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コツコツと

春の曇り空を表現した言葉

 

 

春陰(しゅんいん)

「春」と言えば、
暖かい陽射しの降り注ぐ季節という
イメージがありますが、
実際は意外に天候は不順で、
どんよりとした空模様であることが
多いものです。
そんな春の曇りがちな天候を
「春陰」(しゅんいん) と言います。
 
北宋の政治家で詩人の蘇舜欽 (そしゅんきん)
代表作である「淮中晩泊犢頭」の冒頭
「春陰野に垂れて草青たり」から来ています。
 
- 淮中晩泊犢頭 -
  春陰垂野草青青
  春陰しゅんいん野に垂れてくさ青々せいせいたり
  時有幽花一樹明
 時に幽花ゆうか一樹いちじゅあきらかなる有り
  晩泊孤舟古祠下
   晩に孤舟こしょうはく古祠こしもと
  満川風雨看潮生
  満川まんせんの風雨うしおの生ずるを
春の薄曇りは、野づらにまで
垂れ下がっているが、
草は明るく青々と茂っている。
舟の上から眺めていると、時々、
目立たない花を一杯つけた木が
あって、明るく見える。
日が暮れて、舟を古い祠の下に
繋ぐと、激しく雨が降って来た。
川一面に強い風雨が吹き過ぎる中、潮が上って来るのを、私はじっと
見ている。
 
桜の時期の空に対して使われる
「花曇り」(はなぐもり) という言葉に対して、
「春陰」は桜の時期に限らず、
もっと広い時期のこうした空を表現する場合に
使われます。
 

花曇(はなぐもり)

 
桜の花が咲く頃の曇り空を
「花曇」(はなぐもり) と言います。
 
桜の花が咲く頃は、
冬と夏の季節風の変わり目で、
日本列島を前線が通過して
小さな低気圧が発生しやすくなるため、
とかく天候が定まらず、崩れがちで、
どんよりと曇っている日が多くなります。
花冷え」という言葉もあるように、
急に冷え込んだりすることも
肌寒く感じることもあります。

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養花天(ようかてん)

 
桜の咲く頃の曇り空のことで。
「花曇」(はなぐもり) の異称です。
「養花」(ようか) とは、
「花を養う」という意で、
曇り空が花を育て養うという様子を指して
「養花天」(ようかてん) と言うようになった
そうです。
 

鳥曇(とりぐもり)

 
秋に日本に渡ってきた雁や鴨などの渡り鳥が、
春になって再び北へ帰って行く頃の
曇り空のことを「鳥曇」(とりぐもり) と言います。
 
なおこの時の雲を「鳥雲」(とりくも)
吹く風を「鳥風」(とりかぜ) と言い、
この風に乗って北に帰って行きます。
鳥のはばたきが風のように聞こえるので、
その頃の風を「鳥風」という説もあります。
 
曇り空の中を鳥が群れを成して
飛び去って行った後には
どんよりとした空だけが残ります。
 

鰊曇(にしんぐもり)

 
北海道では、早春(2月末~4月頃)になると
南風が吹き雲が低く垂れ込めて
周期的に天気が崩れる日が多くなります。
 
ちょうどその頃に、北海道近海には
(にしん) が産卵のために沿岸へやって来るため
この頃の曇りの時を
「鰊曇」(にしんぐもり) と呼んでいます。
 
 
かつて鰊漁が盛んだった頃は、
この空模様を目安に出漁しましたが、
海が時化ることが多く、
漁船の事故も多かったそうです。
「鰊群来」(にしんくき)
毎年、春先から初夏にかけて
北海道の主に日本海側の沿岸で
(にしん) の群れが産卵のために
大群で押し寄せ、
メスが産卵した海藻に
オスが精子をかけることによって
海の色が乳白色になる現象を
「鰊群来」(にしんくき) と言います。
ところが昭和30年代前半以降、
鰊はすっかり姿を消し「幻の魚」となり、「鰊群来」も見られなくなっていました。
それが平成11(1999)年に、
漁業者の皆様の稚魚放流などの努力もあり
留萌で「鰊群来」が数十年ぶりに
目撃されたのを皮切りに、
近年は日本海沿岸のあちこちで
観測されるようになってきています。
 

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