国民に最も愛好され、国の象徴とされる、
日本の国花「桜」(さくら) は
バラ科サクラ属の落葉広葉樹です。
日本の桜の品種は何と200種以上、
分類の仕方によっては
600種以上になるとも言われています。

そのうちの多くが3月〜4月に開花するので、
「桜」は春を象徴する存在になっていますが、
実は秋から冬、そして春と、
様々な種類がリレーするように咲き、
長い期間楽しめる花なのです。
「早咲き桜」とは?

古くから愛されてきた「桜」は、
野生種を元にして
様々な栽培種が作られてきたため、
咲く時期や咲き方は本当に多様です。
「早咲き桜」または「冬桜」と呼ばれるのは、
一般的に開花時期が「染井吉野」よりも早い
1月から3月頃となる「桜」の総称で、
一足先に春を楽しめると人気を集めています。

そのほとんどが
濃いピンク色の「寒緋桜」(かんひざくら) から
派生した変種や交配種がほとんどであるため、
「早咲きの桜」の多くは、
比較的濃いピンク色の花をつけることが
多いのが特徴です。
よく知られた「早咲き桜」の種類
伊豆の早咲き桜として人気の
「河津桜」(かわづざくら)
「河津桜」は代表的な「早咲き桜」です。
伊豆半島の河津町で
昭和30(1955)年頃に偶然見つけた苗を育て、
昭和41(1966)年に初めて開花。
昭和49(1974)年に「河津桜」(かわづざくら) と
名付けられました。

町内を流れる河津川沿いには
約850本もの桜並木があり、
町内の合計では8000本以上あるとも言われ、
街中が濃いピンクの花で彩られる例年2月には、
「河津桜まつり」が開催されます。
なお伊豆には「河津桜」の他にも
沢山の「早咲き桜」の品種があって、
「土肥桜」 「あたみ桜」「白浜伊古奈」
「修善寺桜」「大寒桜」「早咲き大島桜」
「城ヶ崎桜」「伊東桜」などがあります。

沖縄で開花観測に使われる早咲き桜
「寒緋桜」(かんひざくら)

「寒緋桜」(かんひざくら) は、
「早咲きの桜」の代表的な存在です。
沖縄県(石垣島)、台湾、China南部、
東南アジア北部に分布する野生種です。
名前に「緋」の字が入る通り、
非常に濃いピンク色の中輪の花を
下向き咲かせるのが特徴的な品種です。
花びらは散らずに、萼 (がく) の付いた
大きな花ごと落下するのも特徴的です。
沖縄県では、「染井吉野」に代わり、
桜の開花の観測に使われています。
沖縄では毎年1月下旬から2月中旬が見頃で、
「名護中央公園」 「八重岳」 「今帰仁城址」などが
名所として有名で、毎年1月下旬頃には
「今帰仁グスク桜まつり」が開催されます。
本州では暖かい神奈川県にある
「県立三ツ池公園」などで3月中旬から
見ることが出来ます。
寒桜(かんざくら)

「寒桜」(かんざくら) は、名前の通り、
場所によっては1~2月に咲く早咲きの桜です。
ただ、寒い時期に咲く桜が一般に
「寒桜」(かんざくら) と呼ばれることや、
名前の似ている沖縄などで咲く
「寒緋桜」(かんひざくら) と混同されがちですが
品種としての「寒桜」は個別のものです。
「寒桜」(かんざくら) は、
「カンヒザクラ(寒緋桜)」と
「ヤマザクラ(山桜)」ないし
「オオシマザクラ(大島桜)」の
雑種と考えられている栽培品種で、
花は淡紅で一重咲、大きさは中輪です。
なお「大寒桜」「修善寺寒桜」などは
名前に「寒桜」の文字が含まれますが、
これらは「カンヒザクラ(寒緋桜)」と
他の種の交雑種になります。
大寒桜(おおかんざくら)

「染井吉野」より少しだけ早く開花する
「大寒桜」(おおかんざくら) は、
「カンヒザクラ(寒緋桜)」と
「オオシマザクラ(大島桜)」との
種間雑種と考えられる栽培品種で、
「カンザクラ(寒桜)」よりも
花がやや大きいことから、
「オオカンザクラ(大寒桜)」と
名付けられました。
淡紅色の花弁は丸く大きく、
やや下向きについて、
完全に開かないのが特徴です。
修善寺寒桜(しゅうぜんじかんざくら)

静岡県伊豆市の修善寺境内に
原木があることから名がつけられた
「修善寺寒桜」(しゅぜんじかんざくら) は、
「カンヒザクラ(寒緋桜)」と
「オオシマザクラ(大島桜)」の
雑種と推定されます。
一重咲きで、淡い紅色の、
「染井吉野」より小さめの花びらをつけます。
1月から開花し開花期間も長い
「あたみ桜」(あたみざくら)
日本で最も「早咲きの桜」と言われる、
毎年1月から2月に見頃を迎える
「あたみ桜」は、その名の通り、
温泉街として知られる熱海市を中心に
栽培されている早咲きの桜です。
「カンザクラ」 と 「ヤマザクラ」の雑種と見られ
品種としては「寒桜」の一系統とされます。
淡紅色の花が下向きに咲く桜で、
「明治の初年、熱海の富士屋旅館に
イタリア人某が泊まり、
その記念に桜、椰子、レモンの苗木を
寄贈していきました」 。
約60本のあたみ桜が植えられた糸川遊歩道では
毎年1月上旬~2月上旬
(令和7年は1月11日~2月9日:終了)にかけて、
「あたみ桜糸川桜まつり」が開催されます。
期間中は桜のライトアップも行われます。
小彼岸桜(こひがんざくら)

お彼岸の頃に開花し、
「江戸彼岸」ほど大木にならないことから
「小彼岸桜」という名前がついています。
「エドヒガン(江戸彼岸)」と
「マメザクラ(豆桜)」の交雑種です。
木は小ぶりですが、
小ぶりな花を密に咲かせることから、
観賞用として庭園や公園などに
植栽されています。
秋から冬にかけて咲く「桜」
十月桜(じゅうがつざくら)

蕾の約3分の1が秋から冬にかけて咲き、
残りの3分の2は春に咲く、
1年に2回楽しめる品種です。
江戸時代から知られる栽培品種で、
花はピンク色で八重咲きです。
葉が小さいことから、別名「小葉桜」。
また日蓮入滅時に咲いたとの言い伝えから
「御会式桜」(おえしきざくら) とも言います。
冬桜(ふゆざくら)

「冬桜」というのは、
冬に咲く多くの桜の1品種です。
江戸時代から知られる栽培品種で、
花は白く一重咲きです。
群馬県藤岡市「桜山公園」は、
国の名勝及び天然記念物に指定されている
冬桜の名所です。
見頃は11月中旬から12月上旬で、
紅葉と一緒に見ることが出来る他、
その間はライトアップも行われます。
毎年12月1日に「桜山まつり」が開催されます。