内 台東区
上野東叡山 
大仏辺
  寺境内 台東区
上野東叡山 
四車平寺
  寺境内 台東区
上野東叡山 
車阪
  寺境内 台東区
上野東叡山 
山王社頭
  寺境内 台東区
上野東叡山 
清水観音
  寺境内 台東区
厩谷花屋敷
(杉田家屋敷)
彼岸桜 個人邸宅 千代田区
成子乗円寺 彼岸桜 寺境内 新宿区
寿経寺伝通院 彼岸桜 寺境内 文京区
大黒天 彼岸桜 寺境内 文京区
正念寺
(桜の観音)
彼岸桜 寺境内 文京区
宝珠山延命寺 彼岸桜 寺境内 荒川区
日暮里 彼岸桜 丘陵地 荒川区
木下侯庭中 彼岸桜 個人邸宅 港区
慈眼山光林寺 彼岸桜 寺境内 港区
広尾の原 彼岸桜 丘陵地 渋谷・港区
牛天神 彼岸桜 神社境内 文京区
隅田川堤   河川堤 墨田区
隅閉院木母寺   寺境内 墨田区
水神社   神社境内 墨田区
新吉原   道路 台東区
金竜山浅草寺   寺境内 台東区
神田大明神   神社境内 千代田区
桜馬場   丘陵地 文京区
天沢山竜光寺 御所桜 寺境内  
諏訪山吉祥寺   寺境内  
白山神社 旗桜 神社境内  
花渓山道栄寺   寺境内  
長耀山感応寺 浅黄桜 寺境内 台東区
慈雲山瑞林寺   寺境内 台東区
根津権現   神社境内 文京区
飛鳥山   丘陵地 北区
王子権現   神社境内 北区
岸稲荷社   神社境内 北区
延乗寺 右衛門桜 寺境内 新宿区
渋谷八幡宮 金玉桜   渋谷区
三縁山増上寺   寺境内 港区
御殿山 吉野桜 丘陵地 品川区
毎賞山来福寺 延命桜   品川区
西光寺 醍醐桜 寺境内 品川区
元八幡宮   神社参道 江東区
金井橋
(玉川上水)
吉野桜 河川堤 小金井市
 

江戸の桜の名所

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